“Stay Invested” が正解だった2023年、米国株は円建て史上最高値を更新

2023年も残すところあと3週間となりました。結果が全ての投資の世界においては、2023年は世界の株式投資家にとっては素晴らしい年でした。S&P500はこれまで(12月8日現在)19.9%上昇し、ナスダック100に至っては37.6%の上げで、引け値ベースで2023年の高値を更新しました。

2023年の世界の株式市場の上昇は多くの投資家にとって想定外のものであったと思います。2022年末の今頃はコンセンサスとして、米国ではリセッションが起き、株価は大きく下がるというものでした。2023年が明けても欧州ではロシアのウクライナ攻撃は止まることなく、米国ではシリコンバレー銀行の破綻もありましたが、FRB(米連邦準備制度理事会)によるインフレ退治のための利上げが継続されました。10月に入るとハマスのイスラエル攻撃も起きました。私たちが住む世の中は決して平和ではないと実感させられたものの、蓋を開けてみると株式市場は上昇、2023年の米国株は2桁台のリターンで終わりそうです。

12月7日のS&P500の引け値は4,604ポイント、私が9月11日にマネクリでアップデートした、2023年の年末のターゲットである4,800まで残すところ、あと4%のレベルとなりました。

ドル建てのS&P500は2022年1月4日の4,818.6が史上最高値、また、ナスダック100は2021年11月22日に16,764.9ドルで史上最高値を更新していますが、追加の更新はそれほど遠い先ではなさそうです。円建てで見るS&P500とナスダック100については、すでに2023年11月22日、史上最高値を更新しています。

2023年は日本株も堅調で日経平均はこれまで23.8%の上げですが、円建てで計算したS&P500は32.6%、ナスダック100に至っては52.1%の上げと、いずれも日経平均の上げ幅を大きく上回っているのです。海の向こうのアメリカでは2023年、世界中の投資家が注目していた金利の上昇が続くなか、リーマン・ブラザーズ以来の銀行破綻と言ったリスクイベントがあり、危なっかしく見えましたが、結局私たち円ベースの投資家にとっては、米国株の指数に投資をしていた方が、日経平均に投資をするより高いリターンを得て2023年を終えそうなのです。結果が全てである投資の世界において、米国株の“Stay Invested ”(投資を継続する)の大切さが証明された年となりそうです。

2024年も引き続き上昇の見通し。調整があるとすれば前半、買いの好機に

さて2024年の米国株の見通しですが、私は引き続き上昇を継続するだろうと見ています。

とは言っても、もちろん節目節目で一時的な株価の調整はあるものの、そこは買いの機会であると考えており、S&P500の2024年末のターゲットは5,200ポイントです。

上昇のドライバーとなるのは、堅調な企業業績の伸びと金利の低下からくるバリュエーションのサポートと見ています。S&P500の2024年のトップダウンのコンセンサス予想EPSは244ドルですが、2025年の予想EPSは270ドルと11%の増益が予想されており、2024年金利が下がってくる局面でバリュエーション的には19倍程度まで買われてもおかしくないと見ています。これはS&P500の歴史的な平均PERの19.5倍を若干下回る程度となります。

1年を通して見ると、2024年は基本的には6月までは大きな方向性なく推移、6月から8月までの夏はサマーラリーで上昇、その後例年のパターン通り9月、10月が弱含み、11月、12月がしっかりという流れを想定しています。調整があるとすればそれは前半に起きると考えています。

企業業績は右肩上がり、政策金利の上げどまりが株価上昇のドライバーに

2020年コロナ禍で落ち込んだ企業業績ですが、翌2021年第4四半期に前年比で28.3%増と大きくリバウンド、その後徐々に業績の伸びは衰えたものの、2023年の第2四半期に7.1%減でボトムアウトし第3四半期は4.5%の増益となりました。今後については、第4四半期、2024年第1四半期、第2四半期、第3四半期はそれぞれ1.6%、7.2%、11.0%、9.4%の増益が予想されており、トレンドしては今後右肩上りの業績の伸びが期待されます。

【図表1】米国企業業績の見通し(S&P500 EPS成長率予想・四半期)
出所:ブルームバーグよりマネックス証券作成

通年で見ても2023年は前年比で3.3%の減益ですが、2024年は11.1%の増益、2025年についても現時点では12%の増益予想ですので、企業業績予想の観点では、2024年の米国経済はソフトランディングに成功しそうです。

【図表2】米国企業業績の見通し(S&P EPS成長率予想・年間)
出所:ブルームバーグよりマネックス証券作成

もう1つのマーケットが上昇するために重要となるドライバーが金利の低下です。

これまで株価の重石となっていた金利ですが、マーケットはインフレがすでにピークをつけていると考え5.02%まで上昇していた10年債利回りは4.3%まで下落しました。政策金利の低下も遅くとも2024年後半に始まると考えています。政策金利の上げが止まったとしても市場では“Stay high for longer”、つまり、金利は高いレベルに留まると言う見方があり、株式市場にとっては良くないと言う印象を与えます。

