株主優待の将来の見通し

――東証の市場改革で株主優待が見直される例もありますが、株主優待の将来性についてどのようにお考えでしょうか。

自社の事業と関わりのあるものを株主優待として実施する企業は一定数残ると考えています。自社の事業との関係性の薄い優待については、新規上場企業や東証の上場維持基準に抵触する企業が一定数実施するだけにとどまり、議決権行使やアンケート回答等による謝礼としての意味合いの配布はあるとしても、公平な利益還元という観点から配当金による直接的な利益還元に大きくシフトしていくだろうと考えています。

そういった流れの変化を受け、最近は優待だけでなく配当金にも注目しながら銘柄を選定しています。

優待廃止・改悪リスクに備えるポイント

――優待銘柄で失敗した経験はありますか。

優待銘柄で大きな失敗はありません。以前、THEグローバル社(3271)が比較的高額なQUOカードを株主優待として提供しており、優待目的で株式を保有している個人投資家も多かったのですが、優待が廃止されて株価も大幅に下がりました。

サムティ(3244)やリソルホールディングス(5261)のように自社関連ホテルの無料宿泊券や優待券を配布する銘柄は例外ですが、不動産関連株は一般的に、QUOカードやカタログギフトなどといった魅力的な商品がもらえる一方、改悪・廃止リスクが比較的高い業種だと考えており、一定の注意を払うようにしています。

――優待廃止・改悪リスクにはどのように備えていますか。

改悪・廃止がされやすい株主優待として、金券・カタログギフト・ポイント倶楽部等が挙げられます。これらに共通しているのは、自社の事業と関わりのないものであることです。

これを念頭に、中長期的に事業の成長性が見込めないもの、配当金の減配が継続すると考えられる場合や無配転落の可能性があるもの、特に企業規模に対し単元株主数が増え過ぎている場合は要注意で、東証の上場維持基準に抵触し目標達成が難しいものに気をつけています。

仔馬の優待生活さん「2023年後半(7月~12月権利確定)の推し銘柄10選」

推し銘柄1:吉野家ホールディングス(9861)

 

おすすめポイント:牛丼チェーン老舗で「吉野家」を主力に「はなまるうどん」などを展開し、100株以上で年間4,000円分の食事優待券がもらえます。店舗数が多いため使い勝手が良く、LINEクーポン等の割引券との併用も可能です。Tポイントなど各社キャンペーンを上手に組み合わせることで、ポイ活もしながら更に、お得に食事ができるのもいいですね。

保有期間と今後の保有予定:2013年から保有。買い増したい気持ちがあるものの、為替相場の変動や原材料高騰の影響で業績が読みにくいので現状維持で、追加投資は要検討。

推し銘柄2:ビックカメラ(3048)

 

おすすめポイント:家電量販店として有名ですが、電化製品はもちろん、最近は食品や日用品、酒類を取り扱う店舗も増えてきています。100株以上の保有で年間最大5,000円分の買物優待券がもらえます。優待券は、ヤマダホールディングスや上新電機のような利用条件がないため、使い勝手がいいと思います。

保有期間と今後の保有予定:2014年から保有。現行株価に対し利回りが良すぎるのが少し気になるところですが、都心部のビックカメラを中心に免税売上の回復が顕著になっているので、グループ再編に期待しつつ、保有を維持する予定。

推し銘柄3:トーセイ(8923)

 

おすすめポイント:首都圏を中心に不動産の再生・開発を手掛けている企業です。業績は過去最高を記録するなど好調で、連続増配を継続中。株主優待は自社ホテルの宿泊割引券に加え、保有年数に応じて最大3,000円相当のQUOカードがもらえるのもいいですね。

保有期間と今後の保有予定:2019年から保有。株主優待で宿泊割引券の他に、QUOカードを提供している不動産企業ですが、1年以上の継続保有者を対象としているので、優待廃止リスクは低いと判断し、保有を継続する予定。

推し銘柄4:西松屋チェーン(7545)

 

おすすめポイント:少子化が進むなかでも、売上高・経常利益ともに高進捗を維持し、不採算店舗再編により収益を改善し、品揃えを拡充し、自社運営の公式オンラインストアを強化するなど安定的に経営している点がいいですね。保有株式数に優待額が変わりますが、100株以上で、買物カード1,000円分、3年以上継続保有で、期末のみ500円分が追加されます。

保有期間と今後の保有予定:2016年から保有。増配に期待しつつ、今後も保有を継続する予定。

推し銘柄5:第一興商(7458)

 

おすすめポイント:コロナ禍でカラオケ事業は大きな打撃を受けていましたが、200株以上で、優待券5,000円分を年2回もらえます。優待券は「ビックエコー」や「カラオケマック」の他に、「楽蔵」や「ウメ子の家」などの飲食店でも使用することができます。

保有期間と今後の保有予定:コロナ禍で業績が悪化し、株価が低迷していましたが、配当を維持するなど、株主還元に前向きであったので、2020年に新規取得。経済活動の再開で株価が上昇し、4月には株式分割を実施。今後は訪日客の増加も見込まれることから増配にも期待しつつ、保有を継続予定。

その他の推し銘柄5銘柄

銘柄

推しどころ

保有期間と今後の保有予定

 トリドール

(3397)

