FOMCはタカ派メッセージの中、ナスダック総合指数は史上最高値を更新

為替介入を実施するも、米ドル/円相場は再び157円台まで上昇してきました。市場は年初、2024年年内に6回の利下げを織り込んでいましたが、6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)は年内1回の利下げを見込むに留まるタカ派となり、米ドル金利がなかなか下がりません。政策金利は5.25~5.5%の高金利に据え置かれたまま1年になろうとしています。

一方で、日銀は3月にマイナス金利解除を決定。国債買い入れ額の減額から利上げと引き締めに向かうと目されていますが、日本の政策金利は0.1%です。圧倒的な金利差の前では投資家が円売り米ドル買いのトレンドから離れる気はなさそうです。

ただし、興味深いのが今週の6月FOMCで年内利下げ見通しが1回だと示されたにも関わらず、ゴールドマンサックス[GS]は、米連邦準備制度理事会(FRB)が9月に利下げ開始、12月に2回目の利下げを実施するという予想を変えていません。モルガン・スタンレー[MS]にいたっては同じく9月利下げ開始、年内3回の利下げ予想を維持したままです。また、その後も2025年年央にかけて毎回のFOMCで利下げを実施するとしており、米金利は断続的に引き下げられると予想しているのです。

つまり、市場はFOMCボードメンバーのドットチャートは変わるものという認識で、額面通り受け止められていません。よって、FOMCがタカ派のメッセージを発信したにもかかわらず、米国株は堅調で、ナスダック総合指数は史上最高値を更新しています。

市場が早期利下げ開始を見込む理由

それでは、なぜ市場は早期の利下げ開始を見込んでいるのでしょうか?

このところの米経済指標は玉石混交で、5月雇用統計のNFP非農業部門雇用者数の予想を大きく上回る結果に驚かされた一方で、5月の米CPI消費者物価指数は予想を下回るインフレの鈍化が確認されました。

最も懸念されているのは、米国GDPの7割ほどを占める「個人消費」の急減速です。コロナ禍にばらまかれた余剰貯蓄が枯渇し、クレジットローンの延滞率が上昇するなかで、米国の小売売上高の数字が減速してきました。消費が鈍れば米国の景気は後退していきます。

投資家らは米景気が急減速すればFRBは利下げに動かざるを得ないだろうと考えているのだと思います。FRBは「インフレは一時的なもの」としてなかなか利上げに踏み切らなかったこともありますが、2022年には急激なインフレで0.75%×4回の利上げを実施したことがあります。

通常0.25%刻みで実施される利上げですが、1回に3回分の利上げを4回連続で実施したのです。これには市場も驚きました。この時、米ドル/円相場はあっという間に115円台近辺から150円台まで上昇しました。市場は現在のFRBのスタンスに懐疑的になっているのだと思われます。米景気が急変すればFRBは急速に利下げに転換するだろうということです。それがいつ、どのタイミングで始まるかはわかりませんが、米ドル/円相場が急にトレンドを転換させる可能性にも備えておきたいところです。