2024年5月28日(火)23:00発表(日本時間)
米国 コンファレンスボード消費者信頼感指数

【1】結果:消費者マインドは市場予想を上回り底堅さを示すも先行き不安は残る

5月の米消費者信頼感指数は102.0を記録し、市場予想と前回結果を上回りました。6ヶ月先の見通しを示す「期待指数」も74.6と前回の68.8から上昇しましたが、景気後退の兆候とされる80は依然として下回っており、消費者の先行き不安がうかがえます。

【図表1】米消費者信頼感指数結果まとめ
出所:The Conference Boardよりマネックス証券作成

【2】内容・注目点:雇用は好調な一方で、家計に関する評価が悪化 

米消費者信頼感指数は、全米産業審議委員会が5,000人の消費者に対して現状と6ヶ月後の景況感について調査し、指数化したものです。個人消費がGDPの約7割を占める米国では、その数値に注目が集まります。

前回4月の消費者信頼感指数は、消費マインドの急速な落ち込みを示し、一部ではスタグフレーション入りが警戒されていましたが、今回5月の結果は3ヶ月連続の低下から反発し、改善が見られました。

内訳をみると、5月の現況指数は143.1となり、4月の140.6から上昇しており、消費者は現状に楽観的です。また、期待指数も4月の68.8から74.6に上昇しています。

【図表2】米消費者信頼感指数の推移
出所:Bloombergのデータを基にマネックス証券作成
※ シャドーは景気後退期

今回の結果に対し、全米産業審議会のチーフエコノミスト、ダナ・M・ピーターソン氏は、「5月は消費者信頼感が回復したが、将来への不安は依然として残る。強い労働市場が現状評価を支えている」と述べています。

実際、5月の回答では、仕事が「見つけにくい」と感じる消費者が減少しています。労働市場の状況を評価する際は、「雇用は十分」と回答した割合と「仕事を見つけるのが困難」と回答した割合の差の推移に注目が集まりますが、前回の低下に反し今回はまた上向きに改善しており、労働市場が依然として好調な様子であることがうかがえます。

【図表3】「雇用が十分にある」と「仕事を見つけるのが難しい」の回答の差の推移
出所:Bloombergのデータを基にマネックス証券作成

雇用状況が好調な一方で、下記の図表4の通り、6ヶ月先の家計状況に関する消費者の評価はやや悪化しており、また住宅や自動車の購入計画も低調なままです。長引くインフレと高金利な状況が消費動向に影響を与えていることがわかります。一方で、消費者の1年先のインフレ期待値も5.3%から5.4%に上昇しています。

【図表4】6ヶ月先の家計状況に関する消費者の評価の推移
出所:The Conference Boardよりマネックス証券作成

【3】所感:インフレ懸念は残るもまずまずの結果

市場では今回の上振れに対し、米国景気の底堅さが意識され、インフレ沈静化には時間がかかるとの見方が強まり、利下げ観測が後退したことで金利上昇に繋がりました。

ただし、改善したとはいえ、期待指数が依然として80を下回っていることや家計状況に関する評価が悪化していることなどを鑑みると、今回5月の改善は前回4月に大きく下げたことによる反動増としての要因が大きいと思われ、トレンドとしては改善しているとは言えないでしょう。

景気に過度なダメージを与えずにインフレを収めるというソフトランディングが期待される中、今回の結果は強すぎず弱すぎずといったところで程よい結果だったと思います。

一方で、1年先のインフレ期待は上昇しており、やはりインフレ動向には懸念が残ります。ただし、米消費者信頼感指数は定性的なアンケート調査に基づくソフトデータであり、実際のインフレ状況はハードデータを確認する必要があります。5月31日には、米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ指標として採用しているPCEコアデフレータが公表されます。

フィナンシャル・インテリジェンス部 岡 功祐