今日は私の資本市場との関わりについて書きます。私は生粋の資本市場オタクで、資本市場のほぼあらゆる商品やトレードを組成したり売買したりして来ました。そのようにマーケットの中でプレイするだけでなく、日米の上場企業の取締役などもして来て、資本市場には本当にどっぷりと浸かってきた感があります。身内に金融関係者がいた訳でもなく、たまたまおっちょこちょいな性格でアメリカの投資銀行(ソロモンブラザーズ)に就職してから、仕事をする中で資本市場にのめり込んで行きました。

最初はインサイド・ザ・イールド・ブックという、リボウィッツの書いた債券数理の本を読まされました。債券と金利の話で、要素的には等比数列などの数学です。その後読んだソロモンの教材は、債券のデュレーションやコンベキシティの話などでしたが、これも要素的には等比数列、微分、などの数学でした。英語が出来なくても、これら数学は得意だったので、その結果先輩達と話すことが出来て、それが私のやる気を支え、知的追求心を刺激したのでしょう。そうしてどんどんのめり込んでいきました。

それからデリバティブを学び始め、コックス・ルビンシュタインのオプションズ・マーケッツなども或る程度読みましたが、これは積分の要素が強かったです。あとは統計や確率も重要でした。こうして数学の切り口から私は資本市場のひとつの面に関わっていきました。デリバティブという狭い切り口で、多くの商品や場面に関わるのが最初でしたが、それが英語も苦手な日本人の私にとっては、取っ付きやすくて良かったのでしょう。

そして段々間口が広がっていき、資本構造の一番上にある、債券、特にアメリカ国債から、機関債、社債、証券化債券、そして資本構造の一番下にある破産債権まで、資本構造の上から下まで全てを扱う経験をしました。もちろん株式は、その中間にあります。これら全ての、トレーディングやリスク・テイキングをして、そしてそのために、マーケット全体を毎日見続けることになりました。

私は或る意味マーケットの職人でしたが、トレーディングをするということは、「お金の流れ」を見るということとほぼ同義であり、お金の流れを見ているうちに、そのお金がどのように社会に影響を与えるかを考えるようになりました。お金は社会の、経済の血液だといわれます。お金の動き方を良くすれば、社会は良くなります。

資本市場というレンズを通して見る社会は、例えば週刊誌を通して見る社会とは違うかも知れません。私はこれからも資本市場オタクに徹して、資本市場という切り口から、社会に対して何かしらの貢献をしていきたいと考えています。