米ドル/円 日足 

週間予想レンジ:134.00~137.50

メインストラテジー:押し目買い&高値追い

・スイスショックを通過
・日銀の政策維持を確認
・円安本流はなお途中

【図表1】米ドル/円(日足)
出所:筆者作成

アナリシス:

米ドル/円相場は先週一旦131.49円をトライしたものの、切り返しを果たし、週足では「スパイクロー」の罫線をもって続伸の様子を示した。もっとも、先週は米大幅利上げだけではなく、「スイスショック」も通過し、かえってトレンドの蓋然性を再度強化していたところは大きなポイントであり、円安の本流はなお途中と示唆している。

米大幅利上げの継続自体、マーケットのコンセンサスと合致しており、0.75%の利上げ幅も必ずしもサプライズとは言えなかった。しかし、スイス国立銀行の大幅利上げは、市場関係者の想定外であっただけに、日銀政策に関する思惑を引き起こし、一時131.49円までの反落をもたらした。しかし、結局日銀の政策維持が確認され、米ドル/円の大幅切り返しで円安本流への復帰を確認したので、今週の続伸を有力視できるわけである。

なにしろ、「スイスショック」があったからこそ、相場の内部構造を一段と確認できたと言える。131円半ばの支持ゾーンは、4月末、5月初旬の高値ゾーンと合致するだけに、「スイスショック」がもたらした波乱があっても内部構造の「規律正しさ」が維持され、ブルトレンドの蓋然性をより鮮明化させたと言える。

日足では、5月15日の緯線自体が「弱気リバーサル」のサインとなり、本来一段と深い押しをもたらす存在であってもおかしくないが、先週末の大幅切り返しで早期高値更新の可能性が示唆され、15日罫線の意味合いが否定されると、一段と高値トライの勢いを増していくと推測される。

もっとも先々週の大幅続伸は、6月に入ってからの大幅切り返しに続き、一気に135円大台の打診を果たした。上昇加速、また再度高値を追うような展開になってきたが、単純に円安ではなく、米ドル高の側面が鮮明になってきた分、「クライマックス」的な段階に来ていることも暗示された。米大幅利上げの継続がもはやコンセンサスとしてかなり織り込まれる以上、これからの高値更新や上値打診が急速に行われる場合は、逆に慎重なフォローに徹したいと思う。

というのも、5月米消費者物価指数(CPI)の40年ぶり高い数字を受け、マーケットはパニック的な米ドル買いに走っていた。米大幅利上げがこれからも続き、また場合によっては一回0.75%の利上げもあり得るといった観測が急浮上し、米株安にリンクしたリスクオフが見られたことは先週のコラムで解説した通りであり、通過されると今度は次回も0.75%の利上げありといった予測が根強く、米ドル買いの「出尽くし」があってもおかしくない情勢だ。

リスクオフと言えば、昔は円買いだったが、円は資金の逃避先としてその役割が完全に失われており、米ドルは真の安全資産として評価されるため、米大幅利上げ、また連続利上げが確実視されるなか、米ドル買いの殺到で1番弱い存在の円はさらに売り込まれることは2022年以来、マーケットの主流として再三確認されてきた。その分、米大幅利上げ継続がもたらしたインパクトも従来のまま保つのが難しくなっていくと推測される。

2002年1月高値の135.16円のブレイクはもはや問題ではなく、その後大幅な上昇余地が拡大することも確実視される。問題は円売りのスピード度が速く、また節目のブレイクも早いため、円売り自体がファンダメンタルズに沿った値動きとはいえ、投機色が濃くなった側面を否定できない。米インフレ高自体、米ドルの価値を毀損する要素でもあるため、目先としては完全に無視されたところが懸念材料であり、137円台のターゲットの達成があるのであれば、米ドルロング筋の利益確定と相まって、相場雰囲気の変化に注意しておきたい。

しかし、相場の内部構造に鑑み、いわゆる値ごろ感による逆張りが個人投資家の行動パターンとして定着しているため、円売りを加速する存在として無視できない。言ってみれば、クライマックス的な上昇段階において、逆張り筋が往々にして踏み上げられ、「買われ過ぎ」でもさらなる買われ過ぎをもたらすため、普通の感覚では計り知れないスピードのさらなる加速もあり得る。137円台の打診があったからこそ、さらに140円関門を迫る、といった可能性も大きいため、トレンドを逆張りする行動はなお禁物である。

この意味では、値動きのみでは市況をフォローしきれないかもしれないが、トレードにおけるフォローはプライスアクションのサインに基づくしかない。6月17日の大陽線が否定されない限り(132.16円割れがない限り)、押し目買いまたは高値追いはなお短期スパンにおける正しいスタンスである。なにしろ、ここまでくると、テクニカル上の視点がシンプルになってくる。まず2002年1月高値の135.16円を早期ブレイクできるとみなし、その後137円円台の打診が早期達成できるかどうかを確認、それ以上の高値トライは、140円心理大台まで大した節目がないことを覚悟している。逆に6月17日の安値を下回らない限り、高値圏での波乱があっても強気基調を保ち、先週安値前後の再打診があれば、一旦様子見に戻る、といったストラテジーが適切だろう。

