米ドル/円 日足

週間予想レンジ:134.50~137.50

メインストラテジー:押し目買い

・米ドル高で円安加速
・円安はクライマックスへ
・「行き過ぎ」を警戒

【図表1】米ドル/円(日足)   
出所:筆者作成

アナリシス:

米ドル/円相場は先週大幅続伸し、先々週の大幅切り返しに続き、134円半ばのトライで、目先としては一気に135円大台の打診を果たした。上昇加速、また再度高値追うような展開になってきたが、単純に円安ではなく、米ドル高の側面が鮮明になってきた分、「クライマックス」的な段階に来ていることを警戒したい。

というのは、米5月の消費者物価指数(CPI)の40年ぶり高い数字を受け、マーケットはパニック的な米ドル買いに走っている模様だからだ。米大幅利上げがこれからも続き、また場合によっては1回0.75%の利上げもあり得るといった観測が急浮上し、米株安にリンクしたリスクオフが見られたわけである。リスクオフと言えば、昔は円買いだったが、円は資金の逃避先としてその役割が完全に失われており、米ドルが真の安全資産として評価されているため、米大幅利上げ、また連続利上げが確実視される中、米ドル買いの殺到で1番弱い存在の円はさらに売り込まれ、節目なしの様子を示している。

2002年1月高値の135.16円のブレイクは最早問題ではなく、その後大幅な上昇余地が拡大することも確実視される。問題は円売りのスピードが速く、また節目のブレイクも早いため、円売り自体がファンダメンタルズに沿った値動きとはいえ、投機色が濃くなった側面は否定できない。米インフレ高自体、米ドルの価値を毀損する要素でもあるから、目先として完全に無視されたところも懸念材料である。

しかし、相場の内部構造に鑑み、いわゆる値ごろ感による逆張りが日本個人投資家の行動パターンとして定着しているため、円売りを加速する存在として無視できない。言ってみれば、クライマックス的な上昇段階において、逆張り筋が往々にして踏み上げられ、「買われ過ぎ」がさらなる買われ過ぎをもたらすため、普通の感覚で計り知れないスピードのさらなる加速もあり得る。135円大台に来たため、さすがにもう目いっぱいになっただろうという値ごろ感は、多ければ多いほどさらなる円売りの加速になりかねないため注意が必要である。

我々としては、135~137円といったターゲットゾーンを繰り返し提示してきたため、目先の市況に関して全くサプライズではないが、警戒すべきところもある。前述のように、米ドル買い自体にパニック的な側面があり、その上、円売りの「行き過ぎ」自体を否定できない以上、米ドル高/円安の一段進行自体は否定しないものの、手放しで高値を追えるかどうかは別問題となってくる。なにしろ、往々にしてクライマックスの段階において、何らかのサプライズ的な材料が出やすい時期でもあるため、警戒しておきたい。

この意味では、値動きのみでは市況をフォローしきれないかもしれない。5月末から連騰してきたものの、高値更新後のモメンタムが継続され、6月9日、10日の日足が「スパイクロー」のサインを灯しているところ、安易な頭打ちは想定できない。円安が本物である以上、順張りの円売りのみ、逆張りのスタンスはあり得ないため、仮に137円台を超えた円安の一段進行があっても、米ドル買い/円売りしかできないとみている。

ここまでくると、テクニカル上の視点がシンプルになってくる。まず2002年1月高値の135.16円を早期ブレイクできるとみなし、その後137円台の打診が早期達成できるかどうかを確認、それ以上の高値トライは、140円心理大台まで大した節目がないことを覚悟している。逆に6月9日安値の133.18円を下回らない限り、高値圏での波乱があっても強気基調を保ち、米ドル買い/円売りの一段「行き過ぎ」を警戒しながらも、基本は上値志向の継続を有力視している。

その反面、133.18円を下回れば、一旦頭打ちを意識しておきたい。一見して容認できる範囲内の値動きだが、強気基調に鑑み、135円関門を一旦乗せてからの反落が仮に同節目を下回れば、基本的にはサプライズ・シナリオとなるため、何らかの材料の急浮上も想定され、円売り一服の始まりと推測される。

