先週(9月9日週)の振り返り=米ドル/円、140円割れ寸前まで下落、16日は一次的に140円を割り込む

米ドル売り・円買いトレードが本格化

先週の米ドル/円は続落し、年初来の安値を更新し140円割れに迫り、9月16日には一時的に140円を割り込みました(図表1参照)。9月18日のFOMC(米連邦公開市場委員会)について、0.5%の大幅利下げ予想が再燃したことなどが米ドル売り・円買いの動きを勢いづかせた形となりました。

【図表1】米ドル/円の日足チャート(2024年7月~)
出所:マネックストレーダーFX

8月5日、「令和のブラックマンデー」と呼ばれた世界同時株暴落の中で141円台まで急落した後は、方向感の乏しい動きが続いていた米ドル/円でしたが、9月に入ってからは、ほぼ一本調子で下落が広がるところとなりました。

ただし、このように米ドル/円が9月以降一方向への動きになるのは、例年見られる傾向でもあります。例えば2023年の場合も、9月最初の営業日が安値となり、そのまま11月にかけて米ドル/円は151円までほぼ一本調子で上昇に向かいました(図表2参照)。

【図表2】米ドル/円の日足チャート(2023年9月~10月)
出所:マネックストレーダーFX

この背景には、特に欧米のトレーダーの場合、9月に入ると名実ともに夏休み明けでトレードを本格化させる影響があるようです。この結果、2023年の場合は、円売り戦略を積極化したことから、円高への戻りが鈍い中で一段の米ドル高・円安に向かったと考えられました。

今回の場合は、1年前とは逆で米利下げの一方で日銀は追加利上げを模索していることから米ドル売り・円買いが仕掛けやすくなっているでしょう。9月に入ってから円安への戻りが鈍い中で米ドル安・円高方向への動きが広がってきた背景には、そのような米ドル売り・円買いトレード本格化の影響もあったでしょう。

短期的な米ドル売り・円買いの「行き過ぎ」懸念も

ただ、9月の2週間で147円台から140円割れ寸前まで約7円も米ドル/円が下落する中で、徐々に短期的な「下がり過ぎ」懸念も出てきたようです。米ドル/円の90日MA(移動平均線)かい離率はマイナス10%に近付くと「下がり過ぎ」が懸念されますが、13日にはマイナス8%以上に拡大しました(図表3参照)。

【図表3】米ドル/円の90日MAかい離率(2000年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

ヘッジファンドの取引を反映するCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは、10日現在で買い越し(米ドル売り越し)が5.5万枚に拡大しました。円買い越しの過去最高は、2016年4月に記録した7.1万枚でしたが、低金利の円の買いは、買い越しが5万枚以上に拡大すると「行き過ぎ」の懸念が高くなってきます(図表4参照)。

【図表4】CFTC統計の投機筋の円ポジション(2000年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

以上のように見ると、9月に入ってから米ドル安・円高方向への動きが広がる中で、さすがに米ドル/円の短期的な「下がり過ぎ」や、円の「買われ過ぎ」といった「行き過ぎ」の懸念も出てきたようです。

今週(9月17日週)の注目点=FOMCは「ドット・チャート」も更新

今週は18日のFOMC、20日の日銀金融政策決定会合など注目イベントが多く予定されていますが、やはり最大の注目はFOMCでしょう。この局面での最初の利下げが決定されるのはほぼ確実と見られているものの、利下げ幅についてはまだ見方が分かれています。

また今回のFOMCでは、メンバーの経済見通し「ドット・チャート」が6月以来の更新となります。6月時点では、政策金利のFFレートの予想中心値が、2024年末5.1%となっていました。つまり、現在5.25~5.5%のFFレート誘導目標を、2024年末に5~5.25%へ0.25%の利下げを1回行うという見方でした。これに対して、現在の金利市場では、年末までに4.25~4.5%へ一気に1%の利下げが行われるとの見方になっています。こうした金利市場の見方の妥当性が試されることになるでしょう。

その上で、2025年末のFFレートの予想中心値が、6月時点の4.1%からどこまでの下方修正が行われるかも注目されるところです。米ドル/円は7月頃から、金融政策を反映する日米2年債利回り差との相関関係が復活しています(図表5参照)。このため、2025年にかけての米利下げ見通しは、米ドル/円の中期見通しを考える上での1つのヒントになる可能性があるでしょう。

【図表5】米ドル/円と日米2年債利回り差(2024年5月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

また、20日の日銀金融政策決定会合では、今回の政策変更はないと見られています。ただ、先週も日銀審議委員の発言を手掛かりに何度か円高に振れる場面があったように、日銀関連の材料に相場が過敏に反応する状況は変わらず続いています。このため、今後の追加利上げ見通しなどに注目しながら、米ドル/円の値動きを荒いものにする可能性はあるでしょう。

米ドル/円は短期的な「下がり過ぎ」、そして円も「買われ過ぎ」の懸念が出てきていますので、米ドル/円の下落が続いた場合は、「行き過ぎ」の修正をこなしながら緩やかなものになるのではないでしょうか。

リスクは、FOMCを受けて米金利が上昇に転じた場合で、米ドル/円「下がり過ぎ」、円「買われ過ぎ」の反動に注意する必要が出てくるでしょう。その場合は、9月に入ってから続いてきた米ドル高・円安への戻りの鈍い流れが変わるかが注目されます。以上を踏まえ、今週の米ドル/円は138.5~143円で予想したいと思います。