しかし、歴史的にみると、政策金利がこれ以上上がらないと言う状況は、それだけでも株式市場にとっては良いと言うのが証明されています。2024年に入りFRBによる利下げが始まるとすると、グロース株や小型株にとっても良い展開となると考えています。

2024年は米大統領選のほかにも各国選挙イヤー、地政学リスクへのヘッジとして一部を金での保有も検討を

2024年の米国株市場の行方を考えるにあたり避けて通れないのは4年に一度の大統領選です。共和党候補では77歳のトランプ元大統領が絶対的な人気を維持、このままで行くと2024年7月の共和党全国大会でトランプ元大統領が大統領候補となり、81歳と高齢のバイデン大統領と77歳のトランプ元大統領との一騎打ちという4年前の選挙の再来の可能性が高いと考えられます。個人的にはどちらが大統領になっても今後の米国の行方に不安を覚えるのですが、結論から言いますと、結局誰が大統領になるかと言うことより、前回の大統領選挙のように選出が大きく揉めることが無くはっきりした形で新大統領が選出されることが重要です。

共和党は一般的に民主党よりビジネス寄りで、共和党の大統領の方が株価にとって良いと思われがちなのですが、米国株の歴史を確認すると実は民主党の大統領の方が株価のパフォーマンスが良かったという例がほとんどなのです。むしろ、マーケットにとって重要なのは、企業業績であり、今後の見通しについては先に述べた通りです。

加えて米国では2.26兆ドル(約328兆円)相当の個人投資家のMMFや3.64兆ドル(約528兆円)相当の機関投資家のMMFの残高が積み上がっています。金利の上昇を受けリスクフリーのMMFの残高は増えてきているのですが、今後も株価が上昇を続けてくるようであれば、現金の一部は株式市場へ流れ始めると考えています。

リスクはどうかというと、米国経済のリセッションの可能性です。私の基本的な考えとしては、現時点の業績見通しや、企業のマネジメントのコメントを見ると、米国経済はソフトランディングでいけるとは考えています。あくまでもリスクとしてのことです。また、投資家のセンチメントに冷や水を浴びせかねないのが地政学リスクです。2024年は世界的に選挙の年です。世界の株式市場時価総額の80%、国民総生産(GDP)の60%、世界の人口の40%に相当する国々で選挙が行われる予定となっていますので、注意が必要です。

このところ2年連続で予期しなかった戦争が起きました。予期しなかったことが起きることに対する心の準備は必要です。そんなリスクヘッジのために、資産の一部を金や金のETF(SPDRゴールド・シェア NYSE: GLD)等で保有することも1つの選択肢かもしれません。

大型株のラリーの下、小型株に魅力。また新興国株にも注目

「マグニフィセント・セブン銘柄」の7銘柄(アップル[AAPL]、マイクロソフト[MSFT]、アルファベット[GOOGL]、アマゾン・ドットコム[AMZN]、メタ・プラットフォームズ[META]、エヌビディア[NVDA]、テスラ[TSLA])については、2023年ほどの上げはないものの2024年も堅調に推移すると考えています。マグニフィセント・セブン銘柄を長期的に保有したいと考える方には、「マグニフィセント・セブン銘柄」と他3銘柄で構成されるFANG+指数連動の投資信託へ時間の分散で投資ができる、積立投資をお勧めします。S&P500銘柄のうち「マグニフィセント・セブン銘柄」を除く493銘柄には出遅れ感があり、割安となっています。共和党、民主党と党に関係なく、米国ではインフラ投資は継続して行われるのでインフラ関係銘柄に投資妙味があると思います。

S&P500は時価総額加重平均指数と呼ばれ、時価総額の大きな銘柄の株価に指数が影響を受けやすくなっています。一方、S&P500の時価総額の大小に関わらず株価指数に与える影響が同じ時価総額均等(イコールウエイト)指数については、出遅れ感のあるS&P500の中の数多くの銘柄の上昇の恩恵を受けるとことができると考えられます。このS&P500時価総額均等指数に連動するETFがInvesco S&P 500 イコール・ウェイトETF(NYSE:RSP)です。S&P500に限らず、大型株主導のラリーにより出遅れている小型株の魅力も増してきています。小型株に投資する場合ETFでは、小型株指数であるラッセル2000に連動するiシェアーズ ラッセル2000 ETF(NYSE:IWM)があります。

米国金利が高止まり下落に転じた場合最も恩恵を受けるアセットクラスの1つが新興国株となります。新興国株全体に投資をする場合、新興国市場連動型の投資信託やETF(iシェアーズ MSCI エマージング・マーケット ETF、NYSE:EEM)があります。もしくは、インドやベトナム、インドネシアといった個別国に投資をするのであれば、それぞれの国の株価指数連動型の投資信託やETFへの積立投資が良いでしょう。