前回の本欄でも述べたように、去る1月31日に米大統領が日本の政策スタンスについて通貨安誘導と発言したことにより、市場は今週10日の日米首脳会談においても、為替政策に関する一段と踏み込んだ指摘がなされるのではないかとの警戒を強めています。

その点に関しては、すでに浅川財務官が米ワシントンに向けて旅立ったことが伝えられており、実務担当者レベルでの事前協議によって日本側の姿勢に対する理解が進むことに大いに期待したいところです。当然、安倍首相は何らかの"手土産"を持参するものと見られており、米政府側の受け止め方次第では、今回の会合の場で為替政策についての具体的な言及はさしてなされない可能性もあるものと見ます。

もちろん、その行方はフタを開けてみるまでわかりません。仮に、より踏み込んだ為替政策への言及が米政権側からなされた場合には、一時的にもドル/円が一段の下値を試す可能性もなくはなく、自ずと下値は限られると見られるものの、一応は当面の下値の目安になり得る水準も再確認しておく必要はあるでしょう。

下図にも見るように、昨日(7日)ドル/円は一時111.59円まで下押す場面があり、結果的に昨年11月9日安値から12月15日高値までの上昇に対する38.2%押しの水準=111.99円を一時下回る動きとなりました。とはいえ、いまだ一目均衡表の週足「雲」上限(現在は111.36円)や89日移動平均線(89日線/執筆時点は111.25円に位置)を下抜ける動きにはなっておらず、これらの水準が目先的には一つの下値の目安になるものと考えられます。

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仮に89日線をも下抜ける展開となった場合は、やはり次に一目均衡表の日足「雲」下限=109.92円が意識されやすいと見られます。同水準は、前記の38.2%押しに続く下値の目安の一つである50%押しの水準と一致しており、普通に考えれば、ここはかなり強めの下値サポートということになるでしょう。

大まかに言って、112円割れから110円あたりまでの水準というのが当面のドル/円の下値の限界と考えるならば、次に何らかのきっかけでドル/円が一旦底入れから反発し、一定の戻りを試す展開となった場合の"目の付けどころ"というものも、一応は今のうちから押さえておきたいところです。

それは、まず何より21日移動平均線(21日線)であり、今しばらく同線はその水準を徐々に切り下げ続けます。次に注目されるのは、1月19日高値や1月27日高値が位置する115円台前半から半ばあたりまでの水準であり、ここを上抜けてくると昨年12月高値からの調整が一巡したとの感触がグッと強まることになるでしょう。なお、その場合は「日足の遅行線が日々線を再び上抜けるような動きとなるかどうか」という点にも注目しておく必要があるものと思われます。

目下のところ、対円でドルの上値が非常に重くなっていることは事実ですが、一方でユーロ/ドルが再び弱含みの展開となってきていることもまた事実です。周知のとおり、すでに市場では4月、5月に予定されるフランス大統領選の行方を懸念するムードも強まってきていますし、足下ではギリシャの財政悪化を再び不安視する声も聞かれ始めています。その結果、対ユーロでドルがあらためて強含みとなる可能性が強まってきているということも念頭には置いておきたいところです。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役