香港の住宅事情は自慢ではないが、かなり厳しいものがある。香港は、人口730万人で都市の広さは東京都の半分程度。世界第4位の人口密度である。一方で中国本土からの資金流入は政府規制があるものの、あの手この手で香港に資金流入してくる。そして投資対象は安定して値上がり期待ができる香港不動産となる。ちなみに東京都港区元麻布の高級マンションの値段を100とすると、香港のアパートは230という結果がでている。つまり2倍以上の価格である。香港で日本円1億円以内の物件を探すのは一苦労なのが実情である。結果として、アパートの賃料は高止まりしており、日本からの駐在員が香港に赴任してきて日本のように80平米3LDKで比較的新しいマンションに住みたいと思ったら、芸能人が六本木ヒルズに借りているマンション程度の家賃では到底住めないことは覚悟しなくてならない。

とはいえ、香港にはそのダイナミックな経済に惹かれて世界から様々な人がやってくる。何せ、IPO市場としては世界1、2位の地位を争う国際金融都市である。GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)に並ぶ、いやそれよりも伸びが著しい時価総額50兆円以上のテンセントも、携帯電話会社で最近上場したばかりの時価総額5兆円の小米も香港上場である。

そんな光あふれる香港にも、やはり陰の部分がある。それがMcRefugees(マクドナルド難民)と呼ばれる人たちである。つまり24時間営業のマクドナルドを夜の住処にしている人を意味しており、その数が急速に増えていると地元新聞で何回か特集を組んでいる。記事によれば、最近の調査で2013年に比べてその数は5倍以上の334人もいると判明。そしてマクドナルド難民と呼ばれる人にインタビューをしたところ、仕事がないとか家がないとかを想定していたのは見事に外れ、6割の人が仕事もあり、7割以上の人が家を借りているか所有していることが判明したから驚きである。それでは何故マクドナルドで寝起きをしているのか?そこには、大都市に住む人達の心象風景が見え隠れする。家はあるのだが、狭すぎて家族で住んでいると息が詰まり、家族から離れてマクドナルドを住処にした人。自宅のエアコン代が高いのでエアコンの効いたマクドナルドの店で寝ている人。家族が皆家を出ていって1人住まいとなり、人恋しくてマクドナルドに住んでいるという老人もいる。香港に中東から出稼ぎにやってきたが、その家賃の高さに閉口してマクドナルドを住処にしたという男性もいるようだ。家賃が高いのが最大の理由ではあるのだが、その他家族との諍い・社会との接点を求めてなど、大都市ならではの事情もあるのだ。

オフィスから眺めるCentral地区から灣仔にかけて見える壮大なる高層ビル街。100万ドルの夜景ともいえる香港の街にも、巨大都市ならではの問題があることを忘れてはいけない。

コラム執筆:Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank (NWB)
世界三大金融市場の一つである香港にて、個人投資家に、「世界水準の資産運用商品」と「日本水準のサービス品質」、個人向け資産運用プラットフォームとしての「安心感」を併せて提供している金融機関。マネックスグループ出資先