毎週月曜21時から開催している「広木隆のMonday Night Live」でいただいたご質問のうち、セミナー内で回答しきれなかったご質問に広木隆が回答いたします。回答対象とするご質問は、サイトへの掲載を考慮して選択採用とさせていただきます点についてご了承くださいますようお願いいたします。

Q.日経平均が4万円に達するとき、金融緩和はどうなっている?

こむき様からのご質問

日経平均株価が4万円に行くという見立ては、そのとき今の金融緩和が継続されているのかも合わせて見通しを教えて頂きたい。

日本のインフレも無視できない環境になっていて、これまで好業績を支えてきたゼロ金利(金融緩和継続)は無理だとおもうので。

回答

日銀の植田和男総裁は先月末に開催された金融政策決定会合後の記者会見で、金融引き締めが遅れて2%を超えるインフレ率が持続するリスクより、拙速な引き締めで2%の物価安定目標を実現できなくなるリスクの方が大きいと指摘し、粘り強く金融緩和を継続していく考えを示しました。

植田総裁は、インフレ率が今年度後半に2%を下回る水準まで低下するのはある程度の確度をもって予想されるものの、そこから反転して再び上昇していくにはさまざまな前提条件が満たされる必要があるとも指摘しました。

こうしたインフレに対する日銀の見通しやレビューの期間を考えても、向こう1年から1年半で政策変更があるとは思えません。一方、YCC(イールドカーブ・コントロール)の修正やマイナス金利の解除は「金融引き締めではなく、市場の副作用緩和の正常化措置」というスタンスで実施するのでしょう。結論を述べると、日銀の金融緩和は1年~1年半は維持され、その期間内に日経平均は4万円に達すると予想しています。

Q.これから投資する場合、日経平均銘柄に投資した方がいいか、出遅れ感のあるマザーズ銘柄に投資すべきか、教えてください。

気まぐれ投資家様からのご質問

日経平均が順調な一方でマザーズ指数はさえません。どうしてこのような違いが生じているのでしょうか?

また、これから投資する場合、日経平均銘柄に投資した方がいいか、出遅れ感のあるマザーズ銘柄に投資すべきか、教えてください。

株小僧様からのご質問

今上がっている、半導体株やインバウンド株を利確して、下がっているマザーズ株や小型株に変えるのはどう思いますか。

回答

日経平均が順調な一方でマザーズ指数が冴えない理由は、この相場のけん引役が外国人投資家だからです。東京証券取引所が5月25日に発表した5月第3週(15〜19日)の投資部門別売買動向によると、海外投資家の買い越しは8週連続となりました。

8週連続の買い越しは2017年6月以来約6年ぶり。この8週間の買越総額は3兆6000億円と、2013年12月以来の規模となりました。これだけの規模の買いの受け皿となれるのは主力・大型株です。新興市場は流動性の問題から外国人の買いの対象になりにくいのです。半導体株やインバウンド株は今回の相場の柱です。

25日のアドバンテストのような急伸があれば利益確定が妥当だと思われますが、これらのセクターはいったん手放しても、押したところでまた買い直すスタンスで臨まれるのがよいと思います。

Q.日経平均、そろそろ調整は入ると思いますか?

のみや様からのご質問

日経平均やトピックスの下値めどをご教示頂けますとありがたいです。水準が明らかに変わっていますが、買っているのが短期筋なのか、中長期なのかよく分からず戸惑っています。

ゆずぽん様からのご質問

日経平均、そろそろ調整は入ると思いますか?入るとしたら、下落幅はどの程度予想されますか?

マネックスファンクラブ会員NO1様からのご質問

日経平均は調整入りするとすればどんなことがシグナルになりますか。

回答

日経平均が3万円を割れたところで買いたい向きは多いでしょう。今から3万円割れまで調整する頃には日経平均の25日移動平均がその水準まで上昇してくると思われますので、下値目途は3万円を若干割り込む水準と考えます。

Q.海外勢の資金の引き上げにより株価下落リスクはどのくらいあるでしょうか?

nm-free7様からのご質問

日本株の上昇には、外国人の買い越しが大きく影響しているとのこと。では、逆にこれまで放置されていたのはなぜでしょうか。

放置されていた理由が解消されなければ、今後日本株の勢いが落ちることにもなると思いますが、いかがでしょうか。

steel様からのご質問

海外勢の資金の引き上げにより株価下落リスクはどのくらいあるでしょうか?

回答

Good question ですね。重要な視点です。これまで放置されていたのは、投資対象としての魅力が乏しかったから、というのが一般的な答えですが必ずしもそればかりではなく、事情はもっと複雑だと考えています。まず「日本」という国の立ち位置がアジアの中で中国の存在感が増す一方で相対的に低下していきました。

失われた20年、30年と言われるように経済の停滞が続き、日本から世界にアピールできるような産業も技術も生まれない。少子高齢化で人口が減り、労働力が減るにもかかわらず生産性が一向に高まらない。物価も賃金も上がらず、真のデフレ脱却には程遠い、そんな日本のイメージだけが伝えられて、外国人に振り向いてもらえなかったというのが実態ではないでしょうか。

しかし、実際にはみなさんもご存じの通り、過去10年、アベノミクスの過程で日本企業や日本の株式市場はだいぶ変わりました。コーポレートガバナンスの概念の普及、株主還元の姿勢、資本コストやROE(自己資本利益率)を意識した経営、株主・投資家との対話など10年前とは様変わりです。それにやっと外国人が気づき始めたということでしょう。

ここから日本市場と日本企業の変貌の「兆し」を「現実」のものにしていくことがなにより重要で、それがなければご指摘の通り、相場の勢いは持続力を失うでしょう。ちなみに25日付日経新聞「スクランブル」で藤田和明編集委員が『株高は海外勢の「買い忘れ」』という興味深い論説を書いておられるので、ご一読をお勧めします。

Q.日本株価の今後の後退の有無を含めた見通しについてご教授願います。

いずおのジョン様からのご質問

米国の景気後退が現実を帯びてきました。また、米中対立もあり、現在好調な日本株価ですが、今後の後退の有無を含めた見通しについてご教授願います。

回答

「米国の景気後退が現実(味)を帯びてきました」とお書きになっています。お言葉を返すようですが、どこかにその明らかな証左はありますか?あるのは、「兆候」だけです。

代表例では債券市場の逆イールド、それをもとに算出するNY連銀の景気後退確率、カンファレンスボートの景気先行指数、銀行の融資姿勢の厳格化、などです。過去はこれらが景気後退のシグナルとして機能してきました。

しかし、米国経済の現状には、景気後退に陥る弱さは感じられないというのが実際のところです。S&Pグローバルが21日に発表した4月の米総合購買担当者景気指数(PMI)速報値は53.5と2022年5月以来11ヶ月ぶりの高水準となりました。

失業率は3.4%と半世紀ぶりの低さです。景気後退に陥るほど急速なブレーキがかかるとは、到底思えないのです。今の米国経済を読みづらくしているのは、なんと言ってもコロナ・パンデミックの後遺症が特殊要因として働いているからです。その意味ではThis Time Is Different なのかもしれません。

 


このコーナーでは、毎週月曜夜21時から開催している「広木隆のMonday Night Live」でいただいたご質問のうち、セミナー内で回答しきれなかったご質問にチーフ・ストラテジストの広木隆が回答いたします。

今回は2023年5月22日のセミナーで寄せられたご質問から抜粋して回答しています。

回答対象とするご質問は、サイトへの掲載を考慮して選択採用とさせていただきます点についてご了承くださいますようお願いいたします。

 

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