モトリーフール米国本社 、 2024年 4月2日投稿記事より

株価は10年で712%上昇

倉庫型会員制スーパーを展開するコストコ・ホールセール[COST]は、長年にわたって投資家に利益をもたらしてきました。配当をすべて再投資したと想定すると、株価は過去1年間で52%、3年間では100%超、10年間では712%上昇しています。ほとんどの期間において、コストコ株は、S&P500指数の配当調整後リターンを大きくアウトパフォームしています。

しかし、楽しいことには必ず終わりが来ます。コストコは、ロケット燃料を使い果たした状況なのでしょうか、それとも、市場をアウトパフォームし続けた今でも、優れた投資先であり続けるのでしょうか。

割高なバリュエーション

まず、コストコの株価には明らかに割高感があります。株価収益率(PER)は47倍、株価フリーキャッシュフロー倍率は52倍という高バリュエーションです。これだけでも購入しない理由となり得ます。結局のところ、ほとんどの小売株に集まるのは、ある種のバリュー投資家で、小売りセクターに求められるのは低いバリュエーションなのです。ディスカウントストアチェーンのターゲット[TGT]やスーパーマーケットチェーンのクローガー[KR]は、小売りセクターの典型的なバリュー銘柄です。巨大企業のウォルマート[WMT]は、平均的な小売りセクターの投資家が許容できるバリュエーションの限界を上回っています。

出所:FINVIZ.COM 2024年4月1日時点

高水準の配当利回り

コストコの配当政策は手厚く、多くの同業他社との差別化ポイントとなっています。こうした配当性向は、長期投資家に大きな違いをもたらします。過去10年間のリターンは712%ですが、配当を再投資していなければ、累積リターンは546%に縮小し、年平均リターンは23.3%から20.5%に低下します。

なお、表にある他の小売企業のリターンは、配当があろうとなかろうと、配当を除いたコストコのリターンの足元にも及びません。そういったこともあり、配当は、長期投資家がコストコ株を好む大きな理由となっているのでしょう。

コストコの成功の秘訣

コストコはいくつかの重要な点で、他の小売企業と根本的に異なります。

・会員制モデル:コストコのビジネスモデルは年会費に依存しているため、商品を格安価格で提供しながらも利益を上げる余裕があります。
・勝因は大量パッケージ:大量パッケージと限られた品ぞろえが、コストコの低価格と業務効率を可能にしています。
・宝探しのような雰囲気:商品が常に入れ替わるため、買い物客はワクワク感と発見する楽しみを感じることができます。
・大人気のカークランド・シグネチャー:プライベートブランド(PB)のカークランド・シグネチャーは、質の高い商品を低価格で提供することで人気があり、顧客ロイヤルティの向上につながっています。
・従業員満足度の高さが顧客ロイヤルティに寄与:コストコは従業員待遇の良さで定評があり、その点もポジティブな買い物体験につながっています。

これらの重要な資質が、卓越した価値に基づいた独自のカスタマーエクスペリエンスを形成しています。このアプローチは業務効率の向上にも寄与しており、コストコを小売業界における強力な存在にしています。

今から投資するのは遅すぎるのか?

コストコの競争優位性は、当面の間、衰えることはないでしょう。この巨大小売り企業の成功の秘訣は企業文化にあり、それが一朝一夕に変わることはないはずです。

コストコは努力によって現在の割高なバリュエーションを獲得してきたのであり、PERは長期的にある程度の高水準を維持すると予想されます。

一時的に株価が落ち込むことはあるでしょう。PERは同社の過去1年間の平均値を大幅に上回っています。株価が気になるなら、コストコの高騰した株価が一息つくまで、別の銘柄を買う方がいいかもしれません。

一方で、株価の低い他の銘柄は後回しにしてでも、今すぐコストコ株を購入したいという投資家もいるでしょう。しかし、市場のタイミングを計るのは困難です。一時的に株価が下落したとしても、コストコには力強く回復する粘り強さがありそうです。