2024年11月22日(金)8:30発表
日本 全国CPI2024年10月

【1】結果:CPI指標は揃って前年同月比2.3%の結果に

【図表1】2024年10月の全国消費者物価指数の結果
出所:総務省よりマネックス証券作成

2024年10月の全国消費者物価指数は、3指標揃って前年同月比2.3%上昇となりました。市場予想とも概ね一致する内容で、また日銀がターゲットとする2%程度に近い水準で物価指標は推移しています。

【図表2】コアCPI(生鮮食品を除く総合指数)の寄与度分解(前年同月比、%、%ポイント)
出所:総務省よりマネックス証券作成

コアCPI(生鮮食品を除く総合指数)の詳細を見ると食品が上昇、主には米を含む穀類がここ2ヶ月10%以上上がっており、上昇に寄与しています。一方で10月まで適用されていた電気ガスに関する補助金の影響と直近の資源価格等の下落によって、エネルギーの寄与が低下しています。財やサービスの寄与は概ね横ばいとなっており、足元のインフレは食品とエネルギーが相殺しあう様子がうかがえます。

【図表3】コアCPI構成品目 前年同月比上昇・下落品目数の割合(レンジ別、%)
出所:総務省よりマネックス証券作成
※下落は前年同月比で0%未満

上昇・下落品目を見ると、コアCPIを構成する522品目のうち、10月は390品目が上昇、37品目が下落、95品目が変わらずとなりました。より詳細を確認すると、上昇品目のうち、直近では4%以上上昇する品目の割合が4分の1程度まで下落しており、急激な上昇となる品目は減少傾向にあることがわかります。

【2】内容・注目点:サービスは公共サービスが寄与、底打ちに期待

10月の消費者物価は、下期の期初ということで価格改定動向の反映の点で注目が集まりました。図表3の通り、品目割合からは顕著な価格改定の反映はうかがえず、現時点ではヘッドラインの指数に影響するような価格改定は限定的なものであったと推察されます。

【図表4】サービスCPIの寄与度分解(前年同月比、%、%ポイント)
出所:総務省よりマネックス証券作成

賃金にも通じるサービスCPIは公共サービスが上昇に寄与し、前年同月比1.5%の上昇となりました。その他の一般サービスを構成する品目においては、ほぼ横ばいで、こちらも価格改定は限定的であったと考えられます。しかしながら、公共サービスをより細分してみると、公共サービス内の家事関連サービスや教養娯楽関連サービスが上昇に寄与しており、人件費が高いとされるサービスの物価上昇が見られました。

先だって一般サービスにおける同品目が上昇していたこともあり、引っ張られた可能性もありますが、人件費への波及に期待が持てる内容であったことと、サービスCPIも底打ちの様子がうかがえることはポジティブに捉えられます。

【3】所感:物価見通しに沿った内容で利上げ判断の支えとなるか 

エネルギー価格は政府支援策による影響があるものの、日銀の見通しに沿った内容でコア指標は推移しています。10月末に金融政策決定会合にてアップデートされた物価見通しは、9月時の前年比2.1%から0.2ポイント見直され、2025年は同1.9%が予想されています。市場予想も同2.1%と緩やかな減速を想定しており、趨勢は変わらないままです。

ここまではオントラックといえ、市場が予想するように12月または1月の政策金利引き上げの可能性は高まったと考えられるでしょう。より先行きをみると電気ガス代補助について、2025年1月より再び復活することが決められ、年度末にかけて下押し圧力は続くものと想定されます。サービス価格は底打ちの様子も見えるため、先行きでは消費財やサービスが2%程度の上昇で安定し、ひいてはコア指標も2%程度で推移できるかが重要なポイントになるでしょう。

【図表5】CPIの先行き予想(前年比、%、11月22日時点)
出所:日本銀行、Bloombergよりマネックス証券作成

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太