モトリーフール米国本社、2023年11月14日 投稿記事より
主なポイント
・インフレ率は低下し続けており、10月の消費者物価指数(CPI)は前月比横ばい
・株式市場と債券市場は将来を楽観視した反応
・米国経済が持ちこたえれば、新たな強気相場の到来は近いかもしれない
FRBの金融政策によって、2022年米国のグロース株は急落
米国の投資家はここ数年、それまで何十年にもわたって無視してきたマクロ経済要因、すなわちインフレへの対処を余儀なくされてきました。
さまざまな世界的問題が重なったことでインフレ率は急上昇し、人々は食料品店や自動車ディーラーなど、ほぼありとあらゆる場所でインフレの影響をはっきりと感じることができました。経済見通しは大きく狂い、米連邦準備制度理事会(FRB)はその対策に、過去30年ほどで最も積極的ともいえる金融引き締めに乗り出しました。グロース株の株価は急落し、2022年の弱気相場に大きく貢献しました。
ウォール街が待ち望んだCPIデータ
11月14日の消費者物価指数(CPI)発表を受けて投資家は、インフレはもはや深刻な脅威ではないという結論に達したと思われます。主要株価指数は14日朝に2%以上上昇し、市場では年末の大幅な株価上昇に向けて準備が整ったとみられます。CPIに関するたったひとつの発表が、いかにして多くの投資家にインフレは収束したと判断させたかを紹介します。
2023年10月のCPIは、驚くほど穏やかな内容でした。季節調整後の総合CPIは、大幅に上昇した9月の前月比0.4%上昇に対し、10月は横ばいでした。前年同月比では3.2%の上昇となり、数年ぶりの低水準でした。インフレがピークとなった2022年には、CPIの上昇率は一時、前年同月比9%を上回るまで上昇しました。
10月のCPIが穏やかになった最大の要因はエネルギーでした。ガソリン価格は前月比で5%下落し、他の品目の上昇を相殺しました。エネルギー全体は前月比2.5%の下落でした。食料品は同0.3%上昇と、小幅の上昇となりました。
多くのエコノミストは、変動の大きい食料品とエネルギーを除いた、いわゆる「コアCPI」に注目します。10月のコアCPIは前月比0.2%上昇となり、さまざまな要因が物価に影響しました。家賃、自動車保険、医療費、娯楽、日用品で価格が上昇した一方で、宿泊費、中古車およびトラック、通信サービス、航空運賃は値下がりし、他の物価上昇を一部相殺しました。これらの結果、コアCPIは前年同月比4.0%の上昇となり、伸び率は2021年9月以来の低水準となりました。
金融市場への影響
金融市場は、今回のインフレデータを好感しました。長期債利回りは急落し、10年物米国債利回りは4.5%を割り込み、普段はそれほど変動しない中期国債の利回りは0.2%ポイントも低下しました。金利と特に密接な関係のある株式は急騰し、上場投資信託(ETF)の不動産セレクト・セクターSPDR[XLRE]は14日正午時点で5~6%上昇しています。
また、金利上昇で打撃を受けていた高成長株は、力強く上昇しました。ナスダック総合指数(時価総額加重)は2%超上昇し、ナスダックの均等加重指数は時価総額加重指数を上回るパフォーマンスとなりました。中でも、不動産や住宅と特に関係の深い銘柄が大幅に上昇し、ジロー [Z]は11%超という急騰を示しています。
弱気相場は終わったのかもしれない
株式市場の強気派は、FRBが利上げサイクルを終了する兆候がもっと多く見られることを望んでいます。10月のCPIデータを受け、FRBはようやく、経済の下支えに焦点を戻すことができるようになるかもしれません。
しかし、FRBが市場にサプライズを与える可能性は、まだゼロではありません。短期財務省証券の利回りは依然として5.25~5.5%の範囲にとどまっており、FRBがすぐに利下げを開始するとはあまり考えられません。現在の高金利が持続し、経済への圧力が高まるようなことになれば、足元の株価上昇は短命に終わる可能性があります。
しかし今のところ、大半の投資家は市場の短期的見通しについて楽観視しているようです。消費者が限られた予算の中でも消費を続け、投資家の楽観的見方が裏付けられれば、多くの市場関係者が長いこと待ち望んできた決定的な強気相場がついに実現するかもしれません。
免責事項と開示事項 記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Dan Caplingerは、記載されているどの企業の株式も保有していません。モトリーフール米国本社はジローの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。