約2ヶ月で12円の円高が進行

米ドル/円相場、2025年はすでに高値から12円の円高が進行しています。約2ヶ月での変動幅としてはかなり大きいほうでしょう。

トランプ政権が掲げる相互関税や不法移民送還などの政策はインフレを再燃させるリスクがあるとして、年初は米国の年内の利下げが限定的となるとの予想が台頭し、160~170円方向の円安を予想する向きもありました。一方で日銀が本格的な利上げに踏み切ることから円高を予想する市場関係者も多かったのですが、約2ヶ月で12円もの円高となるとは想定を超えたスピードです。

第1期トランプ政権下の2017年~2020年の4年間、米ドル/円相場の年間変動幅は10円以下に収まる小動きでした。このことから、トランプ2.0でもトランプ砲で短期のボラティリティが上がって乱高下する局面が増えたとしても、大きなトレンドは発生しないだろう、米ドル/円相場にはあまり大きな動きはないだろうとみる向きもありました。しかし当時と決定的に違うのは、今は「金利がある世界」だということです。

パンデミック以降、主要国は「金利のある世界」へ

パンデミック以降のインフレで米国を始めとした主要国が金利のある世界に突入。特に米国がインフレ抑制のために政策金利を0%から4.5%まで一気に利上げした2022年の米ドル/円相場は、年間安値の113円台から150円台へと36円もの円安進行となりました。

第1期トランプ政権下では政策金利は極めて低位にありました。就任時0.75%だった政策金利は2018年12月に2.5%程度まで引き上げられましたが翌2019年7月には再び利下げが始まり、2020年パンデミックでゼロ金利に逆戻りとなりました。日米金利差が広がらない時代だったため、第1期トランプ政権下では米ドル/円相場の年間変動幅が10円以内に収まっていたというわけです。

ポジションのリスク管理がより重要に

加えて今回は日本が利上げのフェーズに入っています。金利のある時代へ、日本も参戦です。

米ドル/円相場は、2023年は年間で24円幅、2024年は20円幅動きました。過去の2年と比較すると2025年はまだ12円幅の変動という見方もできます。

米景気後退懸念が広がればFRB(米連邦準備制度理事会)は利下げを再開するでしょうから、さらに円高が進む可能性も十分に考えられます。また、トランプ関税などの影響でインフレが再燃し、米国が予想外に利上げを強いられるシナリオがあるなら、米ドル/円相場は円安方向に大きく動き出す可能性も否定できません。

足元では通貨先物市場で投機筋の円ネットロングポジションが過去最大の13.3万枚にまで膨張していることも市場の関心を集めています。第1期トランプ政権時とは違って、米ドル/円市場のボラティリティは上昇しており、トレードの妙味は大きくなっていますが、一方でポジションのリスク管理の重要性が増しているとも言えるでしょう。