日本株市場は今年、先進諸国の中で最良のパフォーマンスを実現しています。東証のPBR改革やウォーレン・バフェットによる日本株への大型投資が注目されていますが、今回の日本株の好調は、もっと大きな構造変化が背景にあると私は考えています。即ち、世代交代が要因ではないかと考えています。世代交代が、企業経営者、官僚組織、メディア、など全てのセクターで起きています。そしてそれが、日本株式市場の変化に繋がっているのではないでしょうか。
私は今59歳ですが、1987年に就職しました。株価的には1989年がバブル期のピークでしたが、社会的・経済的なバブル期のピークは、私が就職したときには既に過ぎており、私の世代とそれより若い世代は、就職以来常に負けていく、ダメな日本を見てきました。私たちの上の世代は、昭和の成功体験がある、もしくは成功体験を垣間見たので、日本がダメになって来て、「変われ!」と海外からプレッシャーを掛けられても、「日本は今までのやり方で大丈夫だ」と考えて、変わらなかった嫌いがあると思います。
しかし私たちの世代は違います。私たちには昭和の成功体験がないので、もっとオープンマインドで、グローバルスタンダードや、グローバルなより良い方法(ベスト・プラクティス)があれば、それを自然に受け入れる気持ちが、構えがあります。この昭和の成功体験がなくてこだわりのない世代が社長や次官などのポストに就き、組織の中の人間も皆同様に変化に対して自然に前向きな人間ばかりになった。このことが、日本企業の、延いては日本社会の変化を起こし始めているのではないかと思うのです。
そして、つい2,3年前までは、そういう世代の上に綿々と繋がる昭和世代がいたので、例えトップを退いても側にいて大きな影響を現役世代にもたらしていたと思うのですが、今回の新型コロナが、全員をリモート勤務に変え、特に先輩の世代が一気に物理的に会社に来なくなり、この2,3年間が、昭和から綿々と続く連関を断ち切ったと思うのです。即ち、新型コロナの存在が、日本に於いては世代交代という巨大で二度と元に戻らない構造変化を演出したのではないかと考えます。
日本は、40年に1回くらいのインターバルで、世界の中で大きなパフォーマンスを実現するように見えます。今がその時ではないかと。そして新型コロナが、その実現の重要な要因ではなかったかと。いずれ歴史が分析するでしょう。私はこの変化の真っ只中で、それを様々な形、立場で、楽しみたいと思います。