もっとも、5月末からの連騰は、3月初頭から連騰の一環として位置付けており、また2021年以来の上昇波の一環として見る場合、上昇一服があってもおかしくない段階に来ている。その段階におけるパニック的な米ドル買い/円売りの相場心理がみられる場合は、一旦冷静に相場の推移を見守ることも大事なスタンスだと思う。逆張りはもちろん禁物であるが、米ドル急伸が続く場合、しっかり利益確定を行いたい。今週の連邦公開市場委員会(FOMC)後、波乱が起こる可能性に注意したい。

豪ドル/円 日足

週間予想レンジ:92.50~96.50

メインストラテジー:レンジ取引

・高値圏でのレンジを再構築
・一旦高値更新も頭が重い
・保ち合い先行で値固め

【図表2】豪ドル/円(日足)   
出所:筆者作成

アナリシス:

豪ドル/円相場は先週続伸し、一旦高値更新をしてから反落、週足では「スパイクハイ」のサインを点灯していた。もっとも、先々週の大幅続伸は、上放れの構造を再度確認した上で、高値再更新を確実視していたため、想定通りの展開と言える。豪ドル対円の優位性が健在であるため、上放れ自体を当然な成り行きとみなし、この意味では、より長いスパンにおいて、これからもブルトレンドを維持できる公算が大きい。

ところで、米ドル/円の続伸、また高値連続更新を背景とした豪ドル/円の続伸自体、当然の成り行きではあるものの、これは米ドル/円次第の側面が大きい。すでに高値再更新が確認され、今さら弱気になる必要は全くないが、米ドル/円次第の側面を重視する場合、一旦上昇一服の可能性を無視できない。さらに、豪ドル/米ドルの値動きが気になる。米大幅利上げ、また連続利上げの想定が圧倒的な市場コンセンサスと化している中、豪州の事情(豪州の大幅利上げが行われたばかり)が無視される形で豪ドル対米ドルの反落が確認されており、米ドル買い優勢で豪ドル対円の上昇渋りも見られた。

とはいえ、5月後半から連騰したため、先週高値の96.90円からの反落は、スピード調整として「正当化」できる側面もある。保ち合いの先行があれば、むしろこれからの上昇波を健全化させるため、93円台後半が目先の変動レンジの下限となれば、再び高値更新が図られるだろう。調整の深押しがある場合は、92円台後半も想定されるが、強気基調に鑑み、それ以下の押しさえ回避できれば、強気構造自体は変わらず、また100円心理大台の打診に照準を当てる公算が大きい。

一方、高値更新後の反落は、往々にしてモメンタムの低下を意味し、米ドル/円における「円売りパニック」の雰囲気と相まって観察すればわかるように、豪ドル/円の「出尽くし」感を払拭しきれない。さらに、米ドル/円自体が節目にかかり、また値動き次第で大きく変化するタイミングにあるため、今週手放して高値を追うスタンスには距離を取りたい。言ってみれば、保ち合いの先行でこれからの高値更新に寄与するなら、まず値固めの時期となり、同時期におけるレンジの形成を想定しておきたい。しっかりレンジの下限を拾う姿勢のほうが無難だと思う。

日足では、5月25日からほぼ「連陽」を形成し、高値更新後の反落は、基本的にスピード調整の一環と位置付けができるが、91円台前半の押しがあれば、上昇波自体の構造を否定することになる。そこまで反落してくること自体、目先のサプライズ・シナリオに過ぎないが、円売り自体が「クライマックス」の時期に入ってきた分、単純にフォローしきれない部分もあるため、警戒心は緩めないほうが良いだろう。

とはいえ、仮に米ドル/円の137円台打診があれば、豪ドル/円の早期高値再更新も覚悟しておきたい。しかし、先週後半にみられたように、米ドル/円の上昇は米ドル高の側面をより反映してきた分、米ドル/円の高値再更新に豪ドル/円などクロス円が付いて来ない局面もありえる。この場合は一段とクロス円における頭の重さが確認され、これから調整波の一段進行が警戒される。しかし、仮にその場合でも高値圏での変動に留まるため、円の買い戻しがあってもあくまで豪ドルロング筋の利益確定に過ぎない。今週のFOMC後、豪ドル/円も波乱の可能性に注意したい。