2024年6月25日(火)23:00発表(日本時間)
米国 コンファレンスボード消費者信頼感指数
【1】結果:消費者マインドは前回から悪化、先行き不安を示す
6月の米消費者信頼感指数は100.4を記録しました。市場予想の100.0を上回ったものの、前回5月の101.3を下回る結果となりました。高水準な現況指数に支えられている一方で、6ヶ月先の見通しを示す期待指数は、景気後退の兆候とされる80を下回っており、消費者の先行き不安がうかがえます。
【2】内容・注目点:雇用は好調な一方で、家計に関する評価が悪化
米消費者信頼感指数とは、全米産業審議委員会が5,000人の消費者に対して、現状(経済、雇用の2項目)と6ヶ月後の予想(経済、雇用、所得の3項目)について調査し、指数化したものです。個人消費がGDPの約7割を占める米国では、その数値に注目が集まります。また、図表2の通り、景気後退時には、本指数が急激に落ち込む傾向にあり、景気動向の判断にも用いられます。
今回6月の結果(100.4)は、前回5月の101.3からわずかに低下となりましたが、ここ2年横ばいで推移してきた狭いレンジの圏内に収まっています。
内訳をみると、現況指数は6月に145.1となり、5月の140.8から上昇しました。消費者は依然として現状に楽観的です。一方、期待指数は5月の74.9から6月には73.0へと低下し、消費者の先行き不安が消費者マインド全体を押し下げる要因となりました。
今回の結果に対し、全米産業審議会のダナ・M・ピーターソン氏は、「6月の消費者信頼感はわずかに低下したが、現在の労働市場の見方の強さが引き続き将来への懸念を上回っている」と述べています。実際、図表3の通り、6月の回答では、仕事が「見つけにくい」と感じる消費者が減少し、「雇用は十分」と感じる消費者が増えており、労働市場が堅調であることが伝わります。
ただし、ピーターソン氏は、「労働市場に重大な脆弱性が現れた場合、年が進むにつれて消費者信頼感が弱まる可能性がある」とも述べています。
今回、消費者の雇用に対する定性的な評価は良好な様子が示されましたが、雇用統計などの定量的なデータにも注目する必要があります。5月の雇用統計では、事業所調査では雇用者が増加した一方、家計調査では失業率が上昇しており、中身は今ひとつでした。6月の雇用統計は、7月5日(金)に公表されます。
雇用に対する評価が良好な一方で、図表4に示した6ヶ月先の家計状況に関する消費者の評価はやや悪化しています。また、長引くインフレと高金利の影響で、住宅や自動車の購入計画も依然として低調なままです。
【3】所感:期待指数の低下は景気後退の兆候とされるが総合的な判断が必要
今回の結果は、米国の消費者マインドがやや低下していることを示しましたが、深刻なものではなく、経済に過度なダメージを与えずにインフレを抑えるというソフトランディングが期待されるなかでは程よい結果といえます。1年先のインフレ期待も低下しており、5月のCPIの鈍化とあわせてインフレ動向はここのところ良好な見通しを示しています。
米連邦準備制度理事会(FRB)のクック理事は、同日のスピーチで今後数か月のインフレについて、「不安定な道をたどりながら低下していくだろう」と述べ、「ある時点で」利下げを行うのが適切だろうと発言しています。
インフレが収まるのであれば、問題は経済が悪化しすぎないかということになりますが、期待指数は景気後退の兆候とされる80付近をやや下回って推移しています。過去の経験則では、80を下回ってから1年以内に景気後退となることが多いですが、初めて80以下となったのは2年以上前です。しかし、依然として米経済は堅調な様子を示しています。
景気後退の判断には、同指数が明確に80を下回ることや、他の指標も悪化するなど総合的な判断が必要でしょう。
フィナンシャル・インテリジェンス部 岡 功祐