毎年、新年度が始まる4月はフレッシュな気持ちでいっぱいになります。慣れないスーツやビジネスカジュアルに身を包む新社会人の顔を街で見かけると、自分が新社会人になった時を懐かしく思います。
そこで今回は、新社会人が新年度になった時に決めておきたいお金のことについて一緒に考えてみたいと思います。
新社会人の収入と支出、どうなっている?
まずは毎月の収支の確認です。初任給は産労総合研究所「2023年度 決定初任給調査」や厚生労働省「賃金構造基本統計調査」などによれば、大学卒で月22万円程度のようです。
支出に関しては、以下の図表の通り「家計調査 家計収支編(2023年)」から単身勤労者世帯34歳以下のデータを参考にしました。
毎月の給与は、税金と社会保険料が天引きされて、銀行口座に振り込まれます。給与額面22万円の場合、手取りは約18万4000円になります。なお、住民税は前年の所得をもとに課税される税金のため、社会人1年目は住民税がかかりません。2年目からは住民税がかかります。そのため、2年目に給与額面が増えても、手取りは減る可能性が高い点には留意しておきましょう。
一方で、支出合計は約17万円となっています。収支は1万3,000円の黒字ですから、なんとか貯蓄はできるといった状況となっています。ただ、将来のライフイベントや病気やケガなどのもしもに備えるためには、毎月貯蓄金額に回す金額はもう少し増やしたいところです。
なお、あくまでも上記は平均データなので、実家暮らしでそこまでお金がかからないという状況であれば、その分は貯蓄や支出に回すことはできるでしょう。
新年度から始めていきたい「お金」のこと
では、新年度から始めていきたいお金のことを考えていきます。いきなり貯蓄を頑張るというよりは、まずは「自分のお金を使う傾向」を把握することが重要です。
・最初の3ヶ月程度、「何に」「いくら」お金を使っているのか
・何にお金を使うと、自分は満足度が得られるのか
・必要な支出、不必要な支出にはどのようなものがあるのか
今はクレジットカード、電子マネー、スマホ決済などのキャッシュレス決済が主流となっていますので、明細や購入履歴をもとにチェックしていきましょう。家計簿ノートや家計簿アプリを活用するのも手です。自分が継続しやすい方法で自分の使うお金の傾向を調べていきましょう。
お金を使う練習も大切です。何にお金を使うと、満足度が得られるのか、当然人によって異なります。若いうちからお金を使う練習をしておかないと、お金があっても使うことができない人生になってしまいます。お金は使ってこそ価値があるものです。
そして、ただ把握して終わりではなく、次に活かす工程が必要です。人生というのは長く、将来になればなるほど不確実性は増します。今の生活を満足するだけにお金を使うのではなく、将来にも備えるバランスも大切になってきますので、不必要な支出は削減して、貯蓄金額を増やしていくことも考えていきましょう。
手元で使うお金を増やすなら、最優先は「支出の削減」
収入を増やすのはなかなか大変です。会社で成果を上げる必要がありますし、仮に成果が上がったとしても、給与考課は年1~2回程度の会社が多いでしょう。それに、収入が増えると税金や社会保険料も増えるため、給与額面が1万円増えても、手取り収入は1万円も増えません。本業がままならないのに、副業に手を出すのもおすすめしません。
そこで最優先で取り組みたいのが、支出の削減です。支出削減は自分の工夫次第でできますし、1万円削減すれば使えるお金が1万円増えるからです。
支出削減は毎月決まって一定額発生する固定費から行うのがベターです。固定費には、住居費、通信費、水道・光熱費、保険料、自動車費、サブスク代、その他年会費・月会費などがあります。固定費は金額が大きなものが多く、1度見直すと効果が長続きします。
前述の統計データ(図表2)を参考にすると、通信費に大きな削減の余地がありそうです。特にスマホ代は節約の王道です。大手キャリアのサービスを利用していると、毎月1万円近くの費用がかかることもあります。スマホの格安プランを利用すれば、月2,000円程度で済みます。
統計データの支出から、交通・通信費を月1万円に抑えることができれば、毎月2万5,000円ほどは貯蓄に回すことができそうです。
他にも、電気とガスを同じ会社から購入する「電気・ガスセット割」を活用すると年数千円の費用削減ができる場合や、シャワーを節水シャワーにしたり、節水コマを取り付けたりすると年数千円から1万円程度の削減ができる場合があります。また、統計データにある「家具・家事用品」「被服及び履き物」は毎月購入する必要はないでしょう。
「教養娯楽」は一見減らしたほうが良さそうな支出に見えます。しかし、教養娯楽の費用を削りすぎると、今の生活を楽しめなくなってしまいます。もちろん、行き過ぎた支出はNGですが、そうでなければ、削る必要はないでしょう。
