2026年6月11日(木)8:50発表
日本 法人企業景気予測調査2026年4~6月期、他
【1】結果:国内マクロは堅調 4~6月期は中東情勢の影響が顕在化も先行きは持ち直す見込み
2026年1~3月期の国内マクロ・企業業績のデータが揃い始めました。国内マクロでは、GDP2次速報が発表され、実質GDPは速報時の前期比年率2.1%増から、同1.8%増に修正されました。主因は設備投資が前期比0.3%増から同0.7%減へと下方修正されたことによるものです。
設備投資は財務省が発表する法人企業統計の数値により改定されます。企業の回答ベースでは、設備投資の伸び悩みが示唆されています。法人企業統計からみる企業業績は、製造業の季節調整をした経常利益が前期比11.2%増、非製造業が同0.2%減となりました。非製造業の伸び悩みが顕著な一方で、製造業が国内経済を支えている様相です。総じてみれば、不透明感が高まった中でも2026年1~3月期は堅調な国内景気であったと評価できるでしょう。
また、先行きの企業見通しが確認できる法人企業景気予測調査も発表されました。法人企業景気予測調査は資本金1,000万円以上の法人を対象に、自社の景況感や国内経済の見通しを調査するもので、調査結果はBSI(ビジネス・サーベイ・インデックス)として公表されます。同調査では半年先までの見通しも示されることから、先行きの景況感を予測するうえでも参考となる指標です。
※BSIとは、企業に対し、業績や景況感に加え、設備投資や雇用状況についてアンケート調査を行い、ポジティブ(上昇、増加、改善、強気)な回答をした企業の構成比からネガティブ(下降、減少、悪化、弱気)な回答をした企業の構成比を差し引いて算出する指数です。数値がプラスであれば、ポジティブな見通しであり、逆にマイナスであればネガティブな見通しをもつ企業が多いことが示されます。
景況判断は、企業規模を問わず足元の2026年4~6月期は下降が優勢となりました。2026年2月末に始まった中東情勢の緊迫化による影響が、実業に影響を表し始めたものと考えられます(図表1)。もっとも、それ以降の半年では持ち直す見込みが示され、企業の回答ベースでは早晩に回復するとの見通しがうかがえます。
【2】内容・注目点:リスクシナリオを考慮も製造業は堅調か
2026年に入り、業態別には非製造業の業績が伸び悩む一方で、製造業の強さが確認できます(図表2)。製造業は、足元の株高をけん引する半導体などの電気機械や情報通信機械が好調であることに加え、為替も円安に推移したことも追い風となりました。
気掛かりな点と言えば、中東情勢における戦闘の終結がいまだに不透明な中で、国内製造業の業績のモメンタムが続くかどうかです。製造業は、原油高により、各種生産設備の稼働コストや輸送費などの負担が増加し、利益マージンの下押し圧力に直面していると推定されます。実際に、先行きの見通しを確認すると、法人企業景気予測調査ではは足元の4~6月期が低下するものの、その後は持ち直す見込みです(図表3)。
ある程度は底堅く推移すると考えられますが、リスクシナリオも念頭に置くべきだと考えています。国際エネルギー機関(IEA)によれば、早期に戦闘終結に向かったとしてもホルムズ海峡の再開通には最良のシナリオでも6~8ヶ月を要するとしています。また、石油在庫も夏の需要ピーク期を前に危機的水準に達する可能性があると指摘しており、2026年中にはこうしたコスト面で、逆風下での経営を余儀なくされるでしょう。そのため、年後半の製造業は業績鈍化の可能性が相応にあるものと考えられます。
もっとも、半導体などはこうした逆風を跳ね返すレベルで需要が旺盛であり、国内でもそのファンダメンタルズは底堅い様子です。具体的には、鉱工業生産指数の電子部品デバイス工業に関する在庫循環図を確認すると、その引き合いの強さが示唆されます(図表4)。在庫循環図とは、在庫と生産の伸び率を散布図で表したもので反時計回りに推移する傾向があるものです。
また、電子部品デバイス工業は半導体やIC(集積回路)・コンデンサなどで構成されており、ここ1年程はその在庫が前年比で微減が続く一方で、生産が小幅なプラスの位置取りでもみ合っています。やはり、電子部品まわりの需要の強さがうかがわれ、従来の循環速度であれば在庫の積み上がり局面に移行していたところ、生産を増やしながら在庫が掃ける状況であるとみなせるでしょう。
リスクとしては、人工知能(AI)やデータセンター関連の設備投資一巡による需要のはく落が挙げられます。金額と規模が大きく、そのスピード感も過去のものとは比較にならないため、急速な冷え込みの可能性も考慮すべきだと思います。しかし、データセンターなどへの過大投資が報じられるハイパースケーラー(莫大な処理能力とストレージ容量を要する巨大なデータセンターを自社で設計・運用し、拡張性に優れたクラウドコンピューティングサービスをグローバルに提供する超巨大IT企業)の設備投資計画の見通しをみると、現状では設備増強を計画しているとみられます(図表5)。
もちろん、設備投資計画のすべてが人工知能(AI)・データセンター向けとは限りませんが、半導体には更新投資が必要と想定され、継続的な需要が見込めるものと考えられます。在庫の積み上がりなどに注意を払いつつも、AI・データセンター関連の受注が国内製造業を支える展開がメインシナリオと考えています。
【3】所感:中東情勢の影響の長期化を見極める局面
法人企業統計景気予測調査は、足元の4~6月期が悪化したものの、先行きでは改善していく見通しが示されました。個人的には、下降となる期間が長引くものと想定していましたが、さほど悪化していく様子もないことは、前向きに受け止められます。中東情勢も再緊張の様子があり、原油を含むサプライチェーンの回復には時間を要すものと考えられ、基本的には堅調な見通しですが、先行指標など注意深く確認していく局面と言えます。
マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太
