6月の米CPIで米ドル/円は急落、広がる為替介入への思惑

7月11日に注目されていた6月の米消費者物価指数(CPI)が市場予想を下回る結果となったことで、米ドル/円相場は指標発表前の161.50円近辺から157.50円割れまで4円50銭ほどの急落となりました。ここ1ヶ月弱かけて上昇してきた値幅をわずか30分程度で帳消しにする大きな値幅だったため、市場では為替介入が入った可能性を指摘する声もありました。一部メディアが政府関係者の話として為替介入を実施したと報じています。

ただし、日本の通貨当局である財務省の神田財務官は「介入有無をコメントする立場にない」としており、真偽のほどは7月31日19時に財務省から発表される「外国為替平衡操作の実施状況」を待つしかありません。

しかし、為替介入がなくても米ドル/円相場はきっかけさえあれば大きく崩れやすい状況にありました。先物市場の円ショート米ドルロングポジションが過去最大規模に肉薄するまでに膨れ上がっており、これ以上のリスクテイクはポジション量から見ても難しいという所まできていました。

市場はリスクポジション解消の動きへ

IMM通貨先物のヘッジファンドなど投機筋によるネットの円ショートポジションは直近のデータでは18.4万枚(7月2日時点)。過去最大にまで膨れ上がったのは2007年6月で18.8万枚でした。つまり、サブプライム、リーマンショック前の円キャリー取引全盛期に肉薄するところまで投機筋はリスクを取っていることが確認されています。

リスクテイクとは円キャリー取引のことで、円キャリー取引とは、金利の低い円を借りて金利の高い通貨や資産に投資することです。手持ちのキャッシュを使うのではなく、お金を借りて投資するのでリスクのある取引となります。日本円は低金利なので相場の急変がなければ安いコストで資金調達が可能で、その資金で高利回り資産に投資すれば「濡れ手で粟取引」、というわけですが、この取引が流行っていたために日米金利差とは大きく乖離した米ドル/円相場の上昇が見られました。

しかし、大きく積み上がったリスクポジションは、きっかけがあれば一斉にポジション解消に動きます。今回の場合、米CPIの発表がきっかけで米ドル金利が急低下し、アルゴリズムが動き、一斉にリスクポジションの解消に動いたものと考えられます。つまり、円キャリー取引の逆流です。

織り込まれつつある、早期利下げの可能性

金利先物市場では米国の9月利下げ織り込みが90%を超えてきました。これまで市場は9月と12月の2回の利下げを織り込んでいましたが、6月の米CPIの下落を受けて12月ではなく11月に利下げが実施される確率が高まっており、2回目の利下げが前倒しで織り込まれつつあります。

この先、更に悪い経済指標が出てくれば、続けて12月の利下げの可能性も出てくるかもしれません。年内3回の利下げが織り込まれるまでになれば、積み上がった円ショートポジションの解消が続き、米ドル/円相場の調整は大きくなる可能性もあります。