自社商品や自社優待券がもらえる優待銘柄を中心に100銘柄を長期保有し、株主優待生活を楽しんでいる仔馬さん。東日本大震災の影響で人生のどん底を経験し、優待株や高配当株を中心に安定性を重視したポートフォリオを組むようになったと話します。仔馬さんに、優待銘柄の選び方や最近の新設・拡充銘柄で注目しているもの、2023年後半(7月~12月権利確定)の推し銘柄10選などをお聞きしました。
●仔馬の優待生活さんプロフィール●
株主優待生活を目指す仔馬(兼業投資家)。自社商品や自社優待券がもらえる優待銘柄を中心に100銘柄を長期保有。株主優待券で外食代を節約しながらイオンの優待でお得に映画鑑賞するのが楽しみです。2018年からは不動産投資、ふるさと納税、端株投資も始め、1,450銘柄程保有。Twitterで株主優待の魅力や情報を発信中。
被災の経験を経て、優待株・高配当株の魅力に目覚める
――仔馬さんが株式投資を始めたきっかけを教えてください。
書店で桐谷広人さんの書籍を目にして読んだことをきっかけに、2010年から株式投資を始めました。当時は投資に関する情報が今のように多くなかったので、トヨタ自動車(7203)や京セラ(6971)など大型の有名な企業を選んで投資していました。
――どのような経緯から優待銘柄に投資されるようになったのでしょうか。
投資を始めた翌年に東日本大震災が発生し、株価が大暴落。私のポートフォリオの中心を占めていた製造業の銘柄は、震災後のサプライチェーン問題や電力不足の長期化により大きく株価が下がり、資産も激減しました。元手30万円から始めたものの、20万円も減ってしまう事態となり10万円ほどに…。すぐに損失を取り戻そうと、株価の水準が低い低位株に投機的な投資をしていました。
当時、宮城県に住んでいましたが、福島原発事故を受けて家族で福井県に移住。就職活動中だった私は震災の影響で内定が取り消され、精神的に不安定な日々を過ごしていました。今、振り返るとあの頃が人生のどん底でしたね。
その後、被災者の雇用を助成する国の特例措置により、愛知県にある企業に就職できて救われました。しかし、家族は長期間にわたる避難生活で精神的に参っていましたので、私が社会人1年目という状況ながらも経済的な支援を行っていました。
そういった状況から、安定配当を行っている銘柄で着実に利益を積み上げていきたいと思い、投資方針を大きく変更。2011年後半からは優待株や高配当株を中心に安定性を重視してポートフォリオを組むようになりました。
――最初に購入した株主優待銘柄を教えてください。
最初に株主優待銘柄として購入したのはイオン(8267)です。全国で事業を展開している上に優待の内容が非常に魅力的に感じたからです。
優待内容は、イオングループ内での買い物が保有株式数に応じてキャッシュバックされます。イオンシネマでの映画鑑賞はいつでも1,000円とお得な上に、鑑賞時に毎回ドリンクまたはポップコーン引換券のどちらか1枚がもらえます。さらに、今年6月には新型コロナウイルス感染症対策として閉鎖していたラウンジが再開されるなど、優待内容が充実しているので、購入してからずっと保有しています。
自分のライフスタイルに合った株主優待で楽しくお得に生活
――株主優待の銘柄選びのポイントを教えてください。
優待銘柄を買う際は、値上がり益を狙うのではなく、自分のライフスタイルに合った株主優待で楽しく、そしてお得に生活することを大事にしています。
ただ、それだけでは優待廃止・改悪リスクに対抗できません。基本的には中長期目線で、
●PBR0.6~1倍、PER10~15倍を基準に、株主還元に対し高い意識をもった企業であること
●過去数年間の株主数の推移
を確認した上で銘柄を選定しています。
配当利回りが高めのディフェンシブ銘柄を中心にポートフォリオを組んで運用することで、株価の伸び自体は緩やかでも堅実に資産を増やしていけると考えています。金券やカタログギフトを優待として実施する企業がありますが、そういった企業は、株主が増え過ぎると負担が増すため、優待廃止リスクも必然的に高まると分析しています。そのため、自社の事業と関連性の弱い優待を実施する企業ではなく、自社の商品・サービスで使える優待品を提供している銘柄に投資するよう心がけています。
――優待銘柄の売却の基準は何ですか。
株主優待の改悪、廃止も売却の基準の1つとして考えますが、日本たばこ:JT(2914)やオリックス(8591)のように株主優待の廃止が決定しているものの、株主還元策や事業の成長性を見込み、継続保有する場合も例外的にあります。
ただ、中長期的に事業の成長性が見込めない場合や、配当金の減配が継続すると考えられる場合、無配転落、過去数年間における株主数の増減とその傾向、東証の上場維持基準に抵触していて目標達成が難しい場合などは売却を検討します。
――株主優待でメインに投資している業界を教えてください。
優待が使いやすいという観点で、飲食業への投資金額が多い状況です。その他の業種では陸運業の近鉄グループホールディングス(9041)、三重交通グループホールディングス(3232)、九州旅客鉄道(9142)、西武ホールディングス(9024)、西日本鉄道(9031)、第一交通産業(9035)、小売業ではイオン(8267)、アルビス(7475)、ユナイテッド・スーパー・ホールディングス(3222)、エコス(7520)、やまや(9994)など、食料品や化学業界ではダイショー(2816)、理研ビタミン(4526)、ハウス食品グループ本社(2810)、ポーラ・オルビスホールディングス(4927)などが挙げられます。
コロナ禍の影響で、飲食業界が打撃を受けている時は小売業界や製造業への投資を手厚くしていました。最近はコロナも収束に向かい飲食業界の需要が見込めるので、飲食業界への投資を増やしていこうと考えています。
