先週7日に発表された欧州中央銀行(ECB)の政策金利引き下げと、翌8日に発表された10月の米雇用統計の結果は、市場で「ドル買いの流れ」が一気に強まる大きな材料となりました。結果、ドル/円とユーロ/ドルにどのような動きが見られたのか、ここで整理しておくことにしたいと思います。

まずドル/円ですが、周知のとおり5月下旬から調整局面に突入し、長らく「三角保ち合い」を形成していました。ただ、本欄の10月30日更新分で述べたように、三角保ち合いのパターンにも自ずと「賞味期限」はあり、そろそろ三角保ち合いを上放れるか、もしくはこれまで想定してきた三角保ち合いシナリオを修正する必要に迫られるかの瀬戸際にあったわけです。

(ご参考)10月30日掲載:ドル/円の三角保ち合いシナリオに「賞味期限」!?http://lounge.monex.co.jp/pro/gaikokukawase/2013/10/30.html

結局のところ、ドル/円は先週8日に終値で5月22日高値と9月11日高値を結ぶレジスタンスラインを上抜け、どうやら「三角保ち合いを上放れた」との感触が得られる状況になってきたものと思われます。ちなみに、先週8日の値動きによってドル/円は一目均衡表(日足)の「雲」上限を上抜けています。それ以前から「転換線」は「基準線」を上抜けており、また「遅行線」は日々線を上抜けていたことから、晴れて「三役好転(=陽転)」の強気シグナルが点灯することと相成りました。

以前から本欄で述べているように、ドル/円は5月高値から「第4波(=修正波)」の調整局面に入っているものと見られていましたが、いよいよ「第5波(=衝撃波)」の上昇局面に突入した可能性があります。そうした感触は、9月20日高値=99.67円を明確に上抜けると相当に強まってくるものと思われ、昨日(12日)も同水準を多分に意識した動きが見られています。目先は、少なくとも2日以上、終値ベースで同水準を上抜けるかどうかに注目しておきたいところと言えるでしょう。

仮に、ドル/円が前述した99.67円を明確に上抜けると、次に9月11日高値=100.61円が意識されるものと見られ、少し気が早いかもしれませんが同水準をも上抜けると、いよいよ5月高値=103.73円が視野に入ってくるものと思われます。

一方のユーロ/ドルですが、筆者は前回の本欄(11月6日更新分)において「7月9日安値と9月6日安値を結ぶサポートラインや9月25日安値、10月16日安値などが位置する水準、そして一目均衡表(日足)の「雲」などといった複数の下値支持水準を下抜けるかどうかに注目」としていました。
(ご参考)11月6日掲載:ユーロ/ドルは複数の下値支持を下抜けるか?http://lounge.monex.co.jp/pro/gaikokukawase/2013/11/06.html

結果的に先週7日、ユーロ/ドルは前述した複数の下値支持水準を次々に下抜け、翌8日には一目均衡表(日足)の「雲」下限をも終値で下抜ける展開となりました。それに相前後して、日足の「転換線」は「基準線」を下抜け、さらに「遅行線」が日々線を下抜けたことにより、一時は『三役逆転(=陰転)』の弱気シグナルを灯すこととなりましたが、このところの下げが急だったこともあり、足下ではユーロ売りに対する調整が入っています。

先週7日の安値(=1.3295ドル)は、7月安値から10月高値までの上昇に対する50%押しの水準にピタリ一致しており、同水準で一旦下げ渋るのは、ある程度想定できたことと言えます。しかし、基本的な下落基調は変わらないものと思われ、今後同安値を下抜けると次に61.8%押しの水準=1.3166ドルが意識される展開になるものと見られます。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役