FXは平日ほぼ24時間取引ができる

日本株やETF、REITの取引時間は、基本的に東京証券取引所など取引所の立会時間である平日前場9時~11時30分の2時間半と、お昼休みを挟んでスタートする12時 30分~15時の後場2時間半で1日5時間です。

この時間帯以外でも注文を出すことはできますが、市場が開いていないので約定することはありません。投資家からの注文は、証券会社が取り次ぎ、東証をはじめとした各取引所で買いと売りをマッチングさせます。

この仕組みを取引所取引と呼びます。よって、取引所の営業時間にしか取引ができません(証券会社によるPTS取引などの例外はあります)。

これに対して、FX取引は平日ほぼ24時間取引されています。土日は世界の主要市場が閉まるので取引ができません。時差があるので、日本でのFX取引時間は月曜7時前後から土曜7時前後となります。

実は、取引ができない土日も為替は動いている

為替レートは世界各国の輸出入時にその貿易金額を決定づける重要なものです。日本の株式市場がクローズした後の日本の夕方から夜に向けての時間帯は、欧州や米国が目覚めて活発にビジネスが展開されています。日本時間が終了しても、24時間、世界のどこかでは金融機関や企業間で取引がされているのです。

為替市場は、取引所を介さずに金融機関など当事者同士が、相対(一対一)でレート、数量、決済などの売買内容を決定する取引です。これを相対取引と呼びます。

為替が大きく動く時間帯とは~株式市場の変わり目

24時間取引されている為替市場ですが、時間帯によって値動きに特徴があります。大きく東京時間、欧州時間、NY時間の3つの時間帯にカテゴライズされますが、東京時間がスタートする直前のオセアニア時間にも注意を払う必要があります。

①    東京時間:およそ8時~15時くらいまで

日本や香港・シンガポールなどの市場が開くことで、アジア圏の取引が活発となる時間帯です。

米ドル/円市場では「ごとうび」と呼ばれる5日、10日の付く日が日本企業の決済日であることが多く、海外への支払いのためにドルが多く買われます。この基準となるのが「仲値」です。10時頃の市場レートを基に銀行がその日の仲値を決定します。

「ごとうび」は、企業の決済日が多く重なるため、ドル需要が増しますので、銀行はドルを大量に調達しておかなければなりません。そのため、ドル需要が多い日には仲値に向けて、銀行がドルを調達するため、ドルが上がりやすくなる傾向があります。ドル需要が多く仲値決済のドルが不足することを「仲値不足」と呼んだりします。

特に月末の仲値は注目です。新規外貨建て投資信託の設定が月末に集中していることから、その思惑で月末近くになると思わぬ外貨買いが出てきます。

新規外貨建て投資信託とは、海外債券や海外株式で構成された商品に投資する新ファンドいわゆる「外貨建て投資信託」で、その設定の際に外貨が買われます。これらは募集期間があり、新規設定金額も公表されていますので、その規模を確認することで月末仲値の値動きが大きくなることが事前に予想できることもあります。

②    欧州時間:15時~21時くらいまで

16時頃には欧州の株式市場がオープンします。欧州通貨はこの時間帯に活発に取引されるほか、ドイツや欧州圏各国の経済指標が発表される時間帯ですのでユーロやポンドの値動きが大きくなります。

この時間帯に活発に投機的な為替取引をする向きを「ロンドン勢」などと呼びます。ボラティリティ(価格の変動幅)を狙った短期ディールを仕掛けてくる傾向が強く、欧州時間の為替の値動きは「騙し」になることも多いとされています。

欧州経済指標の悪化など明らかな材料がないのに欧州時間の為替のボラティリティが上昇している時は、短期筋による投機的な仕掛けである可能性も。この時間帯は材料が不明瞭な場合は、値動きについていく手法はワークしないことが多いことを覚えておきましょう。

③    NY時間:20時~翌6時くらいまで

20時を回る頃から米国の市場参加者が参入してきます。米ドルは基軸通貨であるため、米ドルの動向は世界の金融市場に及ぼす影響が極めて大きいことは言うまでもありません。

NY時間に発表される米国の雇用統計など経済指標は、FOMCが米国の金融政策に影響を及ぼすため、経済指標の発表スケジュールを把握しておくことは極めて重要です。指標を受けて米金利、米ドルが大きく動く特徴があります。

特に値動きが大きくなるのが東京の仲値に相当する「ロンドンフィキシング」と呼ばれる値決めの24時頃。欧米企業による決済の基準となるレートが決定されるため、23時30分ぐらいから実需勢による売買が活発化し、それまでの相場とは異なる特殊な値動きが出やすい時間帯です。

東京勢の「外貨建て投資信託」の設定もロンドンフィキシングを基準にするため、この時間帯に商いが急増するケースが多く、特殊な値動きには注意が必要な時間帯となります。

なかでも月末は、ファンド勢らが月に一度、持ち高を調整するためのリバランス売買を執行することで、それまでとは全く逆の動きが出やすくなるので注意が必要です。

年金などを運用する世界の機関投資家は、月末にリバランスと言って、ポートフォリオの組み入れ比率を調整するための売買を執行します。例えば日本の機関投資家は、外貨資産の組み入れ比率が上がっていれば、幾分か外貨を売って円に戻す調整を行います。

その月に大きく売り込まれた通貨は月末のリバランスで買い戻される動きが出やすく、大きく買われた通貨は売られてポートフォリオのバランスを調整する値動きが出やすいのです。

こうしたリバランスはロンドンフィキシングで値決めされたレートを基準に行われるため、月末の23時30分以降の値動きはこれまでのトレンドと逆方向に振れやすくなるということにも留意しておきましょう。

④    オセアニア時間 6時~8時くらいまで

ニュージーランドのウエリントンとオーストラリアのシドニーの2つの市場で構成されるオセアニア市場。ウエリントン市場は南半球の夏時間では朝3時から開きますが、この時間帯はまだNY市場が活発であるため、NY市場がクローズしてから東京時間がオープンとなる直前の時間帯までがオセアニア時間と呼ばれています。
オセアニア市場は市場参加者が少なく、流動性が低下するため、些細な出来事で相場が大きく動くリスクも高まります。

2019年1月3日のフラッシュクラッシュと呼ばれる米ドル/円相場の急落もオセアニア時間のことでした。正月や、GWなどの日本の祝日は日本市場が休場となるため、為替市場の市場参加者も少なく、為替市場の注文も極端に少なくなります。
こうした流動性が低下した時を狙って仕掛け的な円買い(米ドル/円の下落=円高)が起こることが年に1~2回散見されますので、祝日早朝のオセアニア時間の円高には警戒が必要です。