まず、前回(8月20日)更新分で触れたユーロ/ドルですが、この一週間の動きで目立ったのは、やはり先週の週足ロウソクが終値ベースで一目均衡表の週足「雲」下限を下抜けたことです。結果、ユーロ/ドルには週足ベースでも「三役逆転(陰転)」の弱気シグナルが点灯することとなり、今後の下値余地は一段と拡がってくるように見受けられます。

まして、すでに足下では12年7月安値から今年5月高値までの上げ幅に対する38.2%押しの水準=1.3248ドルをも下抜け、もはや次の節目と考えられる50%押しの水準=1.3018ドルが意識されやすくなっている状況です。先週22日、米ワイオミング州ジャクソンホールにおいて講演したドラギECB総裁の発言は、市場の追加緩和期待を高めるのに十分な内容であったとも言えるでしょう。

このように、今ユーロ圏では追加緩和の可能性が取り沙汰され、一方の米国では量的緩和終了後の利上げ開始のタイミングに関心が強まっています。また、英国では一旦浮上した利上げ観測が後退するなど、いずれも市場参加者にとっては政策変更のリスクと向き合う必要性が生じています。その点、豪州は今のところ金融政策の中立性を維持しており、いわば「政策変更リスクが低い」...そういった点が評価されていることも一因となって、このところ豪ドル/円は順調に上値を切り上げる展開を続けています。

下図に見るように、豪ドル/円は13年10月に同年4月高値から8月安値までの下げに対する50%戻しの水準=95.93円に接近しながらも、結局は同水準に到達する前に失速してしまい、以降も長らく同水準を明確に上抜けることができない状態を続けてきました。また、今年の5月中旬以降は一目均衡表の週足「雲」上限が強い上値抵抗となり、およそ3カ月に渡って週足「雲」のなかでの推移を続けてきたのです。

そして先週、ついに豪ドル/円は前述した「50%戻しの水準」と週足「雲」上限を週足終値ベースで上抜けることに成功しました。その結果、豪ドル/円には週足ベースで「三役好転(陽転)」の強気シグナルが点灯することとなったのです。よって、次に意識されやすいのは61.8%戻しの水準=98.18円ということになるわけですが、実のところ豪ドル/円が「今後も強気の流れに乗って一段と上値余地を拡げる」と判断することには少々慎重であらねばならないと思われるところもあるのです。

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まず、チャート上では13年10月高値と今年3月高値を結ぶレジスタンスライン(図中の赤点線)の存在に注意する必要があります。実際、今週25日には一時97.12円までの上昇を見ましたが、結果的には同水準に上値を押さえられるような格好となって目下は一旦上げ渋る展開となっています。そもそも足下で見られている豪ドル/円の上昇は、多分にドル/円の上昇に連れた動きとも考えられ、肝心のドル/円が当面、頭打ちのような格好になると、豪ドル/円の上値も自ずと限られてくることとなるでしょう。

また、豪州と縁が深い中国において景気回復の鈍化傾向が強まっていることも大いに気に掛かるところです。さらに、その中国の重要な輸出先の一つであるユーロ圏経済の行方に明らかに翳りが見られていることも見逃すことはできません。豪ドルの高金利は確かに魅力ですし、長い目で見れば非常に有望な通貨であると思われますが、目先は少し慎重に向き合う必要もあるのではないかと思われます。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役