投資はインフレ対策になるが、3ヶ月分の生活費の預貯金を貯めてからスタート
お金を少しでも増やすために預貯金に預けていても、利息はほとんどゼロのため全く増えません。また、インフレによりお金の価値は下がっていきますので、インフレ対策としても投資は不可欠となっています。
しかし、投資にはリスクがつきもので、お金が減る可能性は当然あります。不測の事態が起きてお金が必要になった時、貯蓄がまったくない、投資でお金を減らしているとしたら、困ったことになってしまいます。
投資を本格的に行うのは、万が一に備えるためのお金、3ヶ月分の生活費を預貯金で貯めてからにしましょう。統計データの支出をもとにすれば、約50万円です。
ただ、貯蓄ゼロから50万円貯めるのは時間がかかってしまい、投資をスタートすることが遅くなってしまいます。そこで、3ヶ月分の生活費を預貯金で貯めてから、月3,000~5,000円の少額投資をスタートするのが良いでしょう。
とはいえ、毎月貯蓄に回せる金額が2万5,000円でも、3ヶ月分の生活費が50万円の場合、1年8ヶ月かかります。これだけ時間がかかってしまうと、新年度で高まった投資の熱も冷めてしまいそうですが、もしボーナスがある場合は、ボーナスの半分以上を貯蓄に回すことができれば、預貯金50万円は1年かからないで達成できます。
3ヶ月分の生活費を貯めたら、毎月の貯蓄金額のうち、数千円を新NISAで積み立てるのが良いでしょう。通常、投資の運用益には20.315%の税金がかかりますが、新NISAでは一生涯非課税になるため、お金を効率よく堅実に増やせます。そのうえ、解約も自由なので、今後の結婚・出産・子育て・余暇資金など、さまざまな用途で使うお金を増やせます。新NISAの活用戦略や投資商品の選び方は、こちらのコラム「20代・30代・40代独身の「新NISA」活用戦略」で解説しています。
株高の今、積立投資を始めても全く問題はない
ところで、日経平均株価や米国のダウ平均株価は史上最高値を更新し、足元の株式市場は大盛況です。そうなると気になるのが「株高の今から、積立投資を始めても大丈夫か」という疑問です。
結論からお話しすると、積立投資において、開始タイミングを気にする必要は一切ありません。ただ、投資するならばとにかく早くしたほうが良いことは間違いありません。株式市場は、経済成長に合わせて値上がりするものだからです。
世界の人口は増加しています。2024年現在80億人を突破し、2058年には100億人になると推計されています。人口が増えれば、消費が増え、その消費を支えるために生産も増え、経済は拡大していきます。経済が拡大すれば、当然企業の業績も拡大し、株価も合わせて上昇する可能性が高まります。
投資に「絶対」はありませんが、今から20年、30年、40年先、現在の株価よりも上がっている可能性が高いので、今すぐに投資を始めたほうが良いのです。
ただ、将来値上がりすると思っていても、一括投資は精神的にはあまり良くない投資方法です。数十年後という長いスパンで値上がりすることが見込まれる資産・銘柄を購入していたとしても、値下がりする時期が訪れる可能性はあります。暴落した場合には不安になることでしょう。
このような不安を解消するという意味でも、積立投資が向いています。暴落した場合も安く買えるチャンスだと捉えることもできるわけです。
市場が暴落している時に資産を売却する必要がないように、生活費3ヶ月分の預貯金を用意しておくわけですし、家計に無理のない金額で積み立てを行うことが必要です。目先の数字に一喜一憂せず、コツコツと積立投資をすることで、数十年後には資産が大きく増えているはずです。
自己投資にもお金を振り向けるのも忘れずに
新社会人のように若い人ならば、自己投資にお金を使うことも大切です。「ノーリスク・ハイリターン」の金融商品はありませんが、自己投資は「ノーリスク・ハイリターン」になり得る投資です。さまざまな経験を積んだり、勉強して資格を取ったりすることで自分のスキルが上がれば、将来の自分の稼ぎ力が上がるからです。
とはいえ、自己投資も「投資」とある通り、リターンを考えて行うことが必要です。費用対効果の低い自己投資は、無駄遣いでしかありません。浪費することも一種の経験ではありますが、お金も時間も無限にあるわけではないので、コスパ(コストパフォーマンス)・タイパ(タイムパフォーマンス)を考えることはとても重要です。自己投資の考え方は、以前のコラム「資産形成も自分磨きも。人類最大の発明「複利効果」を活用し尽くす」でも解説していますのでぜひ参考にしてください。
以上、新社会人が新年度になった時に決めておきたいお金のことについて紹介してきました。お金と向き合うと、人生はより良くなっていきます。ぜひ継続しやすい仕組みを構築して実践してもらえれば幸いです。