AI銘柄の大幅な株価調整は、未来に対する回復の前兆か
ここ数週間、株式市場全体にとって厳しい状況が続いており、人工知能(AI)関連の多くの銘柄にとっては、厳しい期間でした。例えば、マイクロソフト[MSFT]の株価は2025年のピークから20%強下落し、半導体大手ブロードコム[AVGO]も10%強下げています。法人向けソフトウエア大手のオラクル[ORCL]に至っては、AIインフラ投資拡大が本当に成果につながるのかという懸念から、株価は半分に落ち込んでいます。
こうなった理由は、端的に言えば、投資家はAIのコストと価値について、現実を突きつけられたからでしょう。現時点では、期待されていたほどの成果を上げていません。そのため、主要なAI関連銘柄の株価はこの現実を反映して再評価されているのです。
しかし、AI関連銘柄に見切りをつけるのは時期尚早と考えられます。むしろ、この停滞を長期的な買いの好機と見たほうがよいでしょう。なぜなら、今回の逆風は、多くの投資家が何度も経験してきた心理的サイクルの予測可能な一局面と判断されるからです。
ガートナーが体系化するハイプ・サイクル5つの局面
テクノロジー市場の調査・コンサルティング会社であるガートナーは、広く「ガートナー・ハイプ・サイクル」として知られる概念を認識し体系化しています。ガートナー・サイクルは、新しいテクノロジーによって当該企業が(株価とともに)たどる5つの局面で構成されています。始まりから終わりまでの5つの局面は次の通りです。
【1】イノベーションがトリガーになる:新たなテクノロジーが開発され、実際に機能する。その時点では明確な市場性のある用途が見えていない場合もある。
【2】過度な期待(ハイプ)のピーク:そのテクノロジーの必要性が明確になり始め、興奮に満ちた大規模な取引と投資を創出する。
【3】幻滅期:蓋を開けてみれば、当該テクノロジーには確かに存在意義があるものの、当初の過剰な期待が示したほどすぐに機会があるわけではないことが明らかになる。一部の関連企業は失速し始める。
【4】啓蒙の坂:テクノロジーのコストが低下し、機能性や用途が拡大する。生き残った企業がそのテクノロジーを実用的で市場性のあるビジネスへと発展させ始める。
【5】生産性の安定期:基盤となるテクノロジーが当たり前のものとして普及し、業界が安定する。利益を生み出せない企業は撤退し、存続可能な企業だけが残る。
AIは、新しい技術が期待に応えられず急速に関心が失われる「幻滅期」(トラフ・オブ・ディスイルージョンメント)と呼ばれる局面にあると考えられます。これは、業界のトップ銘柄の多くにとって強気の株価回復が訪れる前に、必ずと言っていいほど訪れる局面です。
このサイクルが何度も何度も繰り返されてきたのを目にしている投資家もいるでしょう。仮想現実(VR)、太陽光パネル、インターネット電話(VoIP)、3Dプリンター、音声認識などは、いずれも登場初期に大きな話題を集めました。そして現実が見えてくると熱狂は落ち着きましたが、今では、これらの全てが、ビジネスを静かに支える実用的な基盤となっています。
このガートナーのハイプ・サイクルを最も象徴する代表例は、1990年代後半のドットコム・ブームとそれに続く2000年のドットコム・バブルの崩壊でしょう。当時の企業の多くはすでに存在していませんが、生き残った企業はインターネットの中核を担う存在となっています。
AIが今後迎える局面と適合する分野とは
このように整理して考えると、AIがまさに幻滅期の真っ只中にあることは明らかです。将来、世界がAIを活用するようになるでしょう。しかし同時に、AIが期待されていたあらゆる場面でまだ本来の価値を示せていないことも事実です。これこそが「幻滅」という局面なのです。
全米経済研究所(NBER)が最近実施した調査結果は、この状況をよく示しています。調査対象となった6,000人の最高財務責任者(CFO)と最高経営責任者(CEO)のうち、80%強が「AIは従業員の生産性向上に寄与していない」と回答したのです。効果がないと考えているにもかかわらず、なぜ投資を続けるのでしょうか。
