前回のコラム「シニアになったらお金の「守り方」だけではなく「使い方」も考える」は、おかげさまでマネクリの月間アクセスランキング第1位になりました。たくさんの方にお読みいただき、本当にありがとうございます。
自分のお金を生きているうちに有効に使いたいと考えている人が想像以上に多いことに驚きました。
お金の使い方を考える前にやるべきことがある
確かに、自分のお金をこれからどう活用するかを考えることはとても有益です。しかし一方で、自分の人生がいつ終わるかを知ることができないのも事実です。
そう考えると、これからの使い方を考える前に、最悪の事態への備えも進めておくのが合理的です。たとえ明日自分の身にもしものことがあっても、残された人を経済的なトラブルに巻き込まず、無用の迷惑をかけないための準備です。
自分の財産を「見える化」する
まずやるべきは、資産の全体像を把握できるような資産リストを作っておくことです。
財産の洗い出しと評価について、金融資産は比較的簡単です。しかし不動産などの実物資産の評価は難しく、宝石類や貴金属などは、どこまで具体的に記載するかを判断しなければなりません。
金融資産であれば口座を保有している金融機関名、不動産であれば権利書の保管場所と管理会社の連絡先は最低限必要です。事業投資等の案件であれば、どのようなプロジェクトにいくら投資しているかと担当者がわかるようにしておくと良いでしょう。法人を所有している場合は、会社の企業価値算定も必要になります。
管理が難しい資産も存在する(海外不動産、暗号資産など)
管理に手間がかかる資産を保有している場合は、さらに入念な準備が必要になります。
例えば、海外不動産を個人名義で保有していると相続時の手続きが面倒になります。所有しているそれぞれの国のルールに基づいて相続手続きをして、不動産の名義変更をしなければならないからです。
相続人であることを証明する方法は国によって異なり、現地での納税が必要になるケースも出てきます。個人名義で海外不動産を所有している場合、購入する前に、相続について投資先の国のルールを確認しておいた方が良いでしょう。これは販売をしている不動産会社に問い合わせれば回答してもらえます。具体的な手続きは海外税制に詳しい税理士などに依頼することになります。
さらに暗号資産は、保管してある場所へのアクセス方法がきちんと引き継がれていなければ、最悪の場合アクセスができなくなってしまいます。
そもそも、保有していること自体を相続人が知らなければ、資産の存在すら気づかれないままになってしまいます。しっかりと情報管理して資産が無駄にならないようにしておくべきです。
公正証書の作成を始めておく
相続が発生したときに残された親族が揉めないためには、生前に財産の分け方に関する効力のある書類(公正証書など)を作成し、保管しておく必要があります。
公正証書作成に際しては、法定相続人の確定、保有している資産の洗い出しと評価額の算出、そして、財産分与の具体的な比率を決定する必要があります。
法定相続人の確定に関しては戸籍を取得しなければなりませんが、引っ越しが多い人などは手続きに手間と時間がかかります。
公正証書の作成は、弁護士に依頼することになりますが、資産金額によってその費用は変わってきます。また一度作成すると修正できず、いったん取り消して再作成するという面倒な手続きが必要になるようです。
また、法定相続とは異なる比率で相続を行おうとすると、後からトラブルが発生する可能性もあり、弁護士とその対応についても打ち合わせしておく必要があります。
大切なのは、自分がいなくなった時でも自分が持っている資産全体を相続人に正しく伝えられるようにしておくことです。
生前財産管理サービスを利用する手もある
相続に関しては、信頼できる弁護士に財産状況を把握してもらい、相続時にスムーズに手続きできるよう支援してもらう、生前財産管理サービスを利用する方法もあります。
守秘義務をしっかり守る弁護士であれば、暗証番号やアクセス方法などもあらかじめ知らせておくことができます。
資産管理の準備は今から始める
まず財産の見える化をしっかりと行い、その上で遺言書の作成や相続税対策などを考え、相続人にいつでも正確に状況を伝えられる体制を構築することが、資産管理の正しい順番です。
今回のテーマはシニアだけに関係するものではありません。自分の人生の終わりがいつ来るかは誰にもわからないからです。若くても不慮の事故や病気などで人生を終えてしまう可能性はゼロではありません。また相続にならなくても、認知症などによって判断能力が衰えてしまうリスクもあります。
ある程度の資産を保有している人は、自らに降りかかる突然の不測の事態によるリスクを避けるために、年齢にかかわらず今のうちから資産に対する準備をしておくべきです。