もっとも、日銀政策維持を受けた先週末の大幅切り返しに鑑み、同日の陽線が否定される場合はモメンタムの低下が深刻になってくる。言い換えれば、今週早期高値更新や高値を追う環境がなければ、やや危惧すべき状況に変わっていくかもしれない。なにしろ、5月末からの連騰は3月初頭からの連騰の一環として位置付けており、また2021年以来の上昇波の一環として見る場合、上昇一服があってもおかしくない段階に来ているため、6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)や「スイスショック」に試された米ドル/円の上昇、モメンタムが伴わないと、「気まずい」サインの形成に寄与する可能性があるため注意が必要である。

豪ドル/円 日足  

週間予想レンジ:93.50~96.50

メインストラテジー:押し目買い&高値追い

・底堅さは証明済み
・適切な調整も済み
・円安本流は継続

【図表2】豪ドル/円(日足)  
出所:筆者作成

アナリシス:

豪ドル/円相場は先週やや反落し、一旦92円関門割れがあった。しかし、単純に速度調整との位置付けは変わらず、先週の足型が示す「スパイクロー」のサインも軽視すべきではなく、基本的な見方は変わらない。

先々週続伸は、一旦高値更新してから反落し、週足では「スパイクハイ」のサインを点灯していた。この意味合いにおいて、先週のスピード調整も自然のなりゆきであり、むしろ底堅い構造を再度証明したと言える。

6月に入ってからの大幅続伸は、上放れの構造を再度確認した上で、高値再更新を確実視していたため、想定通りの展開と言える。豪ドル対円の優位性が健在であるため、上放れ自体を当然な成り行きとみなし、この意味では、より長いスパンにおいて、これからもブルトレンドを維持できるため、先週の速度調整は、これからのトレンドをより健全化させる、という視点ではむしろ歓迎される存在である。

米ドル/円の続伸、また高値連続更新を背景とした豪ドル/円の続伸自体、当然の成り行きではあるものの、これは米ドル/円次第の側面が大きいことも否定できない。そのため、米ドル/円はFOMC前にすでに高値再更新が確認され、FOMCや「スイスショック」の試練を経て、これから高値再更新するなら、豪ドル/円の頭打ちも当然予測できない。米大幅利上げ、また連続利上げの想定がすでに圧倒的な市場コンセンサスと化していたからこそ、米ドルの優位性は当面変わらない。その分、豪州の事情(豪州の利上げ継続も想定される)が無視される形で豪ドル対米ドルの反落が確認されてきたが、米ドル買い優勢で豪ドル対円の上昇渋りがあっても、トレンドの修正はないだろう。

5月後半から連騰したため、先々週高値の96.90円からの反落は、スピード調整として「正当化」できる側面もある。保ち合いの先行があれば、むしろこれからの上昇波を健全化させるため、先週の深押しは、想定よりさらに下値打診があったものの、基本的な要素は変わらず、メイン基調への変化もないだろう。日足では、直近のサインとして6月16日の罫線を中心に「Ioi」を形成し、これから上放れを果たす蓋然性が大きく、また上放れできれば、上昇モメンタムの加速をもたらすだろう。

一方、高値更新後の反落は、往々にしてモメンタムの低下を意味し、米ドル/円における「円売りパニック」の雰囲気と相まって観察すればわかるように、豪ドル/円の「出尽くし」感を払拭しきれないかもしれない。さらに、米ドル/円自体が節目にかかり、また値動き次第で大きく変化するタイミングにあるため、高値更新があれば、上値を追うかどうかは流動的である。言ってみれば、上昇モメンタムの強化を有力視するが、吹き値の出現があれば、逆に冷静なスタンスをもって接したい。

日足では、5月25日からほぼ「連陽」を形成し、高値更新後の反落は、基本的にスピード調整の一環と位置付けできる。91円台前半の押しがあれば、上昇波自体の構造を否定することになる。そこまで反落してくること自体、サプライズ・シナリオに過ぎないが、「スイスショック」が通過したからこそ、そのようなサプライズがあれば、一旦様子見に徹することも必要だろう。

言ってみれば、深押しがあった場合、押し自体が疑われる。4月の高値更新は、週足では一旦「ダマシ」のサインを点灯していたため、先々週の高値再更新があったからこそ、「本物」なら大した押しがみられないはずである。早期高値更新を確認できないうちは、上昇モメンタムの継続性を確信できない。先週の底固さが証明されたからこそ、なおさらだと思う。

仮に米ドル/円の137円台打診があれば、豪ドル/円の早期高値再更新が確実視される。ただし、米ドル/円の上昇は米ドル高の側面をより反映してきた分、米ドル/円の高値再更新に豪ドル/円などクロス円が付いて来ない局面もありえる。この場合は一段とクロス円における頭の重さが確認され、これから調整波の一段進行が警戒される。しかし、仮にその場合でもベアトレンドへの復帰はないため、当面強気基調の継続を有力視したい。