ユーロ/米ドルが大幅に下がった背景
6月14日(月)以降の週の外国為替相場において、何より目を見張ったのはユーロ/米ドルの大幅な下げでした。
私は、前回のコラムでユーロ/米ドルについて「改めて(節目の)1.2160ドル処を下抜ける動きとなれば、そこから一旦は1.2060ドル処を試しに行く」と述べましたが、実際には1.2060-1.2260ドルのレンジ下限をも下抜けて、一時は1.1850を下回る場面まで目の当たりにすることとなりました。
つまり、約0.02ドルの値幅で形成していたレンジが一段下がり、今後は1.1860―1.2060ドルのレンジが新たに形成される可能性があるということです。
加えて、ユーロ/米ドルの先週の週足ロウソク足は長めの陰線を描き、一旦は一目均衡表の週足「雲」上限が位置する水準に達しました(下図参照)。
つまり、ユーロ/米ドルの1.1850-60ドル処には幾つかの重要な節目が存在しており、結果として目先は下げ一服となる可能性もあると思われます。
なお、現在1.20ドル処に位置している200日移動平均線はまだ上向きで推移しており、今後戻りを試す動きが見られた場合は、ひとまず同線が1つの目安になるものと思われます。
むろん、ユーロ/米ドルが大幅な下げを演じることとなったのは、先週行われた米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果が市場で「想定していたよりもタカ派的」と受け止められたことが一因であったということになるでしょう。
ただ、最近の米国におけるワクチン接種の状況や経済再開に向かう順調な足取りなどを考え併せれば、むしろ今回のFOMCの結果は「まだ、かなり慎重」と感じられるものであったことも事実です。なにしろ、ニューヨーク州やカリフォルニア州では、小売店や飲食店の入場規制がなくなった上、すでに経済の「全面再開宣言」まで発せられているのです。
FRBの政策方針に揺れる米国株
前回のコラムでは「6月8日に発表される4月の米求人・労働異動調査(=JOLTS)の結果に注目」という趣旨のことも述べました。
その結果ですが、4月の米求人が928万件と前月に引き続いて統計開始以来の過去最高を更新することとなりました。その後、「米国の25州が失業保険給付の特別加算を前倒しで終了する」との報道も現地から伝わってきており、これまでの想定よりも早い段階で米国の雇用者数が急増する可能性も高まってきています。
米雇用者数の増加は目先的には「平均時給」を低下させることにもつながりますが、何より雇用者数が大きく伸びること自体が米連邦準備制度理事会(FRB)の政策方針に強く影響すると市場は受け止めるでしょう。その結果、米国債利回りが強含みの展開となれば、やはり米ドルは基本的に買われやすくなると思われます。
ただ、米国債利回りの上昇が米国株の一時的な調整につながりやすいことも事実です。実際、先週のNYダウ平均は5営業日で1,200ドル近くの下げを演じました。米株安は市場のリスク回避ムードを強め、結果的に円買い圧力が少々強まる可能性もなくはありません。
少なくとも、6月14日(月)以降の週はユーロ/円をはじめとするクロス円全般の下げにより、週末にかけては米ドル/円の上値も押さえられがちとなりました。
とはいえ、元々米株価には目先の高値警戒感が広がっていたため、先週はFOMCの結果が「利益を一旦確定するための格好の口実として利用された」という側面もあったと見られます。
足元の米株安を「当然の調整」と考えれば、当面の米ドル/円の下値も自ずと限られてくるでしょうし、実際、目下の米ドル/円は4月下旬から形成している上昇チャネル内での推移を続けています。今後、再びチャネル下辺を試す可能性もあると見られますが、そこは押し目買いのチャンスになるのではないかと個人的には考えます。