2025年度の物件売却額は初めて7,000億円台へ

J-REIT価格は地政学リスクの拡大によって、リスクオフの動きの影響を受けた。東証REIT指数は3月2日には2,000ポイント台であったが、年度末となる3月31日には1,850ポイント割れまで下落した。

2025年度は1,700ポイント台を割り込む水準でスタートしたため、結果的に年度ベースでは価格が上昇した。しかし、国内金利が上昇する中でもJ-REIT価格が上昇(利回りは低下)した要因として、好調な賃貸市場に加え、物件売却益の計上で増配基調であったことも影響していたと考えられる。

含み益を実現益化して投資家に還元する物件売却は、2025年度に初めて7,000億円台を超えた。2023年度から売却額が加速している理由としては、J-REIT価格が2023年度から2024年度に掛けて概ね1,800ポイント台を割り込む水準で推移していたことが影響していると考えられる(図表1)。

【図表1】年度別売却額の推移(単位:億円)
出所:各銘柄公表資料を基にアイビー総研(株)作成

売却益による増配が期待できる用途

J-REIT価格は、2026年度に入った4月になってやや回復し1,900ポイント台を挟む展開となっている。一方で中東を含む地政学リスクは今後も再燃する可能性が高く、J-REIT市場を含め投資市場からのリスクオフの動きが続くことになりそうだ。

したがってJ-REIT市場への投資判断を行う上では、売却益の計上も含めた増配基調を維持できる用途や銘柄を選別する必要がありそうだ。価格の騰落は大きくなる中で、投資を維持するには、増配という「安心材料」が必要だと考えられるためだ。

賃貸市場は好調であるが、収益拡大までは時間が必要となる。例えばオフィスのように2年契約が基本となっている場合は、単純化するとテナントとの更新は各決算期に4分の1が該当することになる。つまり、全テナントとの更新による賃料増額が収益に寄与するためには2年以上の時間が必要だ。

そのため、収益寄与が明確になるまでは、物件売却による分配金の押し上げが必要な状況が続いている。この点を考慮すると特に物流系や住宅系銘柄は、物件売却による増配が期待できる用途と考えられる。

住宅系や物流系銘柄は賃貸市場が好調ではあるが、物流系の場合は賃貸契約期間が長い点、住宅の場合は更新時の賃料上昇率が低い点が影響し、収益拡大には他用途と比較して時間を要する。さらに、国内長期金利の大幅上昇による支払利息の増加が影響し、賃貸収益の増加だけではカバー出来ない可能性も高くなっている。

図表2の通り、2025年に住宅と物流の売却は大幅に増加した。物件売却が増配基調を維持するためには重要な用途となっているため、物流系と住宅系銘柄は今後も高水準の売却益計上が期待できると考えられる。

【図表2】住宅・物流施設の年度別売却額の推移(単位:億円)
出所:各銘柄公表資料を基にアイビー総研(株)作成