2025年春闘は前年を上回る高い伸び率
賃上げに関するニュースを耳にしない日はなくなりました。2025年の春闘も大幅なベア(ベースアップ)の話題でもちきりです。
連合が4月3日に発表した2025年の春闘・第3回目の集計では、平均の賃上げ率が5.42%となりました。2024年に続いて5%台の高い伸びとなっています。
しかもトヨタ自動車(7203)、日立製作所(6501)、日本電気(NEC)(6701)などの大企業が次々と「満額」回答を出しています。中には三菱ケミカルグループ(4188)のように要求水準を上回る回答を出したところもあります。
新入社員の初任給が30万円を越える企業も増えています。最も厳しいと見られていた中小企業でも連合の第3回の集計では賃上げ率は5.00%となっていて、実現すれば1991年以来の5%大台乗せとなります。
2024年の春闘では賃上げ率(ベアと定期昇給の合計)が平均で5.10%となり、33年ぶりの高い伸びとなりました。そのため、2025年はさすがにペースダウンするとの見方もありましたが、落ちるどころか上昇率はさらに高まっています。
賃上げ拡大の理由はインフレと人手不足
これほどまでの賃上げが世の中で広がっている理由は、インフレと人手不足にあると見られます。
物価の上昇を止めるために日銀は利上げを継続するとの見方が根強くありますが、それで物価上昇のスピードが緩やかになったとしても、もう一つの要因である人手不足は残り続けます。
優秀な人材を集めるために企業はあらゆる手を尽くしており、そのためにも賃上げを継続する意向が強くなっているのでしょう。そのような状況と表裏一体の関係で、企業の中では正社員の転職も増えています。
正社員転職が増加、優秀な人材確保のため労働環境の整備は必須
過去1年以内に転職した人の数は、2024年は前年比+5%の99万人となり、データのある2012年以降では最も多くなったそうです。日本経済新聞が総務省の「労働力調査」を使って調べました。10年前と比較すると+62%も増えています。
一方で非正規雇用の社員の場合、この10年はほぼ横ばいです。最近の転職は正社員の間で特に目立っています。
賃金の水準や育児・介護休暇の制度など、職場環境のよりよい企業に20代後半から40代前半の若手社員が転職しているケースが目立っています。企業は優秀な人材を社内にとどめておくために、これまで以上に労働環境を手厚くしなければならなくなっている状況が浮かび上がります。
人材紹介、転勤支援…正社員転職に関連する銘柄4選
正社員の転職に関連する企業をピックアップしてみます。
ジェイエイシーリクルートメント(JAC Recruitment)(2124)
転職を希望する人と人材を求める企業を結びつける人材紹介会社。海外の事例を参考に当初はイギリスで事業を始めた経緯から、現在も外資系企業や海外で展開する日系企業のミドル層以上のマッチングを得意としている。企業と人との間を同社のコンサルタントが仲介するスタンスが特徴。コンサルタントの育成に力を入れている。最高益を更新中。

パーソルホールディングス(2181)
求人広告「doda」(デューダ)で知られる。篠原欣子氏が設立した「テンプスタッフ」が母体となり、「ピープルスタッフ」、「インテリジェンス」と合体して現在の形となった。一般事務職の派遣ビジネスから始まったが、現在は転職を希望する人と人材を求める企業を結びつける人材紹介が成長戦略の中心となっている。最高益更新の見通し。
ビジョナル(4194)
「ビズリーチ」の運営母体。会員制の転職プラットフォーム「ビズリーチ」は、マネジメント層や専門職などハイクラスの求職者と、それらの人材を求める国内外の企業、さらに人材紹介会社の三者をマッチングする独特のビジネスモデルを有する。採用が決まった際に成功報酬を受けとる形で急成長を遂げた。最高益を更新中だが無配を継続。
リベロ(9245)
転職には引っ越しを伴うケースもある。地方から都市部へ、大都市圏から地方へ。2009年に設立されたグロース市場のリベロは引っ越しに伴う電気・ガスの手配、クラウド賃貸契約サービスなど生活上のサービスを丸ごと提供する「新生活ラクっとNAVI」を運営する。転勤支援のためのパッケージサービスが好評で売上は急成長している。無配を継続。