米国市場でダウ平均が取引時間中に4万ドルの大台をつけた。昨日は終値では反落したものの、一昨日には米国株の主要株価指数はそろって最高値を更新した。好調なのは米国株だけではない。欧州株も最高値更新が続く。それに比べて日本株の上値は重い。このところ、ずっと日本株についての弱気論を述べてきたので、殊更、言うまでもないのだが、改めて現状をアップデートしておこう。

欧米株と日本株、取巻く雰囲気は真逆

欧米株高騰のドライバーは利下げ期待である。それに比べて日本では日銀が金融緩和を終焉に向かわせる雰囲気が濃厚だ。国債買い入れの減額が早期QT(量的引き締め)を意識させ、夏から秋にかけて追加利上げの議論も高まっている。これだけ金融政策の方向性が真逆を向いていれば日本株が欧米株についていけないのも無理はない。

金融政策面でのマイナスに加え、景気がさえない。4月の景気ウオッチャー調査では、現状判断DIが2ヶ月連続で悪化した。基調判断は「緩やかな回復基調が続いているものの、このところ弱さがみられる」という表現に下方修正された。そして昨日5月16日に発表された1~3月期のGDPは実質で前期比2.0%減と2四半期ぶりのマイナスになった。個人消費は前期比0.7%減で4四半期連続のマイナスだった。

前回のレポートで指摘した通り、企業業績もぱっとしない。2025年3月期の純利益は前期比4%減と5年ぶりの減益予想となっている。

日銀は緩和をやめて、引き締めに転換するスタンスに傾きつつあり、GDPも消費も企業業績も伸びがマイナスだ。これでは株価が上がると期待するほうが無理というものである。

特に日本の新興市場(いわゆるグロース株市場)はボロボロである。東証グロース市場250指数は2023年10月以来、約7ヶ月ぶりの安値だ。東証グロース市場の銘柄の多くは国内でのビジネスに限られているので、日銀が金融緩和政策を本格的にやめる前から景気が悪化しているようなこの国の状況ではどうにもならない。

市場の一部には、「米国の利下げ期待で成長株の多いナスダックも最高値をつけているので、日本のグロース株も買われる可能性がある」などとの見方があるようだが、まったくもって見当違いも甚だしい。第一に、米国のナスダックと日本のグロース株市場はまったくの別物である。ナスダックには確かに真のグロース(成長)株が多くあるが、日本のグロース市場に大きなグロース(成長)を期待できる企業はほとんどない。第二に、日本市場に上場する日本企業であってもグローバル・プレーヤーなら米国金利の影響を受ける。グローバル投資家の資本コストが判断基準になるケースもあるからだ。ところが、そうしたグローバル投資家の投資対象にならない新興市場銘柄は、米国の金利が上がろうが下がろうがまったく関係ない。

米国株のソフトランディングは本当に見込めるか

さて、話を米国株に移すと、ダウ平均は4万ドルをつけ最高値を再びとってきたが、利下げ期待に支えられたものであると前述した。その米国の利下げだが、決して「万能薬」ではない。

米国株は経済指標が相次いで悪化する中での高値更新、すなわち「不景気の株高」である。昨日の米国株市場で業種別パフォーマンスを見ると、上昇したのは「生活必需品」のみ。市場の「中身」も全力でディフェンシブ・シフトが鮮明だ。

今後は利下げのタイミングや効果と景気悪化との綱引きになる。市場ではソフトランディングを見込む声が多い。おそらく、そうなるだろうが、市場はナイーブである。なにかの拍子に「ソフトランディング、危うし」との懸念が高まれば、米国株も急落する可能性はおおいにある。なんといってもバリュエーションが高すぎるからである。

日本株は依然として「内憂外患」の状況であり、その度合いは日増しに悪化している。投資スタンスは「戻りは売り」を継続である。