慌ただしく過ごしているうちに12月になりました。2023年も大詰めを迎えています。今回は2024年から制度が大きく変わる「NISA」について解説したいと思います。

2023年も様々なニュースがありました。世界を揺るがす大事件が次々と起きて忙しかったように感じますが、2023年は何と言っても日経平均が33年ぶりの高値に達した事実が眩しく輝いています。激動の年であったことは間違いありませんが、未来への希望も強く感じた1年でした。

新NISAスタート、旧NISAよりも便利になった4つのポイント

来たる2024年はどのような展開が待ち受けているのでしょうか。世界は大きく動いており、マネー市場にも新しい動きが始まります。その象徴が「新しいNISA」制度のスタートです。

新しいNISA(以下、新NISA)はいくつかの点で、従来のNISA(以下、旧NISA)と比べて使い勝手が格段に良くなっています。違いは以下4点になります。

1. 非課税枠が1800万円に拡大

旧NISAの一般NISAの非課税枠(600万円)と比べて3倍に拡がりました。この枠の中で株式や投資信託に投資した元本の値上がり益と分配金(配当金)に対する税金が非課税となります。

2. 非課税期間が無期限に

これまで旧NISAは一般NISAで5年、つみたてNISAで20年という非課税期間が定められていました。今後はこれがすべて撤廃されて、いつでも、いつまでも非課税で投資できます。

3. 制度拡充と仕組みの簡略化

旧NISAではつみたてNISAと一般NISAの併用はできませんでした。それが新NISAでは、つみたて投資枠と成長投資枠の2つの枠に拡充され、その上で最大1800万円まで両方の枠を使うことができます(成長投資枠は1800万円のうち1200万円まで)。

4. 売却した分の非課税枠が翌年に復活する

旧NISAでは保有している株式や投資信託を売却すると、その分の非課税のメリットは売却後には受けられませんでした。それが新NISAでは、翌年になると売却で空いた非課税枠が復活します。

この4つの点でNISA制度は非常に使いやすく、有利なものとなりました。

新NISAで押さえておきたい投資戦略

また、新旧のNISAで共通点もたくさんあります。その代表例が投資対象とされる金融商品です。

新NISAのつみたて投資枠は、旧NISAのつみたてNISAと同様に投資信託とETFが投資対象となります。そして成長投資枠は旧NISAの一般NISAと同じように、上場株式、投資信託、ETF、REITが投資対象になります。

成長投資枠は、株式にも投資信託にも自由に投資できますので、ここで大きな果実を得るチャンスが生まれます。

新NISAは「投資によって得られた利益が非課税になる」という制度ですから、大きな利益が得られるチャンスを狙うべきです。それには大きく値上がりする見込みのある株式に投資するのが一法です。

大きな成長が期待できる銘柄を狙って、万が一うまく行かなかった場合には売却して、翌年に非課税枠が復活するのを待って、改めて成長株への投資をやり直すという方法を採ることができます。

株式投資の世界はそれほど甘いものではなく、運用がいつもうまくいくというものではありません。プロと呼ばれるファンドマネージャーでも毎年のように高パフォーマンスを挙げるのに苦労しているのが実情です。

大きく値上がりすることが期待される成長株への投資は夢があって、株式投資の最大の魅力でもありますが、反対の結果に終わることも十分にあり得ます。新旧ともにNISAはあくまで「長期にわたる資産形成の一助」という位置付けであり、その基本線に沿ったより現実的なスタンスで臨む必要もあろうかと思います。

したがって「長期スタンスで安全な運用を重視」した上で、なおかつ「可能な限り大きな成果を達成する」という両にらみの戦略でNISAを活用してみてはいかがでしょうか。それには長期にわたって安定的な成長を見込むことができ、その上で配当金も手厚い中~大型株に的を絞るという選択が有効かと思います。

大型株(ここでは時価総額が1000億円以上)は安定成長期に入っている企業が多く存在し、配当金もさほどぶれずに毎年安定しています。

そこに時価総額が300億円から1000億円くらいのミドル級の企業の中から、大きな成長が期待できる成長企業を選び出して、配当金と成長との一挙両得を狙うというアプローチを重ねます。

