今回は、未来の自分が笑顔で生活を送るために、今すぐにでも活用したい「複利効果」を一緒に考えていきます。

アインシュタインが人類最大の発明と言った「複利効果」を活用しよう

銀行にお金を預けると利息が受け取れます。利息の計算方法には、利息を元本に組み入れない「単利」と、利息を元本に組み入れる「複利」の2種類があります。

単利は、預け入れた時の元本に対してのみ利息が付くものです。元本の金額や利率が変わらない限り、毎回、同じ額の利息を受け取ります。

一方複利は、最初にもらえる利息は単利の金額と同じです。単利と違う点は、もらえる利息を元本に組み入れる点です。利息を組み入れた元本に対してさらに利息がつくため、長期で取り組むほど雪だるま式にお金が増えていくのですが、これが複利効果です。この「複利効果」は、アインシュタインが「人類最大の発明」と言ったとされているほど、お金を増やすためには大切な概念です。

例えば、毎年10万円積み立てることを考えます。この時、毎年3%の金利がつく場合、10年後は単利の場合約117万円、複利の場合約118万円で差は1万円です。しかし、30年後は単利の場合約440万円、複利の場合約490万円で50万円と大きな差がつきます。

【図表1】毎年10万円を利回り3%で運用した場合の元利合計(税金・コストは考慮せず)
出所:(株)Money&You作成

このことから、複利効果を得るには「時間を長くかけること」が重要だとわかります。複利効果を大きくしたいなら、時間を味方につける必要があるのです。

人間が複利効果を軽んじてしまう傾向にあるのは、行動経済学の言葉で言えば「見えない数字の過小評価」によるものです。計算してみないとわからないような、事柄は無視しがちなのです。

しかし、皆さんはこの「複利効果」の重要さを知ってしまいました。知ったからには使い倒したいですよね。人間には寿命がありますので、複利効果をできるだけ長く活用したいなら早く始めるしかありません。

投資を始めるのは「生活費3ヶ月分の預貯金」ができてから

複利効果を長く得たいがために早く始めるとはいえ、まったく預貯金がない状態で投資を始めることは禁物です。投資効果は確実に得られるものではないし、当然損失を出すこともあります。

元本割れしているタイミングで、お金が必要だからと引き出すようなことがあれば損をすることになります。そもそもすぐ引き出すような投資では複利効果は得られません。

投資を始める時に、絶対に守ってほしいのが「自分の資産の線引きをする」ことです。投資に回しても良い資産と、生活に必要な資産を分けて考えてください。

生活に必要な資産は、絶対に失ってはいけない資産です。これを取り崩して投資を行うことはとても危険なのでやってはいけません。「命金には手を出すな」という投資格言があるほど、これは重要なルールなのです。

本格的に投資を始めるなら、生活費6ヶ月分の預貯金を貯めるようにしましょう。例えば、生活費が月20万円だとしたら、120万円を預貯金で貯めよう、ということです。ただ、仮に毎月5万円ずつ貯蓄すると、120万円貯まるまでに丸2年かかってしまいます。

とはいえ、これでは複利効果を活用できず、お金の増えるスピードが上がっていかないので、実際には「生活費3ヶ月分の預貯金」が貯まったら、月数千円程度の少額から積立投資をスタートさせましょう。少額で始めることで、投資でお金を稼ぐ感覚を掴むことができます。

最初の一歩は「新NISAのつみたて投資枠」でコツコツ投資

全ての人が「お金は減らさずに増やしたい」と願っているはずです。株価の値動きと上手く付き合いながら投資をするならば、2022年9月16日付のコラム「積立開始時期はいつがベスト?」でも解説した「長期」「分散」「積立」という投資の考え方が肝心です。

その「長期」「分散」「積立」投資と相性が良いのが「新NISAのつみたて投資枠」です。新NISAのつみたて投資枠は、年間の上限額120万円での投資で得られる利益に対して、一生涯非課税となる制度です。

つみたて投資枠で投資できる商品は、金融庁の一定の基準を満たした投資信託・ETF(上場投資信託)となっており、手数料が安く、長期積立投資に適した商品です。一度、投資の設定をすれば、あとは自動的に毎月投資信託が買い付けられていくので手間はかかりません。

●関連記事:「新しいNISA」の活用戦略

複利効果は自己投資にも活用しよう

将来のためにお金を貯めるだけでなく、「今」を楽しむためにもお金を使いましょう。同じお金を使うにしても、若い時のほうが色々な経験ができます。

複利効果は金融商品への投資だけで得られるものではありません。「自己投資」においても複利効果は発揮します。自分の価値が上がれば、それが複利になって将来の大きな力となるからです。

「死ぬまでにいかにお金を使い切るか」という新しい視点を提示した米国の経営者、ビル・パーキンス氏は、若い頃は旅に出て格安のユースホステルに泊まり、同世代の旅人と和気あいあいと楽しむことができる一方で、30歳になると責任のある立場に立つため、長期的な休みが取りづらいと語っています。

また、簡素な宿泊施設に泊まったり、大荷物を抱えて移動したりすることが体力的に難しい点も挙げています。若い頃は多少の無茶ができるため、バックパックといった格安旅行が可能です。そうして得た経験は、「新しい価値観を知ったきっかけ」として後々の人生を豊かにすることができます。

しかし、経験で得られる「経験ポイント」とも言えるものが、年齢の上昇とともに下がってしまうのです。そのため、自己投資は若いうちこそ後々の人生で役立ちます。

そして、お金に換算できない「見えない資産」(無形資産)への投資も大切です。知識やスキルだけでなく、人間関係、評判、健康などを築いていくことも、これからの時代には欠かせません。価値が高く、実力のある人は、会社や年齢という枠組みを超えて、いつまでも必要とされ続けるでしょう。

未来の自分が笑顔で生活を送っているためには、複利効果を意識し、「時間とお金」を経験や無形資産構築に配分していくことも大事です。

「タイムバケット」を用いて後悔しない人生計画を立てよう

ここで、「タイムバケット」というツールを用いて、人生のどこで何をやるのか、考えてみるのをおすすめします。

まず現在をスタート、予想される人生最期の日をゴールとします。そして、その間を5年、10年で区切り、その区切り(時間のバケツ=タイムバケット)に、やりたいこと、起こりうる大きなイベントを入れていきます。

【図表2】人生計画「タイムバケット」の例
出所:(株)Money&You作成
『マンガと図解 はじめてのFIRE』より抜粋

時間と健康とお金を軸に考えると、自由な時間を得たからできること、健康であるからこそ楽しめること、お金があるから実現できること、それぞれ違ってきます。将来、時間ができた時にやろうと思っても、若いうちにやるからこそ価値があることもあるでしょう。

時間を味方につけるには早くやるしかありません。残りの人生で「今この時」が常に1番若いのですから、始めるのに遅いことなんてないのです。今から始めていきましょう!

(2023年3月17日に公開した記事を2024年1月17日に内容を一部更新しました。)