S&P500の上昇余地がまだあると考える理由

2024年初めから堅調に推移してきたS&P500は、7月に入りついに5,500ポイントを超え史上最高値を更新しました。私はこれまで2024年末のS&P500の目標を5,500ポイントとしていたのですが、バリュエーションを見てみると、現在のマーケットは決して割安ではないものの、さまざまな要因からまだ上昇の余地があると考え、年末の目標を5,700ポイントに引き上げます。5,700ポイントは、2025年の予想EPSである278ドルのおよそ20.5倍のレベルです。

2023年1年間でS&P500は24.2%上昇しましたが、ブルマーケットの勢いは止まらず、2024年も6月末までの上半期に14.5%上昇しました。このような上昇相場を経験した日本の個人投資家の皆さんからは「米国株は高くてもう上がらないのではないですか」というご質問やご意見頂くことが増えてきました。しかし、「なぜそう思うのですか」とお伺いすると、明快なお答えをいただけないケースが多いのです。

「ここまで上がったからこれ以上上昇するのは難しいのでは?」というようななんとなくの理由のようなのですが、私は「S&P500はここからも更に上昇する」と考えています。

その理由は一言、株価を押し上げるファンダメンタルズがしっかりしているからです。S&P500の業績については、2024年の年初から前年同期比で増益基調が続いており、現在発表が始まった第2四半期についても8.8%の増益が見込まれています。

今後についても第3四半期は7.9%、第4四半期は12.6%と堅調に推移すると予想されています。バリュエーションについては、S&P500の歴史的な平均PERが19倍ですから、この差は1.5ポイントほどのプレミアムですが、通年で見ても2024年の業績は前年比で9.5%の伸び、2024年から2025年にかけては14%の増益、2025年から2026年にかけては11.5%の増益の見通しですから時間の経過とともに割安感がでてくるトレンドが続きます。

利下げ可能性が高まり、歴史的にも大統領選下半期は株価上昇の可能性が高い

マーケットでは、先週のパウエルFRB議長による発言に加え、7月11日(木)に発表されたCPI(米消費者物価指数)は利下げが近いことを示唆するものであることが確認されました。また、パウエル議長は、今週7月15日(月)インフレが2%の収束する前であっても利下げは行うとコメントしています。このところのインフレ指数をみても、利下げ局面が始まる確率が高まってきています。金利が下がる環境で、業績が伸びるのであれば、市場のバリュエーションの拡大に繋がり、ここからも株価の上昇が続いても不思議ではありません。また、米国企業が少しずつ生成AIの恩恵を受けるという展開が起きるのであれば、今後業績にもプラスに働き始めるはずです。

加えて、米大統領選挙の年の下半期は歴史的に、米国株は上がる確率が高いことも私の予想をサポートの材料のひとつとなります。

【図表】S&P500企業業績の推移と予想 EPS成長率  前年同期比【四半期】 (期間:2021年Q4-2025年Q3)
出所:ブルームバーグよりマネックス証券作成(2024年7月13日時点の予想値)

今後中小型株が最も利下げの恩恵を受ける可能性

これまでのマーケットではマグニフィセント7(※)が株価指数を牽引してきました。その結果、この7銘柄だけでS&P500の時価総額の3割を超えることを問題視する意見もありました。しかし、これは好業績で株価を押し上げた結果となった訳であり、彼らが悪いわけではありません。

今後もマグニフィセント7銘柄は投資先として外せないものの、マグニフィセント7以外の銘柄の上昇が起き市場全体の裾野が広がっていくと考えています。マグニフィセント7は、グローバルで顧客を抱え、グローバルなモート(堀)を有し、潤沢なキャッシュを生み、バランスシートもしっかりしています。

一方、中小型株については負債比率が高い企業が多く、これまで金利が高止まりしてきた世界において業績の伸びが抑えられてきました。それが、今後金利が下がる世界では、彼らの金利負担は減り、利下げの恩恵を最も受けることになります。実際先週7月11日(木)から、中小型株指数がS&P500の上げを上回って上昇し始めているのです。

S&P500イコールウェイト指数に注目

では、投資家として、そのようなトレンドからどうやって恩恵を受ければ良いか考えてみましょう。S&P500には2種類の指数があります。通常私たちがS&P500と呼ぶ指数は、時価総額加重型の株価指数です。時価総額加重型とは、マグニフィセント7のような時価総額の大きな銘柄の動きが指数のパフォーマンスに最も影響するよう設計されています。一方、S&P500にはイコールウェイトと呼ばれる均等指数というものもあります。

こちらは、エヌビディア[NVDA]のように時価総額が大きくなくても、エヌビディア株と全く同じ影響を指数の動きに与える、つまり、指数に与える影響が平等である株価指数です。イコールウェイト指数は、これまでの金利が高止まりする環境のなかで、先に述べた理由でこれまで長い間通常のS&P500のパフォーマンスに劣後してきました。それが、今後金利が下がってくるという環境では、その逆が起き、そのトレンドは決して短期のものではないと考えています。

もし、皆さんが、この流れに投資をしたいと考えるのであれば、S&P500イコールウェイト指数に連動するETFを選択肢となるでしょう。誤解のないように申し上げますが、S&P500が好ましくないということではありません。S&P500もここから上昇すると思うものの、S&P500イコールウェイト指数の方がより高いリターンを生むのではないかということです。

(※)アップル[AAPL]、マイクロソフト[MSFT]、アルファベット[GOOGL]、アマゾン・ドットコム[AMZN]、メタ・プラットフォームズ[META]、エヌビディア[NVDA]、テスラ[TSLA]