2026年6月10日(水)日本時間21:30発表:米国 2026年5月CPI
2026年6月11日(木)日本時間21:30発表:米国 2026年5月PPI
【1】結果:5月のCPI前年比4.2%上昇 前月比含め概ね市場予想通りの結果に
2026年5月の米・消費者物価指数(CPI)は、ヘッドラインが前年同月比4.2%上昇、食品・エネルギーを除いたコア指数(コアCPI)も、同2.9%上昇とそれぞれ市場予想に一致しました。前月比はヘッドラインが0.5%上昇となり、伸びは前月から鈍化しました。また、5月の米・生産者物価指数(PPI)は、コア指標で前年同月比4.9%上昇と、市場予想(同5.4%上昇)を下回りました(図表1)。4月分が下方修正されたことで、コアPPIの前年同月比は横ばいで推移しています。
【2】内容・注目点:原油高の一服の兆しからディスインフレ基調に回帰へ
先週(6月8日週)は米国・イランの戦闘終結合意に進展があり、エネルギー価格が一服する兆しが見え始めました。6月12日の米国市場ではWTI原油先物が前日比3.2%安の1バレル84.8ドルとなり、4月17日以来となる85ドルを割り込みました。また当レポート執筆日の6月15日未明にはトランプ米大統領がイランとの戦闘終結で合意したと発表しました。これにより6月15日午前中にはWTI原油先物は80ドル台まで低下しました。
原油高が一服となれば、物価の上振れのピークともみなすことが出来ると考えています。先行きについて、市場は漸次的な原油価格の低下を見込んでいます。執筆時点では2026年末の原油価格が1バレル77ドルと見込まれており、前年比ベースでは依然高いものの、徐々に原油高によるインフレ押上げ分は低下していくと考えられます(図表2)。
当然ながら、原油以外のインフレ動向を確認する必要があります。本稿では、スーパーコアと呼ばれる家賃を除くコアサービスに注目します。同指標は遅効性の強い家賃を除いたサービス物価の動向を捕捉するもので、物価の観点でFRB(米連邦制度理事会)が重視する指標の1つとされています。図表3からは、米国によるイラン攻撃の開始前にあたる2026年2月以降、そのスーパーコアのインフレ率が前年同月比ベースで再加速していることがうかがえます。
内訳をみると、交通サービスが大きく伸びていることが見受けられます。これは「航空運賃」の上昇が大きく寄与しており、原油高を受けたインフレ加速といえます。したがって、先述のように原油高が一服することで徐々に伸びの減速が見込まれるものと言えるでしょう。
それ以外には教育・通信サービスの上昇が確認できますが、これも詳細を見ると「郵便および配達サービス」が上昇しており、こちらも輸送コストの上昇が転嫁されたものとみなせます。それぞれ、原油の供給回復に伴って低下圧力がかかると想定すれば、スーパーコアも落ち着きを取り戻すと見込めます。
加えて賃金関連をみても、そのディスインフレ基調が確認できます。図表4は賃金水準別の四分位数(第1四分位は賃金水準下位25%~第4四分位はその上位25%)ごとの賃金成長率をグラフ化したものです。つまりは、低賃金層から高賃金層それぞれの賃金伸び率が確認できます。
同指標からは、一時期は第1四分位層のみで伸びの減速が見られていたものの、直近では上位層も賃金の伸びが減速しており、給与水準に関わらずの伸びの減速が確認できます。賃金サイドもトレンドとしては伸び鈍化がうかがえ、この点も徐々にインフレ抑制へと寄与していくと考えられます。
【3】所感:年内の米・政策金利は据え置きを想定
6月の雇用統計の結果もあり、市場では、FRBの次のアクションとして利上げを想定する向きも増えてきています。筆者の所感としては、上述の内容から、インフレはいずれ低下基調に回帰するものと見込んでいます。そのため、利上げは時期尚早と考えています。一方で喫緊に利下げをする必要性も乏しく、年内は政策金利据え置きとなる公算が高いというのが筆者の見通しです。
もっとも、中東情勢においてはトランプ米大統領の発言が二転三転することは十分にあり得ることから、原油高の一服をメインシナリオとするにはリスクもはらみます。目下、戦闘終結で合意したことから巻き戻しリスクは低いと考えられますが、原油のサプライチェーン回復動向が焦点となるでしょう。
マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太
