ヘンリー・キッシンジャー、米元国務長官は、今年満100歳を迎えましたが健在で、相変わらず深い洞察をもって外交問題にコメントをしています。彼はドイツでユダヤ系ドイツ人の家庭に生まれて、ヒトラー政権下でドイツを逃れてアメリカに移住したのですが、ドイツ語なまりの英語を話します。一方彼には1歳年下の弟が居て、彼は全くなまりのない英語を喋るそうです。ある時この弟に、何故お兄さんにはドイツ語なまりがあり、あなたにはないのですか?と聞くと、「キッシンジャーの中で私は聞く人であり、兄は話す人だからです」と答えたそうです。中々機知に富んだ、面白い答えですね。

ところで私には良く喋るアメリカ人の知人がいます。彼は休むことなくひっきりなしに喋ります。この週末も一緒にいたのですが、ずぅーっと何時間も、ほぼ一方的に喋り続けていました。彼にこのキッシンジャーの話をすると、彼はニヤッと笑って、「オオキ、俺はさ、小さい頃から耳があまり良くないんだよ。だから聞いてるよりも、話してる方が楽なんだ」と云いました。彼が、片耳にやや問題があるのは事実なのですが、この話は出来すぎている感じもします。

翻って考えるに、私は英語で行われる国際会議などで、しっかりと文脈を理解して発言しようと聞き入り過ぎて、色々気付いたりして話しにくくなることがままあります。意識的に聞く量や精度を半歩程度減らして、もっと話す方にウェイトを置いた方が、少なくとも英語の場合にはいいかなと思った次第です。ステージ的にも多分そうでしょうね。来週はニューヨーク出張なので、ちょっと意識を変えたいと思います!