先週の振り返り=前週から一転、米ドル高・円安に戻る
米ドル/円は149円台まで上昇
先週の米ドル/円は3月12日(火)以降、ほぼ一本調子で149円台まで上昇しました。CPI(消費者物価指数)、PPI(生産者物価指数)など、米インフレ指標が予想より強い結果となったことから、米利下げ期待が後退。それを受けた米金利上昇に伴う金利差米ドル優位拡大に沿った展開だったと言えるでしょう(図表1参照)。
もう1つのポイントになったのは、前週の146円台までの米ドル急落に大きく影響した可能性のある米ドル買いポジション手仕舞い売り圧力の低下ではないでしょうか。そこで、この点について少し詳しく見てみたいと思います。
ヘッジファンドなどの取引を反映しているCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円売り越し(対米ドル)は2月末には13万枚以上に拡大し、経験的には米ドル買い・円売りの「行き過ぎ」懸念が強くなっていました(図表2参照)。そうしたポジションの損益確定の動きが急拡大したことが、一時146円台まで米ドルを急落させた大きな要因の可能性がありました。
ヘッジファンドは過去半年平均が売買転換点の目安になっているとの見方があります。具体的には、過去半年平均、週足なら26週MA(移動平均線)、日足なら120日MAを割れると米ドル売りが広がり、上回ると米ドル買いが広がるということです(図表3参照)。過去半年平均、120日MAは足下で147.8円程度。その意味では、先々週は120日MAを割れたことで、テクニカルに米ドル買いポジション手仕舞い売りが加速した可能性はあったのではないでしょうか。
一方、先週は上述のように米金利上昇、米ドル買いが広がる中で、この120日MAを一転上抜けることになりました。これにより、前週とは逆にヘッジファンドなどの米ドル買いポジション手仕舞い売り圧力が低下し、米ドル反発が広がりやすくなった面もあったのかもしれません。
今週の注目点=日銀金融政策決定会合、そしてFOMC
日銀金融政策決定会合、マイナス金利解除の影響は?
今週は先進国、新興国の金融政策決定会合が多数開催されます。その中でも特に注目を集め、相場が大きく動くきっかけになりそうなのは、やはり3月19日(火)の日銀金融政策決定会合、そして20日(水)のFRB(米連邦準備制度理事会)の会合でしょう。
日銀は、今回の会合でマイナス金利解除など現在の大規模な金融緩和の見直しを行うとの見方が強くなっています。では、これを受けて「円金利上昇=円高」に動くかと言えば、それは限定的ではないでしょうか。
現在の米ドル/円を取り巻く状況は、大幅な金利差の中で円売りが「バブル化」した2007年と似ていると考えています。2007年にかけて、日銀はゼロ金利解除、さらに追加利上げに動きましたが、その中でも米ドル高・円安の流れは変わりませんでした。これは、大幅な金利差の中では日銀の政策変更に伴う小幅な円金利上昇の為替への影響は限られたことを示しているでしょう。
この2007年にかけてと最近の米ドル/円を取り巻く状況は、大幅な金利差が象徴的なように似ていると思います。その意味では、今回も日銀マイナス金利解除による円金利上昇、円高への影響はやはり限定的ではないでしょうか。
FOMC、利下げ見通しを2回以下に下方修正か?
次に3月20日(水)予定のFRBの会合、FOMC(米連邦公開市場委員会)について考えてみます。FOMCは2回に1回、メンバーの経済見通しである「ドット・チャート」を公表しますが、今回はそのタイミングになります。
前回の「ドット・チャート」では2024年中に3回の利下げ見通しとなっていました。そこから最近にかけて景気が予想以上に底固く推移しており、株価も最高値圏での推移が続き、さらにインフレ懸念も微妙に再燃の兆しが出てきたことなどから、この利下げ見通しを2回以下に下方修正する可能性が注目されています。実際にそうなったら、「米金利上昇=米ドル高」を試す可能性はあるでしょう。
とは言っても、米ドル/円は5年MAかい離率で見ると、すでに循環的な高値圏に達しています(図表4参照)。また、CFTC統計の投機筋の円ポジションは、一時に比べて米ドル買い・円売り「行き過ぎ」が修正されたものの、先週の段階で円売り越しが10万枚程度となっており、なお米ドル買い・円売りの「行き過ぎ」圏にあることに大きな違いはなさそうです。
以上のように見ると、米ドル高・円安トライとなった場合でも、その動きには自ずと限界があり、年初来の米ドル高値を更新するのは簡単ではないでしょう。そうしたことを踏まえると、今週の米ドル/円の予想レンジは148~151円中心で想定したいと思います。