――保有されている銘柄が多いと、優待品が自宅にたまることはないですか。
はい。送付されてくる優待品で冷凍庫や備蓄庫がパンパンになることがあるので、送付先が指定できるものは実家を指定しつつ、お米など保存がきく食品を選ぶように工夫していますね。また、ふるさと納税も活用しているので、ふるさと納税の返礼品は優待品の閑散期に到着するように調整しています。
6月は株主総会招集通知など郵便物がたくさん届く時期で、1日に300通ほど届くことも…。ポストに入りきらないので、郵便配達員さんから直接受け取ることもあります。
――仔馬さんがお気に入りの優待品、もらって特に嬉しかった優待品を教えていただけますか。
タマホーム(1419)とブルドックソース(2804)の優待品が嬉しかったです。
タマホームの株主優待では、同社のCMや広告に起用された有名人が券面になったQUOカードが届くので楽しみにしています。同社は創業25周年を迎え、最近は株主還元にも積極的で連続増配中です。株式を取得した当時は株価が527円でしたが、現在(6月末時点)は3,300円台で推移しています。
ブルドックソースは、2021年に東証一部指定記念優待を実施しました。通常の優待品の他にインパクトのある珍しい内容のバラエティセットが届き、非常に豪華でしたね。
――コロナ禍を経て、株主優待を取り巻く環境はどのように変化していると感じていますか。
コロナ禍では業績悪化に伴い株主優待の改悪や廃止、配当金の減配や無配転落など、多くの企業で発生しました。一方で、東証の市場再編に関連し、上場維持基準クリアに向けた優待の新設や拡充も見られ、株主優待を取り巻く環境はここ数年で激変したと思います。
しかし、そんな厳しい状況下でも飲食業を中心に優待品の提供を継続してきた企業も多いです。経済の正常化に向け動き出したばかりですが、最近は訪日外国人を街中で見かける機会も増えてきましたので、飲食業も回復するのではないでしょうか。
優待拡充で注目の銘柄
――最近の新設・拡充銘柄で、注目の優待銘柄はありますか。
1つは、物語コーポレーション(3097)です。今年2月に1対3の株式分割を実施しましたが、株主優待の進呈基準は据え置きとなりました。「丸源ラーメン」や「焼肉きんぐ」など外食産業で圧倒的なブランド力の確立している企業で、長らく値上げをせずに企業努力で乗り切っていましたが、3月下旬に値上げに踏み切るなど成長に向けた積極的な姿勢により分割後の株価も堅調に推移しています。商圏に応じた出店と複数の業態での攻めの姿勢で、今後の成長にも期待できると考えています。
もう1つ、西日本鉄道(9031)が挙げられます。九州地盤の電鉄大手ですが、台湾積体電路製造[TSM]の熊本進出を機に九州内での集積が進む半導体産業をターゲットとして昨秋には福岡県内にロジスティクスセンターを開設するなど、半導体関連物資の輸送需要に向けた明るい材料もあります。
現行の優待制度では600株以上の保有で、株主優待乗車券がもらえるという内容でしたが、5月に発表され、今後適用される新制度では100株以上から電車・バス乗車券がもらえるなど内容が拡充され、商業施設、ホテル、タクシー等で利用できる商品券も追加されるなどグループ会社をよく利用される方には利便性が高いと思います。私自身、仕事の関係で九州に住んでいることもあり、注目しています。
1,450銘柄の管理・銘柄発掘のヒント
――現在、1,450銘柄保有されているそうですが、どのように管理されていますか。
基本的には、パソコン上で一覧化し、銘柄ごとに配当利回り、優待利回り、総利回り、貸株料から、株式指標(PBR、PER、ROE、ROA等)を自動計算できるようエクセルで数式を組み、管理しています。各月の配当入金件数や郵送物の到着予測も数値化しています。
複数の証券会社で口座を持っているので、端株投資の1,350銘柄と長期保有の100銘柄は口座を分けています。
――株式優待の情報は何からチェックされていますか。
四季報やダイヤモンドZai、日経マネーなどのマネー雑誌を定期的にチェックしています。その他、Twitter等で知り合った個人投資家の方々と交流するオフ会を開催して、株主優待の情報も共有しています。
――注目されていない銘柄は、どうやって探されるのでしょうか。
例えば、テレビ東京の「ガイアの夜明け」や「カンブリア宮殿」は、業界の最新情報を伝え、現場で奮闘する人を追うドキュメンタリー番組として有名ですが、コロナ禍の裏側で成長する企業として取り上げられていたテンポスホールディングス(2751)やマミーマート(9823)はこれらの番組を観たことをきっかけに購入しました。
テンポスホールディングスは、中古厨房機器の再生販売をするニッチ企業ですが、「ステーキあさくま」を連結子会社として抱える優待株です。マミーマートも埼玉を地盤とするローカル中堅スーパーとして出発していますが、「生鮮市場トップ」を積極的に展開し、惣菜に対するこだわりやお客目線での商品作り、独創的な発想により、メディアで注目を浴びる機会も増えています。
このようにメディアで見かけたことをきっかけに投資する場合もありますが、最終的には市場の優位性、決算内容、財務状況、優待の継続性も含め総合的に判断するようにしています。
>> >>【後編】仔馬の優待生活さんの「2023年後半(7月~12月権利確定)の推し銘柄10選」
※本インタビューは2023年6月9日に実施しました。
※本内容は、個人の経験に基づく見解であり、当社の意見を表明するものではありません。
※投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようにお願いいたします。