先日或る茶室で見た掛け軸がとても気になりました。「八角磨盤空裏走」ーはっかくのまばん、くうりをはしる。と読みます。禅宗である臨済宗が台頭してきた鎌倉時代、旧仏教の面々がその急成長に危機感を抱き、宮中清涼殿での旧仏教対臨済宗のディベートを要求し、対決が始まりました。時に1325年5月21日。しかしその対決は、あっという間に決着が着いたとのこと。

初回先攻の延暦寺の僧が、「如何なるか是教外別伝の禅」ー教えの外にあるような出自の怪しい禅とは一体何なのだ?ーと聞くと、南禅寺の宗峰妙超なる僧が即答した言葉。「八角磨盤空裏走」ー古代インドで使われた八つの角を持つ石臼のような武器「磨盤」は、空中を飛び回り全てのものを粉砕する、と。知っていること、固定概念に囚われてはいけない。知とは、書物の中の固定された文の中にあるのではない。もっと活発に自由に動き、人智の届かぬ世界の常識を壊していくものだ(それが禅だ)。

中々いい言葉です。書物の中に、閉じこもってはいけないのです。常識なんてぶっ飛ばせ!私やマネックスの生き方に合っている言葉です。実に700年前の言葉が、現代にも生きた意味を持つというのは、或る意味驚きですし、或る意味当たり前かも知れません。昔も今も、人の考えること、人が囚われること、人が過ちを犯すことは、概ね一緒です。

「八角磨盤空裏走」ー過去や固定概念、書物の中に書かれていることに縛られないで、広く柔軟な発想と姿勢で、歩んでいくようにしたいと思います。