ウクライナ情勢への懸念が続く中、米国債は逃避の買い
先週3月4日、日本経済新聞紙上において同紙の政治部長が「プーチン氏 終わりの始まりか」と綴りました。もはやロシアのプーチン大統領は国際社会から完全に孤立し、ロシア国内からも非難の声が多数上がっています。
すでにウクライナ国民の憎しみの感情は絶頂に達しており、このような状況で仮にウクライナの首都キエフにおいて傀儡政権を樹立することができたとしても、それを統治することは困難を極めると思われます。
既知のとおり、極めつけは3月4日のロシア軍によるウクライナ原発に対する攻撃でした。あり得ない出来事を伝えるニュースが次々に飛び込んでくる中、国際金融市場も大いに動揺しています。
原油先物価格の記録的な上昇が続く中、米国債には逃避の買いが集まっており、米10年債利回りが先週末にかけて一時1.70%まで低下する場面もありました。結果、2-10年債の利回り格差はフラット化が急速に進んでおり、米国景気の先行きにも暗雲が漂い始めていることが少々気掛かりです。
米ドル/円は下値に支えられる展開、ユーロ/米ドルは大きな下げ
このような状況下でも、米ドル/円は依然として一目均衡表の日足「雲」や89日移動平均線の節目に下値を支えられる展開を続けています。
ユーロ/円が急激な下げを演じていることもあって、当面の上値は自ずと限られるものと見られますが、前述の節目あたりまで下押す場面があった場合には、打診的に押し目買いを入れる算段で臨むのも一手であると思われます。むろん、あらかじめストップロスを置いておくことは怠れません。
一方で、先週のユーロ/米ドルは「暴落」とも言える大きな下げを演じました。当面は下値支持として機能すると見られていた1.11-1.10ドル処の大きな節目をもあっさりと下抜けることとなり、それだけロシアの原発攻撃が衝撃的なものであったということを如実に物語っているとも言えるでしょう。
もちろん、欧州の天然ガス価格が連日のように史上最高値を更新し続けている状況からすれば、市場でスタグフレーションへの懸念が強まるのも無理はありません。
今週3月10日には欧州中央銀行(ECB)の理事会が控えていますが、2月に強まった些かタカ派寄りの姿勢に今回は一定の軌道修正が施され、より慎重な姿勢を示す可能性があるとの見方も市場で徐々に強まるのではないかと思われます。
ECBが慎重姿勢にシフトする可能性については、ユーロ/米ドルが1.10ドルを割り込んだ時点で相当程度織り込んだと見ることもできそうですが、念のため3月10日のECB理事会開催までに次の下値の目安とされる1.08ドルあたりまで一段の下値を試す可能性についても一応は想定しておいた方が良いものと考えます。
売りが強まる英ポンド/米ドル、2月の米消費者物価指数の発表にも注目
なお、先週3月4日は英ポンド/米ドルの売りも強まって、一時的に1.3200ドル近辺まで下押す場面がありました。目先は、やはり2021年12月安値の1.3161ドル処が意識されやすいと考えられ、同水準をクリアに下抜けるかどうかが当面の焦点となりそうです。
ちなみに、先週はユーロ/英ポンドが2020年2月半ばの安値をも下抜ける動きを見せており、対ユーロでの英ポンドの優位性になおも変わりはありません。その意味では、そろそろ英ポンド/米ドルの下値を攻めることにも慎重になる必要がありそうです。
今週は3月10日に2月の米消費者物価指数(CPI)の発表が控えており、その結果に市場が反応する可能性も大いにあると考えておきたいところです。
むろん、それもウクライナ情勢の行方次第ではあると思われますが、目下の状況にあって米国のCPIが想定外の低水準に留まるとは些か考えにくいことも事実です。ECB理事会と米CPIの結果が明らかになる3月10日前後は普段以上に厳しいポジション管理をしておきたいものです。