理由はあります。それはガートナーのサイクルで次に来る局面、すなわち「啓蒙の坂」です。この局面でCFOやCEOは AIが何に向いていないか、逆にAI が本当に得意なのは何かを理解し始めます。おそらく、ほとんどのオフィス・ワーカーは自身のデジタルアシスタントにアクセスする必要はありません。しかし、AIはサイバーセキュリティ、予測、デジタル画像の作成や編集といった業務には理想と言えるほど適合するでしょう。
魅力的なAI関連銘柄
以上を踏まえ、次の「啓蒙の坂」において魅力的なAI銘柄について考えてみましょう。
オラクル[ORCL]
オラクルは、有力な候補の一つと言えるでしょう。同社は長らくリモートアクセス型データベースの提供を事業の中心としてきましたが、AI市場に特化する方向への事業転換は有望といえます。既に確保している案件を踏まえ、経営陣はAIインフラ関連収益が2026年の180億ドルから2030年には1,440億ドルに大きく拡大すると見込んでいます。これは、オラクルが前会計年度通期で計上した売上高のほぼ3倍に相当します。
アルファベット[GOOGL]
アルファベット[GOOGL]の株価は、AIが幻滅期に入ったことから生じた弱気の逆風にも、比較的しっかりと耐えてきた数少ない企業の一つです。AIはアルファベットにとって最大の事業ではありません。依然として、主力は検索エンジンのGoogleであり、利益の源泉はGmailやGoogleドキュメントといった関連サービスです。同社のAI事業が含まれるクラウド部門は、2025年度の売上高と営業利益のわずか15%を占めるにすぎません。
しかし、アルファベットのクラウド部門は、AIによって同社で最も成長が速いセグメントになっています。そして、世界が現実的な形でAIを活用し始めた現在、AIのあらゆる成長機会を捉える上で、同社ほど有利な立場にある企業はあまりないと言ってよいでしょう。
例えば、オープンAIが提供するチャットGPTは世界で最も利用されているAIチャットボットですが、世界中のウェブアクセス解析会社スタットカウンターによれば、法人向け機能を武器に市場で最もシェアを獲得しているのはグーグルのGeminiです。
同時に、Googleドキュメントは定番の生産性向上ソフトウエアとして、マイクロソフトのOfficeからシェアを奪い続けています。さらに、クラウド・データセンターの調査・分析会社シナジー・リサーチ・グループのデータによれば、グーグル・クラウドはクラウドコンピューティング分野で全ての競合他社を上回る成長を示しています。
このようにビジネス領域にますます浸透していることから、アルファベットは、これから訪れる「啓蒙の坂」の局面で大きな利益を得る有利な立場にあります。この段階では、Googleがすでにサービスを提供しているような法人・企業向け顧客が中心になると考えられます。
さらに、量子コンピューティングが実用化された際には、アルファベットが企業にとってその利用を非常に容易にする存在になる可能性も高いと言えるでしょう。
リカージョン・ファーマシューティカルズ[RXRX]
もう少し知名度の低い銘柄としては、AIを使って創薬と開発をバーチャルに行っている企業である臨床バイオ医薬品のリカージョン・ファーマシューティカルズ[RXRX]が挙げられます。
ユーアイパス[PATH]
ロボティクスやプロセス自動化プラットフォームの開発を行うユーアイパス[PATH]は、コンピューターによるワークフローの自動化を専門としている企業です。どちらも、少なくとも長期的なウォッチリストに加えておくとよいでしょう。
逆に積極的に買うべきでない銘柄は?
AIが幻滅期の今、あまり積極的に投資対象として考えないほうがよいAI銘柄は、マイクロソフトです。それは前述のマイクロソフトです。同社が依然として強大な企業であることに変わりはありませんが、少なくとも現時点では、AI事業のどの分野においても優位性を示せていません。どの業界においても、株価が大きく伸びる企業には「圧倒的な優位性」という点は重要です。
免責事項と開示事項 記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者James Brumleyはアルファベットの株式を保有しています。モトリーフール米国本社は、アルファベット、マイクロソフト、オラクル、ユーアイパスの株式を保有し、推奨しています。モトリーフール米国本社は、ブロードコムおよびガートナーを推奨しています。モトリーフール米国本社は、情報開示方針を定めています。
