日米の株高にドル/円の102円近辺までの上昇と、目下の市場におけるリスクオン・ムードの高まりは実に目を見張るものがあります。それに引き換え、このところあまり元気が感じられないのは豪ドル/円の値動き。日本の投資家にとっても人気の通貨ペアだけに今後の行方は気になるところです。
豪ドル/円がやや弱含みで推移している要因として大きいのは、やはりオーストラリア準備銀行(豪中央銀行/RBA)当局者が豪ドル高をけん制する発言を繰り返していることであり、RBAのスティーブンス総裁に至っては11月5日の政策事会後に公表された声明文において「依然として不快なほど(豪ドルは)高い」との文言を明示しているほどです。先進国の中銀総裁ともあろう人物が、これほど明白に自国通貨高をけん制することにはかなりの違和感があるわけですが、さらに同総裁は11月21日の講演で「依然として政策手段の一つだ」との言い回しで、為替介入の実施を検討する可能性にまで触れています。これでは、諸外国通貨に対する豪ドルの上値が押さえられるのも当然です。
とはいえ「実際に豪ドル売り介入が行われる可能性は高くない」というのが少なからぬ市場関係者の見方であり、対ドルとの関係において豪ドルが弱含む=豪ドル/ドルが下押すというのも、ある程度は仕方のないことと言えるでしょう。だからと言って、今後もダラダラと豪ドルの価値は低下し続けるのかと言うと、それはちょっと違うのだろうと思われます。何より、今年8月に2.50%まで引き下げられた豪政策金利の追加的な引き下げ余地はかなり限られるものと思われます。よって、今年8月に目の当たりにした豪ドル/ドルの安値=0.8848ドルを下回るような水準で定着する可能性はかなり低いものと考えていいでしょう。
もちろん、今後も外国為替相場の大きな流れは「円安」であり、たとえ豪ドル/ドルの上値がある程度限られたとしても、その一方で豪ドル/円の下値はかなり限られてくるものと思われます。振り返れば、本欄の2013年9月11日更新分において、筆者は豪ドル/円の「ダブルボトム」完成と「三役好転(陽転)」について触れ、今後は「200日移動平均線(200日線)を明確に上抜けるかどうかに注目」としました。その後、どのような展開となったのかは下図に確認できるとおりです。
まず、豪ドル/円は9月19日に200日線を上抜けることに失敗し、次に高値をつけた10月22日、23日の値動きにおいても明確に200日線を上抜けることはできませんでした。さらに、先週19日、20日の値動きも200日線に跳ね返されるような格好となり、ついには一目均衡表(日足)の「遅行線」が日々線を割り込んだうえ、昨日(26日)は日足「雲」上限を下抜けるという弱気の展開となっています。もはや、この200日線が下向きの推移となっていることもあり、今後もしばらくは上値抵抗として強く意識されるものと考えざるを得ません。
今後、11月13日安値=92.31円を明確に下抜けるようであれば、やはり日足の「雲」下限あたりまでの下押しはあってもおかしくないでしょう。ただし、仮にそのあたりまで下押ししてくれば、そろそろ豪ドル/円を安値で買い拾うチャンスということになるのではないかと筆者は考えます。この日足「雲」下限水準というのは、10月上旬にしばらくもみ合ったところでもあり、十分に強い下値サポート力を持つものと見られます。
コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役