前回更新分の本欄で「最近の米国では自発的離職者の数が増加しており、いずれ個人消費の流れは太く強くなって行く」と述べました。実際、先週30日に発表された米10―12月期GDP・確報値は前期比年率+2.1%と市場予想の+2.0%を上回り、同期間の米個人消費は+3.5%と改定値の+3.0%より大幅に上方修正されることとなりました。
自発的離職者の推移については、米労働省が毎月発表している「米求人・労働異動調査(JOLTS)」において確認することができ、最新の2017年2月分は4月11日に発表される予定です。同指標に対する市場の関心度合いや発表後の反応はあまり強いとは言えませんが、米労働市場の現状をよりダイレクトに把握できるという意味で、投資家としては常に確認し、押さえておきたい指標の一つということができるでしょう。
また、前回更新分では「米国内のインフラが今、深刻な老朽化問題を抱えている」という点にも触れました。「実のところ米大統領が掲げている『1兆ドル』でも大いに不足する」とも述べましたが、実際に米大統領は昨日(4日)、財界首脳との会合でインフラ整備計画の規模が1兆ドルを超える可能性があるとの考えを示したと伝えられています。この一報によって4日の米株市場は小反発することとなり、結果として米長期債利回りがやや強含みとなったことでドルが買われる展開となりました。
同日、米記者クラブでスピーチした米労働総同盟産業別会議(AFL-CIO)のリチャード・トラムカ議長は、賃金改善と労働者保護の強化につながるのであれば、組合員は米大統領の政策を支持する用意があると表明しました。同議長は、とくにインフラ投資の拡大を強く求め、米大統領は「発言ではなく、行動によって評価される」と述べた模様。同議長は昨年の米大統領選においてヒラリー・クリントン氏の支持者として知られていた人物であり、トランプ氏にとっては是が非でも味方につけておきたいところでしょう。
目下の外国為替相場は、明日(6日)から始まる米中首脳会談や週末の米雇用統計発表などを控えて模様眺めムードの色濃い展開となっていますが、これらの重要イベントを比較的無難に通過することができたならば、週明けからそれ以降にかけて一種のアク抜け感が拡がる可能性もあると見ます。
米中首脳会談では、米政権側から対中貿易の赤字の改善が強く求められ、そのことが日米貿易不均衡是正の話題にまで波及する可能性があると市場は警戒していますが、振り返れば2月初旬に行われた日米首脳会談では円相場に対する直接的な批判は避けられることとなりました。いたずらに楽観することは慎みたいものの、ドル/円の一段の下落リスクに対して過度に警戒することも極力控えたいところではあります。
下図に見るように、目下のドル/円は週足で見ると一目均衡表の週足「雲」上限の攻防になっており、先週の終値は若干ながら週足「雲」上限水準を上回りました。一方で、下値は31週移動平均線(31週線)に支えられるような格好となっており、今週末時点で其々の位置関係がどのようになるのか、大いに注目しておく必要があるでしょう。
また、週足の遅行線が週足「雲」の存在によって上方の行く手を阻まれるような格好となっている点にも引き続き注目しておくことが重要と思われます。さらに、数週間後に週足の遅行線と週足ロウソクが何らかの形で交錯する可能性は非常に高く、その点についても今後は注意深く見定めて行きたいところであると思われます。
コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役