米株市場はいまだゴルディロックスの状態
前回のコラムで、注目すべきは「4月の米求人が(中略)統計開始以来の過去最高を更新」したことと「米国の25州が失業保険給付の特別加算を前倒しで終了する」ことであると述べました。
実際、先週7月2日に発表された6月の米雇用統計の各項目の結果には、そうしたことの影響が鮮明に表れていたと考えることができます。
まず、6月の非農業部門雇用者数の伸びが事前の市場予想を上回ったことには何の不思議もありません。失業保険給付の特別加算の終了前倒しで求職者がジワリと増えるも、極度な「売り手市場」のなかで今しばらく次の勤め先を“品定め”したいとする向きもあり、一気に100万人増とはならなかったものの、一定の強い結果(85万人増)が示されました。
求職者が増えれば失業率が上昇するのは当然ですし、雇用者数が大幅に増えれば平均時給が少々低下するのも当たり前。いまだ労働参加率が低水準に留まっているのは、なおも特別加算付きの失業保険給付を受けている向きがあることと、9月の新学期から対面授業が始まるまでは、まだ子育ての手が離れない家庭もあるというのが主な理由です。
正味のところ、今回の雇用統計の結果は強めの内容だったと見ます。それにも拘らず、7月2日の米株市場では失業率や平均時給、労働参加率が弱めの結果だったという「いいところ取り」の解釈がなされ、またもS&P500指数やナスダック総合指数は史上最高値を更新しました。「今しばらく『ゴルディロックス』のシナリオは続く」というわけです
米雇用情勢の動きに注目
そして、米ドルは同じ理由で一旦売り戻されることとなりました。
少々解せない市場の解釈ならびに値動きだったと感じますが、事前にかなり強く買い上げられていたことと、米国の3連休を控えたタイミングであったことを考えれば、まったく理解できないというわけでもありません。
米ドル/円については、4月下旬から形成している上昇チャネルの上辺に一旦達したということもありますし、ユーロ/米ドルについては6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)後に一段切り下がったレンジ(1.1860-1.2060ドル)の下辺を一時的に下抜け、目先下げ過ぎの感が強まっていたこともあると思われます。
ともあれ、米雇用情勢が今後一段の改善を見ることは想像に難くありません。
失業保険給付の特別加算を前倒しで終了する州は増えますし、遅くとも9月上旬には全面的に終了期限が訪れます。また、米企業による「求人」が過去最高レベルに達している中で生じている「雇用のミスマッチ」は、次第に解消に向かうものと考えられます。
そうなれば、もはやいつまでも悠長に構えているというわけにも行きません。好条件の「求人」が残っているうちに、焦って求職活動を本格化する人も増えるでしょうし、結果的に「採用(=雇用)」される人も一気に増えることとなるでしょう。
今週7月7日に発表される5月の米求人・労働異動調査(JOLTS)の結果を横目で確認しつつ、今足元で起きていることを想像しながら米ドルと向き合えば、やはり一段の下値を売り込むことには慎重にならざるを得なくなるはずです。
仮に目先は一旦調整含みになるとしても、米ドル/円に関しては一目均衡表(日足)の基準線や21日移動平均線が下値サポートして意識されやすいと思われます。また、先週7月2日高値を上抜けてくれば、次は112円台前半から半ばあたりの水準を試すことになると見ます。
一方、ユーロ/米ドルに関しては1.1850-60ドル処の水準を改めてクリアに下抜けるかどうかが、まずは問われるところとなります。
仮に下抜けると、その後の目線は1.1750-60ドル処まで一気に下がることになりかねません。目先的に戻りを試す場合は1.1970ドル処が1つの目安になると見ます。