2019年夏ごろから商社株への投資を開始したバークシャー・ハサウェイ[BRK.B]
「トランプ関税」が世界のマーケットを大きく揺さぶっています。
市場の自動ブレーキが効き始めているのか、最高値を更新したばかりの米国の株式市場が下げ基調を強めています。視界不良の航海では安全運転を心がけるべきです。
「相場の神様」、ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイ[BRK.B]も、保有するS&P500に連動するETFをすべて売却しキャッシュ比率を高めています。その事実が株式市場を取り巻く投資家に警戒心を抱かせています。
そのバークシャーは年に一度、「株主への手紙」としてウォーレン・バフェット氏の投資にまつわる考え方を株主に表明しています。
2025年の「手紙」では日本の5大商社への投資意欲をあらためて強く表明しました。2024年末の段階で総合商社5社の保有額は235億ドル(3.5兆円)に達します。それをさらに買い増しする意向であることが2025年の「手紙」では再び示されました。
バフェット氏は2019年夏ごろから商社株への投資を開始し、2023年4月には来日して5社の経営トップそれぞれと面会するなど、商社への思い入れは微塵も揺らいでいないようです。
商社株の保有は「極めて長期的なものになる」
株式投資におけるバフェット氏の真骨頂は、一度購入したら売りを考えない、「永遠に保有する」こととされています。したがって商社株の保有は「極めて長期的なものになる」ことが「手紙」の中で強く表明されています。
トランプ政権の関税は広い範囲に発動されることで、世界の貿易量は今よりも確実に減ることになりそうです。その状況は総合商社にとって必ずしも有利な方向ではありません。それでもなおバフェット氏の商社への思い入れはまったく揺らいでおりません。
財務体質、人材のレベルの高さ、経営陣の柔軟性、ビジネスの構築力、先進性、どの点をとっても日本の商社恐るべし、です。
総合商社はどの企業も、ひとつの事業体として把握するのが非常に難しい複雑で多岐にわたるビジネスモデルです。それでもインフレ経済下では商社の事業全体に分があると言えましょう。バークシャーの後ろ盾がなかったとしても、各社の動向には常に目を向けておきたいものです。
常に動向に目を向けておきたい商社株
三菱商事(8058)
三菱グループ「御三家」の一角。前期の売上高は19.5兆円、純利益は9600億円。資源、機械、化学で商社トップ。国内最大の食品卸である三菱食品、コンビニのローソン、世界でも大手となるサケマス養殖会社を傘下に擁する。秋田県沖で大規模な洋上風力発電事業にも着手している。2024年度が最終年度となる中期経営計画では、将来の成長の糧となる事業ポートフォリオの構築に邁進中。現在は過渡期にある。

三井物産(8031)
三菱商事と並ぶ総合商社の大手。前期の売上高は13.3兆円、純利益は1兆630億円。金属資源・エネルギー分野に強く、世界最大の鉄鉱石企業、ブラジルのヴァーレ[VALE]に出資。鉄鉱石をはじめ原料炭、銅、合金鉄、ニッケル、アルミ、リチウムなど資源を幅広く取り扱う。石油化学事業ではグリーンアンモニアの取り組みを強化している。アジアではマレーシア、シンガポール、トルコ、インドで病院を経営。

住友商事(8053)
住友系の商社。前期の売上高は6.9兆円、純利益は3860億円。鉄鋼、機械などの重厚長大分野から事業を興し、油井管などの鉄鋼分野に強い。日本製鉄とは密接な関係を維持。ただ資源・エネルギー分野は上位商社に比べてウエートが小さい。2024年5月に発表した中期経営計画2026では、競争優位性を発揮できるNo.1の成長事業を複数育て、そこに経営資源を重点配分する。2027年3月期には純利益で6500億円、ROE12%以上を目指す。

伊藤忠商事(8001)
非財閥の総合商社大手。前期の売上高は14.0兆円、純利益は8000億円。「利は川下にあり」のポリシーに立ち、消費者に近い川下ビジネスで事業を拡大してきた。8つの事業領域を持ち、それぞれの分野で「トレード」と「事業投資」の2つを重視。金属資源の規模が相対的に小さいが、発祥の繊維に力を入れ、有名ブランドを多数保有する。コンビニのファミリーマート、果物のドールの一事業を有する。
