対談の最終回では、ナスダッ子さんが、ハッチこと岡元兵八郎に突撃質問した内容をお届けします。

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テスラの高値更新のタイミングとは

ナスダッ子さん:テスラ[TSLA]の株価がさえない展開が続いています。この先、テスラの株価が高値を更新するきっかけは何だと思われますか?

岡元:テスラは電気自動車(EV)メーカーとして誕生しましたが、いまでは同社の成長、株価上昇のドライバーは、ロボタクシーや人型ロボットオプティマスです。

CEOのイーロン・マスク氏は、2024年6月13日の株主総会で、「いつまでか」には触れなかったものの、人型ロボットのオプティマスの利益が年間1兆ドルに達し、PERが20~25倍程度の評価で、テスラの時価総額を将来25兆ドルへと増やすのに貢献するだろうと語りました。

この時点でのテスラの時価総額は5800億ドルでしたから、テスラの価値は40倍以上跳ね上がることになります。S&P500の時価総額はおよそ45.5兆ドルですから、将来的には、テスラが現在のS&P500の価値の半分以上を占める計算です。

マスク氏の話は少々眉唾物的に感じることはあるものの、まだ社外的に公開できない根拠があるからこそ話をするのだと思います。

岡元兵八郎
マネックス証券 チーフ・外国株コンサルタント兼マネックス・ユニバーシティ シニアフェロー

ナスダッ子さん:そう思います。話を聞いているとワクワクしますよね。

岡元:2024年の10月にはテスラのロボタクシーの発表イベントも予定されています。また、2025年にはオプティマスの「限定生産」を開始し、自社工場でテストすることも発表されており、2025年には、「1,000台以上、あるいは数千台のオプティマスロボットがテスラで働くようになるだろう」という予想も明らかにしています。私はいずれ自分の家でオプティマスのようなロボットが毎日の暮らしの手伝いをしてくれるものだと強い確信を持っています。

株価が高値を更新するきっかけは、10月のロボタクシーの発表イベントか、あるいはオプティマスロボットが働くようになってからかはわかりませんが、決算をきっかけにというよりは、成長ドライバーとなるものが現実的になってからになると思います。

ナスダッ子さん:2つ目の質問です。2024年のエヌビディアのように、今後マグニフィセント・セブン(Magnificent Seven:米国株式市場をけん引する主要テクノロジー企業群(※))に食い込んでくる可能性を予感させる銘柄は、いまありますか?現れるとしたらどのような企業だと思われますか?

岡元:先に結論を言ってしまうと、いまのところ、私にはまだ見つけられていません。これは私も毎日のように考えているのですが、これだという答えには至っていません。

マグニフィセント・セブンに共通するのは、最終的なユーザーが個人であることです。例えば、アップル[AAPL]の場合、iPhoneのユーザーはおよそ15億人です。その15億人にiPhoneを売っておしまいではなく、AppleMusicやiCloudなどのサービスを提供することで、収入を得続けることができます。

テスラも同様です。将来、自動運転が可能になった時には、ソフトウエアのアップデートが必要になるでしょう。サブスクリプションモデルで、自動運転を可能にする技術を提供し続けることで、収入を得ることができます。エヌビディアは、消費者に直接製品を売っているわけではありませんが、例えばゲームをする人たちが使うPCに同社の製品が使われています。

ここから、消費者にリーチ直接できる技術やサービスを開発、提供する企業が有望ではないかと考えていますし、必ず出てくるはずです。ただ、それがどの会社なのかは、まだ見えていません。私の考えがまとまったら、改めてお話させていただきます。

地政学リスクの米国株市場への影響について

ナスダッ子さん
個人投資家

ナスダッ子さん:ありがとうございます。それでは、最後の質問です。株式市場は、しばしば地政学リスクで動揺しますが、米国株を長期で保有する場合、地政学リスクをどのように意識すればいいでしょうか。その根拠も教えてください。

岡元:株式投資をするうえで、地政学リスクは無視できないリスクのひとつです。ただし、米国国外で起きた地政学リスクは、米国のマーケットに短期的には影響を与えるけれども、あくまで短期的で終わることが一般的です。

過去に起きた地政学リスクとS&P500のパフォーマンスを調べたことがあります。例えば、1990年代前半の湾岸戦争(図表1)と2014年に起きたロシアによるクリミア併合(図表2)のように米国国外で起きた出来事は、短期的に影響したに過ぎませんでした。

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【図表1】湾岸戦争+前後3ヶ月の経済動向
上段左軸: WTI, 上段右軸: S&P500, 下段: 米国債10年利回り
出所:ブルームバーグよりマネックス証券作成
【図表2】2014年クリミア危機+前後3ヶ月の経済動向
上段左軸: WTI, 上段右軸: S&P500, 下段: 米国債10年利回り
出所:ブルームバーグよりマネックス証券作成

上記の通り、地政学リスクは、長期的にはあまり米国のマーケットには関係ないのだと思います。

ナスダッ子さん:地政学リスクをひとまとめにしないで、どこで起きたものなのか、どのような事件なのか、どのような背景で起きているのかを、投資家が見極めることが大切なのですね。

岡元:そう思います。米国国外で起きた地政学リスクは、一時的に米国株市場の下げにはつながるものの、その影響が長期に続くとは限らないという意識の仕方でいいのではないかと思います。

ナスダッ子さん:地政学リスクで暴落が起きると驚きますが、慎重に状況を見極め、米国株を狼狽売りする必要はないということですね。

岡元:そういうことだと思います。また、どのような事由にせよマーケット変動が起こった場合に「投資において自分自身はこう対応しよう」ということを事前に常日頃から考えをまとめておき、実際に行動を取る必要が起きた時にはブレずに実行するということが大切なことだと思います。

―――本日は、長時間ありがとうございました。

(※)マグニフィセント7:アップル[AAPL]、マイクロソフト[MSFT]、アルファベット[GOOGL]、アマゾン・ドットコム[AMZN]、メタ・プラットフォームズ[META]、エヌビディア[NVDA]、テスラ[TSLA]

※本対談は2024年8月14日に実施しました。
※投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようにお願いいたします。

写真:竹井 俊晴