昨日(29日)のNY市場では、ダウ工業株30種平均が終値で史上最高値を更新。S&P500種株価指数は過去15営業日のうち13営業日で上昇となっており、同指数も連日のように史上最高値を更新しています。それに引き換え、日経平均株価は先週25日に前日終値比で398円安。今週に入ってだいぶ持ち直してきてはいるものの、米株の上げの勢いに比べて大きく見劣りしている状態です。

周知のとおり、このところの日経平均株価とドル/円の価格推移には非常に強い連動性が見られます。それは、海外ヘッジファンドを中心とする外国人投資家が日本株売り(買い)・円買い(売り)のオーダーを同時に出すことが多いことによるわけですが、結果、先週25日のドル/円は日経平均株価の大幅な下げに影響される格好で、一時97円割れの水準まで押し下げる場面を垣間見ました。

それでも、今のところドル/円は200日移動平均線(200日線)を明確に割り込んではおらず、同線の下値支持は有効に機能していると言えます。また、6月13日安値と10月8日安値を結ぶサポートラインも機能しており、下の図にも見るように5月下旬からの「三角保ち合いシナリオ」は辛うじて有効性を保っていると言うことができます。つまり、5月22日高値からの調整はa-b-c-d-eの5波で構成され、10月8日安値=96.57円は三角保ち合いの終点になったとの見方が、現段階では「まだイキている」ということになるわけです。

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ただ、三角保ち合いのパターンにも自ずと「賞味期限」はあり、それは一般に「三角保ち合いの開始時点(5月22日)から三角保ち合いの上辺と下辺が交差する時点(12月初旬と見られる)までの4分の3ぐらいのところまで」とされています。よって、そろそろ三角保ち合いを上放れるか、もしくはこれまで想定してきた三角保ち合いシナリオを修正するかの瀬戸際の時期に差し掛かってきているということになるのです。

少々悲観的な見方をすれば、目下の市場にはFRBによる量的緩和策の長期化観測が広まっており、そのことがドルの上値を重くしているという事情があります。また、11月は海外ヘッジファンドの決算が集中することから、11月中旬に向けては日本株が売られやすくなる時期でもあります。おまけに、日経平均株価が5月下旬に年初来高値をつけた時期あたりに信用取引で個別銘柄を買い建てた投資家らは、11月下旬に向けてその返済(売り決済または現引き)期限を迎えます。

つまり、諸々の事情によって日経平均株価がもう一段の調整を余儀なくされれば、ドル/円が前述した下値サポート水準を割り込み、これまで描いてきた三角保ち合いシナリオを修正せねばならなくなることも考えられなくはないということです。今、刻々と「賞味期限」が迫るなか、ドル/円は一つの重要な正念場を迎えているということになります。

もちろん、ここで多少なりシナリオの修正を余儀なくされたとしても、大きな流れは日本株高・円安であり、5月下旬からの調整が「中段保ち合い」のパターンであることに変わりはないものと思われます。とにもかくにも、目先は日本時間の明日(31日)未明に発表されるFOMC声明と、同日開催される日銀金融政策決定会合の結果を注意深く見定めることが重要でしょう。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役