配当金に関しては、安定した支払い実績を持っている企業が最も堅実ですが、堅実なだけでなく利益の成長に合わせて、毎年のように配当金を増やしている企業(増配企業)であれば非常に望ましいと言えます。

急成長した企業は、経営環境が悪化して逆風にさらされると業績が急降下するリスクもあります。したがって、めったなことでは減配しない、というだけで十分に投資対象としては安心できます。利益水準が年々それほど変動しない、成長よりも安定性を重視している企業でもNISAには十分にふさわしいとも考えられます。

その上で、成長も安定的な配当も、と少々欲張りな基準で銘柄を探してみると、いくつかの企業をピックアップすることができます。業績のブレが小さく、安定して利益が成長し、かつ配当金の成長も合わせて狙うことができるという企業は、内需セクターに多く含まれているものです。

外需(輸出関連)企業は、海外市場の成長に自社の成長を託しているために、どうしても海外の経済動向や外国政府の影響を強く受けることになります。現在のような激動の世界経済の環境下では、業績の好不調の波が大きくなりがちで、それだけに収益や配当金も変動しやすくなります。

それに対して内需的な成長を狙う企業は、日本の個人消費や官公庁からの安定した需要をターゲットにしているだけに、収益環境がさほど大きくはぶれにくくなっています。

新NISAを使って長期投資をしたい優良銘柄4選

そこで、NISAの枠組みを活用して長期投資に足りうる優良銘柄を選んでみました。それが以下の4銘柄です。この数年間ですでに業績も、そして株価も大きく拡大している企業もありますが、今後も安定した成長が期待できるため、今から投資しても十分に成果は得られるものと思います。2024年からスタートする新NISAへの組み入れ対象として、日本の未来を大いに託してみたいものです。

ブリヂストン(5108)

日本が誇るグローバル企業の先駆例。ミシュランと並んで世界の2大タイヤメーカーを形成する。配当利回りの高い銘柄の代表格でもある。コロナ禍で落ち込んでいた新車販売が半導体の調達正常化によって復活しつつあり、新車向けタイヤの伸びが回復しつつある。

EVは航続距離を伸ばすために車体の軽量化が至上命題となっている。従来品より2割も軽量化して、3割も抵抗を減らした「エンライトン」の拡販が今後の収益のカギを握る。EVの普及により2030年には出荷本数の9割が「エンライトン」に置き換わると見ており、さらなる業容の拡大が期待される。

【図表1】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2023年12月8日時点)

積水ハウス(1928)

戸建て住宅のトップメーカー。高級路線が浸透しており、日本でも金利上昇が始まりつつあるが業績は順調。今期の売上高は初めて3兆円に乗せる見通しで最高益を更新。高い配当利回りが継続する見通しである。住宅ばかりでなくリフォーム、都市再開発にも進出している。

外資系の有力ホテルチェーンが日本で高級ホテルの展開を急いでおり、同社はマリオットと組んで「フェアフィールド」ブランドを展開する計画。世界の富裕層の旅行需要を取り込み、地域活性化にも貢献する。

【図表2】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2023年12月8日時点)

三菱HCキャピタル(8593)

三菱系の三菱UFJリースと日立系の日立キャピタルが経営統合して誕生。機械、事務機、医療機器に始まり、不動産、航空機、再生可能エネルギーの発電分野までをリース・ファイナンスとして扱う。データを活用したDXプラットフォームの構築にも力を入れる。

5月に発表した中期経営計画では、3年後の2026年3月期には純利益を1600億円(現在は1162億円)、ROE10%、配当性向40%を目標とした。経済安保の大きな流れの中で、製造業の海外製造拠点が次々と日本への回帰現象を起こしており、リース案件はますます高まることが予想される。

【図表3】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2023年12月8日時点)

荏原製作所(6361)

「ポンプの荏原」として知られる。自動車、半導体、エネルギープラント、上下水道、食品、医薬品、インフラ整備など、産業界のあらゆる工場、作業所でポンプが必要とされており、その数限りないニーズに応える。

現在ではポンプを軸に、冷熱機械、送風機、コンプレッサーまでを手がける。半導体の製造工程では同社の真空ポンプ、CMP装置が不可欠とされる。九州・熊本や北海道での大規模な半導体工場の建設に合わせて、日本国内でも精工なポンプの需要が急速に高まっている。

【図表4】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2023年12月8日時点)