2024年10月25日(金)8:50発表
日本 消費者物価指数東京都市部2024年10月速報、企業向けサービス価格指数2024年9月速報

【1】結果:東京コアCPIは前年比1.8%上昇、企業向けサービス価格は同2.6%

2024年10月の東京都市部消費者物価指数(以下、東京CPI)は総合指数、コア指数(生鮮食品除く総合指数)、コアコア指数(生鮮食品・エネルギー除く総合指数)そろって、前年比1.8%上昇となり、ヘッドラインとコアは2%を割り込む水準に鈍化しています(図表1)。

【図表1】東京CPI 2024年10月速報値
出所:総務省よりマネックス証券作成

主要因は政府の補助金によるもので、エネルギーが指数を押し下げています。一方で、コアコア指数のみ、前回9月の数値から上昇しており底打ちの兆しが見られます(図表2)。足元では、コメ類等の生鮮食品除く食料の上昇がコアコア指数の上昇に寄与しています。

【図表2】東京CPI総合指数の推移(前年比、前月比、%)
出所:総務省よりマネックス証券作成

企業間のサービス価格を計測した、企業向けサービス価格指数の2024年9月の前年比数値は前回8月から0.2ポイント縮小する2.6%の上昇となりました(図表3)。

【図表3】企業向けサービス価格指数2024年9月速報値
出所:日本銀行よりマネックス証券作成

前年比の推移は、2024年6月につけた3.2%をピークに縮小傾向がうかがえます(図表4)。また、より直近の価格変化である前月比は0.1%下落し、2024年1月以来のマイナス推移となりました。前年比では、依然として2%後半で推移しているものの、段々と鈍化していると考えられます。

【図表4】企業向けサービス価格指数の推移(前年比、前月比、%)
出所:日本銀行よりマネックス証券作成

【2】内容・注目点:東京サービスCPIは0.2ポイント拡大も、一部弱さが見られる

東京コアCPIは2ヶ月連続で伸びが縮小しています。主要因は10月まで適用される政府補助金によるもので、総務省の試算では補助金効果で0.51ポイント指数を下押ししているとされています。来月11月22日に発表される全国CPIも同様の傾向が想定されます(図表5)。一方で、11月分以降の数値では、補助金効果が剥落するため、エネルギーを中心に再び上昇していくことが見込まれます。

【図表5】コアCPIの比較(前年比、%)
出所:総務省よりマネックス証券作成

注目していたサービスCPIは、前年比0.8%上昇し、前回9月の同数値から0.2ポイント拡大しています(図表6)。外食や民営家賃が寄与し拡大したものの、ここ半年間は概ね横ばいでサービス価格の上昇が顕著とはいえないでしょう。中身をみると、公共サービスのマイナス寄与が縮小したことが拡大の要因で、一般サービスはわずかに縮小しています(10月の前年比は1.1%上昇、9月は同1.2%上昇で、0.1ポイント縮小)。10月は下期の期初で、価格改定が期待される中、賃上げ等に波及が想定される一般サービスにおいて、その兆候が見られなかった点は懸念事項と考えられます。

【図表6】サービスCPIの比較(前年比、%)
出所:総務省よりマネックス証券作成

【3】所感:足元のサービス動向を日銀がどう評価するか

企業向けサービス価格、サービスCPIともに縮小傾向がうかがえる内容でした。サービス価格は財に比べて変動が緩やかであることが知られており、特に東京CPIは10月の断面のみで判断はできませんが、向こう数ヶ月の結果も拡大基調がうかがえることが、日銀の言う第2の力のインフレ達成のためには重要でしょう。

今月10月30日、31日には金融政策決定会合が開催され、また、その後に展望レポートが公表されます。市場では、12月会合での政策金利引き上げが現時点でのコンセンサスとなっており、審議員のメンバーの挨拶等でも利上げへの地ならしと考えられる発言も見られています。筆者自身も利上げは市場で既に織り込まれており、利上げ幅も漸次的なものであり、実質ベースで緩和的な金融環境であることも含め利上げに反対という立場ではありません。しかし、足元のサービス価格の基調等、どのような評価、説明がされるかが重要だと考えています。

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太