およそ1カ月前の本欄(8月20日更新分)で、ユーロ/ドルの話題を取り上げました。基本的には「今後も下げ余地を拡げる」との内容で、当時の週足チャートも掲載していますので、是非とも今回掲載する最新のものと見比べていただきたいと思います。

振り返れば、当時のユーロ/ドルはまだ1.3310ドル台の水準にあり、一目均衡表の週足「雲」下限を明確に下抜けるかどうかが注目されていました。その時点で、すでに週足の「転換線」は「基準線」を下抜けており、「転換線」も週足ロウソクが位置する水準を下抜けていましたので、あとは週足「雲」下限を明確に下抜けさえすれば「三役逆転(陰転)」の弱気シグナルが点灯するという状態にあったわけです。

その後の推移は下図に見る通りです。ほどなくユーロ/ドルは週足「雲」下限を明確に下抜け、その時点で三役逆転(陰転)の弱気シグナルが点灯。後に12年7月安値から今年5月高値までの上昇に対する38.2%押し=1.3248ドルを下抜けたことで、週足の「遅行線」までもが週足「雲」を一気に下抜け、弱気ムードは一段と強まることとなりました。

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9月に入ると、ユーロ/ドルは重要な心理的節目でもある1.3000ドルをもあっさりと下抜け。周知の通り、これは9月4日のECB理事会において3つの政策金利すべての引き下げを決定するというサプライズが大きく影響したものと見られます。さらに、ECBは資産担保証券(ABS)およびカバーボンド(金融機関が保有する貸付債権を組み合わせ、それを担保として発行する社債)の購入を10月から実施することも併せて決定し、購入プログラムの詳細は10月の理事会終了後に公表することとしました。

ECB理事会によるハト派的サプライズの余韻は翌週にまで及び、9月9日に1.2859ドルまで押し下げたところで、ようやくユーロ/ドルは下げ止まりました。そして、目下は本日(17日)まで行われるFOMCの結果発表とイエレン議長会見を控え、例によって様子見ムードに包まれた状態を続けています。

仮に、FOMCの結果やイエレン議長会見の内容が依然としてハト派色の強いものであった場合、ユーロ/ドルは短期的な下げ過ぎの反動もあって一定の戻りを試す展開となる可能性があります。積もり積もったユーロ・ショートを一旦解消する動きも見られるでしょう。しかし、明日(18日)にはスコットランドで独立の是非を巡る住民投票が行われることとなっており、その結果とユーロの行方が無縁ではないということも見逃せません。

仮にスコットランドの独立賛成派が住民投票反対派を上回るような事態となれば、ポンドはもちろんユーロのボラティリティーも大きく上昇するでしょう。やはり、対ドルでポンドやユーロは弱含むものと見られます。逆に、反対派が過半を占めた場合には、ユーロの重石も一旦外れる格好となる可能性があります。ただ、もはや2週間後には10月のECB理事会が控えています。いよいよ証券購入プログラムの詳細が明らかになるうえ、将来的に大規模な量的緩和を実施する可能性まで匂わせる可能性もあるのです。

結局のところ、遅かれ早かれユーロ/ドルは直近安値=1.2859ドルをも下抜け、61.8%押しの水準=1.2788ドルや昨年4月と7月に安値をつけて反発した1.2750ドル前後の水準などを強く意識する展開になって行くものと思われます。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役