低価格うどん「丸亀製麵」を全国展開。原材料高騰の影響を受けるも値上げでカバー。新商品の「丸亀シェイクうどん」は手軽に楽しめる新体験としてメディアで取り上げられるなど話題にもなりました。優待は100株以上で、食事優待券3,000円分が年2回もらえます。一番利回りが良いのは200株以上で、食事優待券4,000円分、更に1年以上継続保有で3,000円分追加され、7,000円分の食事優待券が年2回もらえます。

2017年に新規取得。株主優待の拡充など株主還元に積極的で、優待券が使用できる店舗も多いので継続保有の方針です。

クリエイト・レストランツ・ホールディングス(3387)

海鮮居酒屋「磯丸水産」や鶏料理「鳥良」など中心にチェーン展開。今年から新たにベーカリー「サンジェルマン」が加わり、日本全国に230以上のブランドを展開し、店舗数も940店を超えるなど、立地ごとの店舗開発が得意の企業。株主優待は、保有株式数によって異なりますが、100株以上で、食事券2,000円分が年2回もらえます。

2017年から保有。全国展開しているためグループ店舗が多く、使い勝手がよいので継続保有の方針です。

やまや(9994)

100株以上で、「やまや」店舗で使用できる買物優待券3,000円分が年2回もらえます。酒類以外にも食料品の品揃えがよいので、パスタや缶詰など保存がきくものを中心に購入しています。優待券使用時でもdポイントが貯められるので、ポイ活にもおすすめです。

2016年から保有しています。今後も継続保有の方針です。

イオン(8267)

保有株数に応じて、買い物金額から返金されるオーナーズカードは、イオンシネマで提示することで、映画鑑賞がいつでも1,000円で、ソフトドリンクまたはポップコーン引換券が毎回もらえます。他にも割引特典があるため、イオングループを利用する機会が多い方におすすめです。

2012年から保有しているお気に入り銘柄の1つです。今後も継続保有の方針です。

タマホーム

(1419)

低価格が強みの注文住宅メーカーですが、住宅事業の価格転嫁が他セクションをカバーするなど、原材料高騰で着工件数が減少するなかでも、過去最高の業績を記録し現在7期連続増配中。優待は毎回絵柄の変わる人気のオリジナルQUOカードで、継続保有により最大1,000円相当のQUOカードが年2回もらえます。 

5年以上は保有していると思います。過去に長期優待の廃止発表直後に株価が急落し、すぐに廃止を撤回するなど株価を意識した対応が見られました。業績好調もあり改悪リスクは低いと判断し保有を継続。

目先の含み損を気にせず着実に積み上げる「ほったらかし戦法」

――日本株以外への興味はいかがでしょうか。

2、3年前に米国株投資を始め、日本株と米国株の二刀流で投資していました。ただ、最近は米ドル円相場の変動により以前より積極的な売買や新たな投資先の選定は行っておらず、以前に投資した銘柄保有を継続しています。

――米国株がポートフォリオに占める割合はどれぐらいですか。

米国株はポートフォリオの2~3割程度を占めている状況です。配当利回りの高いエネルギー関連や製造業などを中心に40銘柄ほど保有しています。

――今後の資産額など目標とされていることがあれば教えてください。

私の投資方針は、定期的にポートフォリオを見直しつつも、目先の含み損は気にせずに着実に積み上げていく「ほったらかし戦法」です。この手法を継続しながら、年間配当100万円を1つの目標として設定しています。最近、配当額が増えてきているので、あと2、3年で達成できるのではないかと思います。

――これから投資を始めたい人へアドバイスをいただけますか。

物価高の影響もあり家計が苦しい方が多いと思います。このような状況下で、1銘柄に5万円を投資するのは勇気がいることでしょう。また、なかなか投資に興味があっても一歩を踏み出せない方もいらっしゃるでしょう。一方で、最近では単元未満株で積立投資をしたり、ポイントを活用して投資したりすることも可能です。貯めたポイントを等価交換により現金化し、その資金を活用した投資であれば、比較的低リスクで始めることができると思います。

優待投資は、投資スタイルの1つとして人気があり、「優待生活を一度味わってみたい」と考えている方もいるようです。比較的少額で始められる優待株として、例えばベルメゾンで有名な千趣会(8165)、丸善ジュンク堂書店を運営する丸善CHIホールディングス(3159)、コンタクトレンズメーカー大手のシード(7743)などが挙げられます。洋服や雑貨、書籍、日用品など、ご自身の生活スタイルや日常的に馴染みのある商品を扱っている銘柄から投資を始めてみるのも面白いでしょう。

優待を廃止しても配当金として株主還元を継続する企業もあります。ですから、優待が廃止されてもすぐに売却するのではなく、業績や株主還元を注意深く考察し、「優待がなくても保有したい」と思える銘柄を選定してみるとよいと思います。

――本日は、お時間をいただき、ありがとうございました。

>> >>【前編】優待株と高配当株の二刀流で優待生活を満喫!

※本インタビューは2023年6月9日に実施しました。
※本内容は、個人の経験に基づく見解であり、当社の意見を表明するものではありません。
※投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようにお願いいたします。