先週の振り返り=前週から一転、ほぼ一本調子の米ドル高・円安

米ドル/円は、日本のゴールデン・ウィーク中に日本の通貨当局による円安阻止介入が再開されたとみられ、一時151円台まで急落しましたが、先週はほぼ一本調子で155円を超えるまで米ドル高・円安へ戻す展開となりました(図表1参照)。米イエレン財務長官の発言により、日本の介入ができなくなるのではないかとの見方が広がったことが大きかったようです。

【図表1】米ドル/円の日足チャート(2024年2月~)
出所:マネックストレーダーFX

米ドル高・円安は、日米金利差からはかい離の目立つものでした(図表2参照)。先週にかけて、米金利は低下する場面が多かったことから、金利差米ドル優位・円劣位もむしろ縮小傾向となりました。その意味では、金利差の変化とは別に、ほとんど「日本の介入ができなくなったかしれない」という理由だけで米ドル買い・円売りが続いた可能性があります。

【図表2】米ドル/円と日米10年債利回り差(2024年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

もう1つ、先週米ドル買い・円売りが再燃した理由として、多少の金利差変化は気にならないほど絶対的に大幅な金利差円劣位を受けて、圧倒的に有利な円売りが続いた面はあるでしょう。ただし、そのような意味での米ドル買い・円売りも、例えばCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋のデータでは、すでに最近にかけて過去最高規模に拡大しました(図表3参照)。

【図表3】CFTC統計の投機筋の円ポジションと日米政策金利差(2005年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

米ドル/円が151円台まで急落した中で、投機筋の円売り越し(米ドル買い越し)も、この間のピーク、4月23日の17.9万枚から、先週5月7日には13.4万枚まで縮小しました(図表4参照)。ただ、先週は週末にかけて米ドル/円は156円近くまで上昇したことから、円売り越しはより拡大した可能性があるでしょう。そもそも13万枚以上は、過去の実績からすると、依然として米ドル買い・円売りの「行き過ぎ」懸念が強いと言えそうです。

【図表4】CFTC統計の投機筋の円ポジション(2022年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

以上のように見ると、金利差からかい離した米ドル買い・円売り、しかもそれはすでに「行き過ぎ」懸念も強い可能性があるということを考えると、日本の介入が再度あるかどうかとは別に、その継続性には自ずと限度があるのではないでしょうか。

今週の注目点=注目度の高い米経済指標発表が多い

今週は、注目度の高い米経済指標の発表が多く予定されています。中でも注目を集めそうなのは、PPI(生産者物価指数)、CPI(消費者物価指数)といったインフレ指標、そして小売売上高などです。主な予想は以下の通りとなっています。

・5月14日
4月PPI総合=前回2.1%、予想2.1%
同コア=前回2.4%、予想2.3%
・5月15日
4月小売売上高=前回0.7%、予想0.3%
4月CPI総合=前回3.5%、予想3.4%
同コア=前回3.8%、予想3.6%
5月NY連銀製造業景気指数=前回-14.3、予想-10.0

今のところ、インフレ指標も前回並みや前回より弱い数字が予想されています。このような予想を大きく裏切り、インフレ懸念が再燃するということにならない限り、米金利の上昇は限られる可能性が高いでしょう。そうであれば、米ドル/円の上昇にも自ずと限度がありそうです。

「156円」が注目ポイント

テクニカルには、米ドル/円が156円を大きく越えられるかが注目されます。米ドル/円は、5月1日の2度目の介入があったとみられた局面で、急落後の反発は156円を大きく越えられないところで終わりました。また先週の米ドル反発も、156円手前までにとどまりました。以上から、米金利の動向をにらみながら、156円を大きく越えてくるようなら3度目の介入を巡る思惑から荒れた展開になる可能性があります。

3度目の介入があった場合はもちろん、介入がなくても米ドルの上値が重くなるようなら、大量の米ドル買い・円売りポジションの損益確定売りから米ドル下落リスクが拡大する可能性もあるでしょう。

以上を踏まえると、今週の米ドル/円は153~158円中心のレンジで、3回目の介入をにらみながら、徐々に米ドルの上値の限界を確認するという展開を想定したいと思います。