インフレと雇用、両面のリスクに留意するスタンスへ
現地7月31日に米国のFOMC(連邦公開市場委員会、日本の金融政策決定会合に該当)が開催され、政策金利は市場想定通り8会合連続で据え置きとなりました。
公表された声明文では、「2%のインフレ目標に向けて相応のさらなる進展が見られた」とし、「雇用とインフレの目標達成に対するリスクは引き続きより良いバランスへ移行」とされました。労働市場についてはこれまでの「堅調さ維持」との判断から、「伸びは緩やか・失業率は上昇したが低いまま」とされ、インフレについても「いくらか」高いままとされました。そして、これまではインフレリスクにより焦点を合わせていましたが、今回は「2大責務の両面のリスクに留意する」と変更されました。
インフレへの警戒から雇用の鈍化リスクにも同様に重点を置くバランスの取れたスタンスに移行したことがうかがえます。パウエルFRB議長は会見で、労働市場の下振れリスクは現実的だとしており、政策については経済の状況次第で年内の利下げがゼロにも複数回にもなる、としました。と同時に、今後のデータを確認したうえで9月の利下げが「選択肢」だと指摘しました。
利下げ局面ではマーケットは不安定な展開も
このような結果を受け、金利は低下して円高となり、寄り付きから上昇していた株価は引けにかけてやや押し戻される展開となりました。景気鈍化に配慮するハト派的なスタンスが感じられ、年内3回弱を想定する市場予想から外れない内容であったと言えます。
今後は物価の落ち着きと程よい労働市場の軟化を確認しながら8月下旬のジャクソンホール会合でより明確なメッセージを発し、9月の会合で利下げに踏み切る流れが予想されます。市場が期待するソフトランディングに沿って、現在はリスクが上下にバランスしていますが、今後は下振れリスクとそこへの対応に踏み切る中で、市場期待の実現度合いを実際に確認する段階に入ります。
株式市場がほぼ一方向に進んで来た中で迎えるマクロ環境の変化であり、過去の利下げ局面同様にマーケットが不安定な展開となることもありうるでしょう。金融政策のスタンス変化とともに経済がショックなく安定推移するのか注目されます。