今週(3月10日~3月16日)の相場動向

相場回顧 BTC:米銀行破綻後、利上げ加速懸念の後退などを受けて急回復

ビットコインは、米国においてシルバーゲート銀行、シリコンバレー銀行(SVB)、シグネチャー銀行と暗号資産関連企業と取引の多い銀行が立て続けに破綻する中、米国株とともに大きく下落した。サークル社発行の米ドル連動型ステーブルコインUSDCの準備金の一部がSVBに保管されていたため、同行の破綻報道を受けてUSDCでは最大10%のマイナス乖離が発生し、一時BTC=266万円(20,000ドル)を割り込んだ。

3月12日には米財務省と米連邦準備制度理事会(FRB)、米連邦預金保険公社(FDIC)が預金者保護に関する共同声明を発表し、USDCのディペグも解消される中、ビットコインは買戻しが強まった。ステーブルコインが主に取引されるDeFi市場で約2億ドル規模のハッキングも起きたが、一連の事件によって相対的に安心感のあるビットコインへ資金を逃避する動きもあり、ビットコインの価格はドミナンスとともに急上昇した。

銀行破綻による景気への影響が懸念されたことで今月米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ加速懸念が後退し、3月14日には一時BTC=346万円(26,000ドル)付近まで価格を伸ばした。銀行の信用リスクが意識されたこともビットコイン買いを強めた。

しかし、やや買われすぎな状況で、米2月消費者物価指数(CPI)のコア指数が市場予想を上回り、直近上値として意識されていたBTC=333万円(25,000)付近まで押し戻された。銀行株が世界的に売られる中、クレディ・スイスの財務リスクへの懸念が再燃し、その後も軟調な推移となった。米証券取引委員会(SEC)のゲンスラー委員長がPoS銘柄の暗号資産は証券に該当しうるとの発言も嫌気された。

 

来週(3月17日~3月23日)の相場予想

BTCはSVBショックの影響を見極める中で買いが強まることも、米FOMCに注目

金融市場では来週3月21日にいよいよ注目の米FOMCを迎える。パウエルFRB議長は3月初めの議会証言でタカ派寄りのメッセージを出しており、今週発表された2月CPIでもインフレの高止まりが示唆された。

一方、銀行の連続破綻によって米国経済の先行き不透明感が強まっており、FRBは利上げか様子見かの難しい判断を迫られる。利上げ見送りの予想も出る中で当初の予想との間をとった0.25ポイント利上げを決定し、議長発言によって市場を抑制するのが無難とも思われる。利上げ見送りの場合は金利低下とともに買いが強まることは考えられるが、逆にタカ派姿勢が変わらず0.5ポイント利上げとなった場合は売りが強まるだろう。

暗号資産市場では米銀行破綻による暗号資産関連企業への影響が懸念されている。破綻した3行の預金については全額保護される予定だが、暗号資産関連企業との取引を受け付けない伝統的な金融機関が多い中で、破綻銀行の取引先の資金がどこに向かうかは注視が必要である。また、今回の破綻劇は当局が暗号資産市場を締め出すために決定されたとの見方もあるほど、米国では暗号資産に対する規制強化の動きが強まっている。事件後の具体的な影響や当局による取り締まりが続く中で売り圧が継続する可能性はあるだろう。

一方、リーマンショック以降、最大規模となる米国銀行の破綻を受けて銀行の信用リスクが世界的に意識されており、その中で特定の国や企業に依らないビットコインが逃避資産として買われることは考えられる。USDCの件でステーブルコイン全体への懸念も強まっており、イーサリアムも4月予定の大型アップグレードを前に不透明感が残る状況では、ビットコインが相対的に安全な資産として買われやすい。ビットコインの買いとともにドミナンスも48%付近まで上昇する可能性はあるだろう。

直近上値としてBTC=346万円(26,000ドル)、下値としてBTC=293万円(22,000ドル)を意識する。

※1ドル=133.00円で換算(執筆時)