古い相場の格言で「戌笑い」などと言われる2018年がスタートしました。来年は統一地方選と参院選が重なる12年に1度の「亥年」であり、その前年となる「戌年」というのは、とかく景気刺激的なムードが盛り上がりやすい年とも言われます。

当然、政府与党としては「国民支持を一段と強固なものにする1年」と位置付けていることでしょうし、政策面で常に政府と協調関係にある日銀としても、いたずらに金融緩和の「出口」を模索するような素振りは見せないようにするものと思われます。「日銀は出口を急がない」という印象をより強く国民に抱かせるためには、今年4月に任期満了を迎える黒田総裁が再任する可能性を匂わせることも一法となるでしょう。

そうでなくとも、来年は5月に新天皇の即位、10月に消費税率の再引き上げが予定されており、少なくともそうした重要日程を通過するまでは日銀も動きにくいと見ておくのが適当ではないかと思われます。よって、仮に国内景気の拡大が少々加速気味になったとしても、日銀による金融政策はもともと宿命でもある"景気の後追い"という印象をより色濃くすることになるでしょう。

一方、米国では今年の秋に中間選挙が行われます。周知のとおり、米トランプ大統領は昨年末に「10年で1兆ドル」という大型減税法案を成立させ、就任後初めて大型選挙公約の実現を果たしましたが、如何せん国民支持が広がっておらず、直ちに「二の矢」を放つ必要に迫られています。当面の目玉は「大規模インフラ投資」の公約実現であり、すでに米大統領は計画の詳細案を1月中にも提示するとしています。

米大統領自身や実現した政策への支持が広がるかどうかは別にしても、すでに成立した税制改革の中身や今後行われることが期待される大規模インフラ投資などの経済波及効果がまったくないなどということはあり得ず、むしろ当面の米国経済の成長や米企業の収益向上に相当な貢献を果たす可能性が大いにあると見られます。

そもそも、米大統領は3%以上の経済成長を目指しているわけであり、中間選挙までには少なくとも実現のメドを示さなければなりません。もちろん、大型選挙公約の着実な実現によってそれは十分に可能でしょうし、そうなれば米連邦準備理事会(FRB)もより適切に利上げなどの政策面での対応を行わねばなりません。すでに、市場はFRBによる3月利上げを織り込み始めていますし、少なくとも年3回の利上げが行われる可能性は今年も高いと言えるでしょう。

仮に今年もFRBが3回の利上げを実施すれば、おそらく米政策金利の水準は年2.0~2.25%あたりにまで上昇することとなります。つまりドルは、一般に「高金利通貨」として良く知られる豪ドルを、場合によっては上回る高金利通貨となる可能性が大いにあるのです。間違いないのは、そんな高金利通貨をわざわざショートして、代わりに世界一金利が低い円にロングを仕掛ける投資家などそうはいないということです。

そうした基本的な部分をしっかり押さえてみれば、やはり2018年は基本的にドル高・円安方向になびきやすいと考えることができそうであり、底堅いドル/円の押し目は買いというスタンスで臨みたいと個人的には考えます。そうでなくとも、世界同時好況と低金利の併存による世界同時株高の状況は今年も持続するものと見られ、基本的にリスクオンのムードが漂いやすいと見られる市場では円高リスクも限られるものと思われます。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役